狂おしい夜: 鯨統一郎 :まさかの王道
「狂おしい夜」(11/2021年)
典型的な記憶喪失ものです。主人公の女性が暴漢に襲われて記憶喪失になってしまう。そして、徐々に記憶を取り戻していき、自分を取り巻く真相にたどり着く王道パターンです。
鯨統一郎なんで、まさか直球勝負とは思わずに読み進めていたので、逆に驚いてしまいました。どこかで突拍子もない展開が来るかなと思っていたのですが、実に真っ当(笑)。
記憶喪失後、母(と思わしき)人から、自分はとある富豪の愛人の娘であり、認知のされていて、莫大な遺産を相続する立場であることを知る。そこに現れた3人の男、2人の彼氏と1人の旦那(入籍済)。徐々に記憶が戻っていく中で、実は自分の立場がリスキーなことが分かっていく。本当の味方は誰?そして敵は誰?
相続をめぐるトラブルと、男女関係のもつれがどこでリンクするのかがこの作品のポイント。で、鯨作品なので、ただじゃ済まないと思っていたところ、意外とあっさり、、、いやね、まさかの「夢オチ」とか、母が実は父だったとか、そのくらいの奇天烈を求めていたのですよ。ある行為をするたびに少しづつ記憶を取り戻すという設定だったのですが、そこをもっと「激しく」書いてしまうとか、期待しちゃうわけです。
これ、読書の方法として、作家のテイストを決めつけてしまい失敗したパターンかもしれません。この作家ならば、こう書くはずだという思い込みが読書の幅を狭めてしまうパターンです。
鯨作品初読ならば、普通に読めるはずでしょう。既成概念にとらわれないこと、大切ですね。