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帝国の娘:須賀しのぶ:少女のためだけではなく
「帝国の娘」(113,114/2021年)
須賀しのぶ、恐るべし。本作品、少女向け小説だったなんて、最後の解説を読むまで予想だにしませんでした。いや凄い。こういう作品に出会うと、良い作品は対象年齢とか関係ないことを感じます。難しくても何かが心に沁みこんできたり、容易でも軸がしっかりしているので読み応えがある。
本作品も主人公の少女が本当に「良い奴」なんです。過酷な、否、過酷過ぎる運命に立ち向かう凛々しさに惚れ惚れします。病弱の王子に顔形がそっくりなため、身代わりとして突如誘拐同然に連れ去られた少女が、影武者という運命を自分なりに受け入れて生きていく物語です。
各国の王子が一か所に集められ、外部の影響を受けることなく帝国の王様になるべく鍛えられ、その中から一人が選ばれるというシステムの中で、主人公を含めた4人の王子が競い合います。それぞれの王子のキャラクターが実に秀逸。4人それぞれ異なったキャラで、その背景もしっかりと描かれているという親切設計。ちゃんと「なぜ」に対する答えが書かれているという安心感。これならば、肩入れすべき王子をじっくり選ぶことが出来ます。
それにしても主人公の少女は強い。折れても、折れた自分を認めて、その先に進む勇気がある。そんな姿に、オジサンも元気というかパワーを素直にもらうことが出来ます。そして応援したくなります。本当に力が漲る読書になります、これは。
少女のために書かれた作品ですが、そんな枠は関係ありません。大人も充分に楽しめます。須賀しのぶの作品ということで読んでみて大正解でした。
でこれ、舞台化して欲しいです。映像化するとちょっと嘘っぽくなりそうなので、敢えて舞台と言う空間の中で、この帝国の世界を蘇らせてほしい物です。王子イケメン3人と男装の麗人。そして王子に仕えるこれまた超絶イケメン従者たち。絶対に受けると思うんだけどな~!!!