法廷遊戯:五十嵐律人:きた、メフィスト
「法廷遊戯」(49/2022年)
これぞメフィスト!きたきたきた!
リーガルものでもメフィスト、そこがあったかという驚き。合衆国に比べて日本のリーガル系は、良い悪いの問題ではないのですが、どうしても法的な駆け引きよりも、そこに登場する人物の心情にスポットが当たりがち。
まあ、法廷に進んだ時点で99.9%が有罪という現実の中で、容易に「無罪」が出たら「リーガル・ファンタジー」になってしまうので、判決よりもその背後の事情に目線がいくのは当然だと思います。
本作も、もちろん登場人物が最終的にはキーポイントになりますが、前段で実施される「法廷遊び」、これがいかにもメフィストなのですが、で真正リーガル・ミステリの気配を濃くしているところがナイスです。こういう「嘘」がないと日本のリーガルものは厳しいのかもしれません。
この「遊び」と同時進行する実際のストーカー犯罪がそうやって絡み合うのかなと思っているところで、物語は唐突にブッタ切られます。
ネタバレになるので最小限に控えますが、ここまで拗れた動機があるのかと思いきや、最終的にはこれしかない。日本のリーガルを駆使した、犯人と日本社会、法の世界に仕掛けた強烈なアタック、清々しいです。
メフィストなので、少し現実離れしているところはあります。それを快く思わない人もいるかもしれませんが、日本の新しいリーガル系小説だと思います。グリシャムのような作品は日本の制度上では正直不可能だと思っていましたが、それとは全く違ったアプローチ、ここにありました。
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