遠い唇:北村薫:背景の大きさに愕然とする読書

年間、文庫本で、小説ばかり、約150冊を読み続けているGGが、今年は読んだ本の読書感想文を書いていこうかと

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「遠い唇」(012/2020年)

7つの謎解きの短編。どれも本当に短いのですが、その謎、事件にたどり着くまでの登場人物それぞれの思いや、それらの人たちが生きてきた世界のことが、ふわーっと湧き出してくるのです。

描写はほんの少しです。でも、行間というか、文字の背後に隠されたものが次々と立ち上がってくる北村マジック。書かない、という選択肢に隠された意味を読者は解いていかなければいけない、それが快感。

お気に入りは、ベタではありますが、王道に勝る王道は無しということで「遠い唇」です。表層だけを切り取れば、暗号解読モノなのですが、時空を超えたメッセージのことを思うと、心は様々な感情で埋め尽くされていくのです。

言わなくては伝わらない、これ超大事です、真の姿はここにあります。でも、たまには、言わないから伝えられる、って余裕も欲しいです。この余裕を確保するために、言いたいことは言いましょう!


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