クララ殺し:小林泰三:「アリス殺し」で慣れてから読むべし

「クララ殺し」(048/2020年)

二つの世界を行ったり来たり、最初は戸惑いますが、徐々にこの世界間移動が苦にならなくなってくるのが不思議です。前半は、今はどっちの世界にいるのか確認しながらじゃないと読めないのですが、後半は文章の流れに乗るだけで、不思議の世界を楽しめます。

でも、殺人事件の謎解きの部分は実にソリッド。そのギャップが本作品の醍醐味なのでしょう。著者が勝手にゼロから作り上げた世界で繰り広げられる殺人なので、ズルいと言えばズルいのですが、最終的にはキッチリと落とし前をつけてくれます。

主人公は現実世界では人間ですが、もう一つの世界では蜥蜴です。蜥蜴の時、かなりファンキーな言動をするんで、騙されそうになりますが、そこも楽しみの一つ。前作「アリス殺し」の時は、衝撃が大きすぎたのですが、今回は余裕をもって読めたので、良かったかも。

超簡単に言えば、この現実世界とファンタジーの世界がパラレルに存在しているという設定。で、その両方の世界は、リンクしている部分とリンクしていない部分が併存しています。どこがリンクしていないのか、ここがミステリの謎の核心だったりするわけです。なので書きません。


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