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正しい女たち:千早茜:「正しい」は後ろめたい気持ちの発露に過ぎない

「正しい女たち」(62/2021年)

タイトルが良い。「正しい」だって。

自分で自分のことを正しいと言う人、正当化しようとする人って、大概はやましい気持ちがある人だと思うのです。何となく正しくないことが分かっているから、理論武装というか屁理屈というか、何かしらの理由をつけて、正しい方に寄せようとする。少しでも正しくなりたいという後ろめたい気持ちが「正しい」にはあるのではないでしょうか。

本作品、連作っぽい短編集です。高校生のころの女の子4人組が大人になって、それぞれの「正しい」道を行く物語。どれも男から見たら(って書き方自体が間違っているとは思いますが、つい書きたくなってしまいます。ごめんなさい!)女の(って書き方も…ですよね)アルアル的なことを描いてるのですが、笑える案件ではございません。切なさ有り、怖さも有り、かなり痺れます。

不倫の「温室の友情」。これだけは少し毛色が違うのですが、成長の「海辺の先生」。性交の「偽物のセックス」。人間関係の「幸福な離婚」。生き様の「桃のプライド」。そして、復讐の「描かれた若さ」。

お気に入りは「温室の友情」です。一番、作品名を反映しているかと思います。不倫は正しくないことは確かです。でも、ここで書かれる手法はどうなのでしょうか。それが「正しい」のではなく、それを「正しい」ことにすることが「正しい」のです。

「桃のプライド」は芸能人の話として描いていますが、実は、どんな人種にもあてはまるということに気が付いた時に本当の「正しい」が見えてくるのかもしれません。

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