さざなみのよる:木皿泉:死から始まる物語

「さざなみのよる」(150/2020年)

構成にやられた。この主人公を最大限に活かす構成だと思う。もちろん、内容も素晴らしいが、それ以上に、この時の流れに心揺さぶられたのです。

最初に主人公が死にます。

そして、死ぬ前の主人公が描かれます。

更に、死後の主人公を取り巻く世界が描かれます。

主人公、不思議なキャラです。その不思議なキャラを解明すべく過去と未来が語られるのですが、解明することが本作品の目的ではありません。

物語が死から始まることが、その後に続く生の物語を際立たせます。主人公の生、主人公を取り巻く人たちの生。生はいいです。でも、いつかは死にます。生と死はセットなのです。その現実に心が揺れます。

主人公はあくまでも化学反応を起こす「きっかけ」に過ぎないような気がします。だから、本当の意味での主人公ではないのかもしれません。でも、神の視線で見ると、主人公です。というか「神」なのかも。

ナスミという少し変わった名前の主人公。43歳で死んでしまうのです。この43年間で残してきたものと、その43年間が作りだした未来。両方とも輝かしいもの、派手なことではありませんが、マジ素敵です。平凡な、ありふれた日常こそが、素敵なのです。

じわじわきます。是非。今年の一番かもしれません。

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