四色の藍:西條奈加:江戸を最大限利用したミステリですね

「四色の藍」(70/2022年)

「江戸もの」だからこそ許される設定を最大限利用しているミステリ、巧みです。
江戸時代という分かっているようで分かっていない不思議な時代、そして場所で、立場の事なる4人の女性の思惑が交錯します。夫を殺された藍屋の女主人。兄の仇討ちで江戸にやってきた男装の麗人。洗濯屋の婆。訳アリの女郎くずれ。それぞれの思惑が一致し、4人組として動き始める。

基本的には殺人事件の犯人探しです。そこに江戸時代の社会制度と、男女の感情のもつれと、シンプルな金儲けの話と、どんな時代にも存在する権力闘争の要素がほどよく絡み合って、実にエンタテインメント。そこにステレオタイプな「悪役」商人が登場、要素が多すぎて果たしてこの物語はどこにたどり着くのか見当もつかないまま、隠されていた事実が次々と明らかになり、あっと驚く結末を迎えます。

現代を舞台にした小説でここまでやってしまうと、嘘っぽくて興醒めしてしまいますが、江戸というリアルとファンタジーが混じった世界観ならば、外連味たっぷりの展開も腑に落ちるというのも。江戸ものならではのミステリに仕上がっています。
考えてみれば、仇討ち制度とか無茶な仕組みですよね。また江戸時代は簡単に人が死にます、それも凄い。更に武士という身分に付属する権力も今にしてみれば圧倒的です。
それらを本当にうまくミックスしてあります、巧みです。


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