冤罪法廷:ジョン・グリシャム:グリシャムならやりかねない
「冤罪法廷」(12,13/2022年)
最後の大どんでん返しが起こらないように、祈りながら読んでいました。本当にハッピーエンドの方向で終わってホッとしました。
彼らにこれ以上の不幸が…なんてことはないよね、と念じながらの読書。グリシャムならばやりかねないという作者に対する一種の「信頼」がこれほどまでのドキドキハラハラを生み出すなんて。並みの作家ならばこんな気持ちにはなりません。ベストセラー作家だからこその緊張感でした。
今回の主役は全米中の冤罪を覆すために身を粉にして法廷で戦う弁護士とそのチーム「ガーディアン・ミニストリーズ」の物語。死刑囚や無期懲役で苦しむ無罪(と信じる)の人たちを救い出します。なんと、これが事実に基づくお話なんです。実際にそのような活動をするチームが存在するんですね。
罪は、悪意をもって行動すれば、簡単に作れることが分かります。ということは逆も可能ということなんですよね。冤罪の裏には真犯人がいるわけですから。今回は正義の弁護士が活躍しましたが、悪の弁護士が暗躍することも出来るということです。
グリシャムのリーガル・サスペンスは、スカッとする大逆転系の物語だけではなく、真実ではなく「現実」を突きつけられる苦々しい結果のエピソードもあります。後者はベストセラー作家のみに許されるのだと思います。だからこそ長い間支持されているのでしょう。最初から大成功が確約されていないからこそ、興奮するのです。ま、大体は成功してくれるので安心なのですが(笑)。
本作品は警察小説の要素の方が濃いかもしれません。がしかし、犯人探しではなく、「犯人ではないこと」探しであることが、通常の警察小説、犯罪小説とは違った雰囲気を醸し出しています。犯人に自白させるのではく、証人に過去の嘘の発言を認めさせる流れは、今まで味わったことのないカタルシスです、是非、お試しください!