路上のX:桐野夏生:分からなくなってしまいました
「路上のX」(40/2021年)
一家離散によって幸せな生活を失った女子高生の真由。義父の虐待から逃れ、街で身を売るリオナ。二人は運命的に出会い、共に生きる決意をする。ネグレクト、DV、レイプ。最悪の暴力と格闘する少女たちの連帯と肉声を物語に結実させた傑作が、遂に文庫化。
これはアマゾンの紹介文です。とりあえず読んでください。「JKビジネス」という謎の造語によって隠蔽されている事実が飛び込んできます。小説だからよりドラマチックに、過激に描かれているんだろうな~って気になりません。逆に、事実の方が更に苛烈なのではないかと思ってしまいます。彼女たちの生き方を呆然と眺めるしかない自分が恥ずかしくなりました。
そして読後、僕はどうすれば良いのか、分からなくなってしまいました。少女を「買う」大人たちをひたすら罰する。少女を「売る」ことを生業とする大人たちをひたすら罰する。とりあえず実施してほしい。でも、それだけでは解決しない。そんなことは分かっています。
じゃ、政治家になって、この間違った社会を変えていくべきなのか、NPOを立ち会上げて彼女たちをサポートしていくべきなのか。正直、そんなことをする勇気はない。情けない限りです。
実は過去に「JKカルチャー」を紹介する連載を3年間していました。その内容は、明るく、楽しく、面白く、いわゆる「今ドキ」をオジサン世代に伝えるものでした。この作品に出てくる世界の真逆な部分だけを切り取ったものでした。元気で活発で、キラキラと幸せに生きているJKもたくさんいます。ただ、それは上辺だけだったのかもしれません。無理にキラキラしていないと生きていけない人たちがいること、忘れちゃいけません。ウソのキラキラは悲しすぎます。
作品の中に、相談にのって助ける振りをして近づいて、最終的にはJKを売り飛ばそうとするJKのちょい先輩な女性が出てきます。多分、彼女も騙されたんでしょう。そこから、騙される方から騙す方に這い上がってきたのでしょう。そんな彼女を否定することが出来ないのです。この世界、弱肉強食、もし彼女が「騙される方が悪いんだよ」と言ってきたら、僕はなんと反論してよいのか、分からなくなってしまいました。
この作品の結末に対する自分の感情も分からなくなってしまいました。そして、無力な自分がそこに居ました。
この作品を読んだことは、自分にとって大きな事件です。読書に感謝します。
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