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善人長屋:西條奈加:設定の勝利

「善人長屋」(101/2022年)

この設定、素晴らしい。
江戸モノというそもそもの設定を最大限活かした本作品、最近NHKでドラマにもなっています。主な登場人物である通称「善人長屋」の住人全員が犯罪者なんです。表の合法的な仕事をしっかりしつつ、裏の稼業もバッチリこなす優秀な町民軍団が集う長屋に、ある日、手違いで超真面目で真の善人である男、加助転がり込んできたことから物語は始まります。

裏がバレないように注意して行動しているから、自然といい人たちになってしまっているだけの長屋に加助がやってきた。加助は困っている人たちを勝手に本当に連れてきてしまう。仕方なく善人をやっていたメンバーたちも、その流れに逆らえず、本当に人助けをする羽目になるのだが、その手法は裏稼業のテクニックが存分にいかされる。
「善人長屋」「泥棒簪」「抜けずの刀」「嘘つき紅」「源平蛍」「犀の子守歌」「冬の蝉」「夜叉坊主の代之吉」「野州屋の蔵」とテンポよく江戸の町で事件が展開していきます。
お気に入りは「抜けずの刀」かな。色男大活躍の痛快時代劇、ここまですっとボケた展開こそ江戸モノの真骨頂。でも、刀が抜けないのですよ、その時には、というクライマックス、痺れます。

そして加助のラストも泣かせるね。全てがうま~く収まってシャンシャン、な~んて甘いことは西條が許さないのですよ、キリリとします。だからこそ、続編に期待してしまいます。



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