8.1 Game Land:山田悠介:現実を見ろ

「8.1 Game Land」(76/2022年)

「ジェットコースター」「写真メール」「人間狩り」の3つの短編、どれも非常に暴力的な作品です。悪趣味という感想も多くありました、確かに悪趣味な一面もあります。

特に「ジェットコースター」とか、何の理由もない、不条理な暴力的行為のもとで物語は進行します。登場人物は、その暴力の意味を考える時間すらない中で、その暴力に耐え、そして負けて命を落としていきます。
その過程の人間ドラマもあるのですが、多分作者はそこを描きたいのではないと思います。圧倒的な暴力の前では、ドラマの存在価値なんて意味がなくて、現実に目を向ければ、ドラマなんてものは無くて、あるとすれば大体がフィクションなのだ。
それを悪趣味な小説と思うのは問題ないと思います。でも、「善趣味」な小説ばかりじゃ問題あるんじゃないの?という作家からのメッセージだと考えると、悪趣味で良いと思います。「人間狩り」も「ジェットコースター」に似ていると思います。「写真メール」はフィジカルな暴力とは違ったアプローチで悪趣味を描いていると思います。

作者の意図は分かりませんが、僕は「現実を見ろ」という意志を感じました。それが良いか悪いかではなく、そういう気持ちを推測するのも読書の楽しみの一つだと思います。

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