
「鮨まつもと」というお店について
本日は私の大好きなお店「鮨まつもと」についての魅力をものすごい熱意と分量でまとめていこうと思います。
おそらく、このテキストを読み終えたみなさんはお鮨を食べたかのような満足感を得るはずです。そして、きっとまつもとに行きたくなるはずです。
概要
鮨まつもとは京都の祇園にお店を構える江戸前鮨の名店です。ミシュラン1ツ星や食べログの100名店にも輝く一流店です。京都にあるお寿司屋さんはミシュラン1ツ星のお店しかありません。ミシュランが全てではありませんが、間違いなく京都では最高峰のお寿司屋さんと言えます。
大将は関東出身で東京の名店「しみづ」で修行された方です。東京でも珍しいくらい伝統的な正統派江戸前鮨です。
行き方
お店に行くためには、京都河原町駅か祇園四条駅あたりに行きます。四条通りを東(八坂神社の方)に歩いて花見小路通まで行きます。花見小路通を南(建仁寺)の方向に歩きます。京都では南に行くことを「下がる(さがる)」というので覚えておくと気分が上がるでしょう。ちなみに「上がる」は北に行くことです。
コロナ前は観光客でごった返していた花見小路通ですが、今は人もまばらで「私道での撮影禁止」の看板を見るたびに落語みてぇだなと思ったりもします。
花見小路通を下がって一番最初に右手にみえる小路に入ります。この通りは鮨屋通りとも呼ばれており、京都の有名なお寿司屋さんが何故か集まっています。この並びにミシュラン星付きの鮨屋が3つもあります。しばらく歩くと、「鮨」とだけ書かれた暖簾が見えてきます。行燈風のライトには「まつもと」と書かれています。初見だと入るのに少し勇気がいる店構えですね。

入店
戸を開けて中に入るとまずは石畳の待合室のような空間が目に入ります。語彙力がないのであまり伝えられませんが、ものすごく京都を感じる空間です。酢飯と魚の香りがふんわりと漂ってきて、少しの緊張とこれからへの期待で包まれます。奥の戸から女将さんかお弟子さんが「いらっしゃいましっ」と顔を覗かせます。名前を伝えて、荷物を預けて入店。
キリッとしたイケオジの大将がカウンター越しに「いらっしゃいましっ」と声かけするとともに席に案内される。カウンター7席と4人がけのテーブルが1つの店内だ。奥にはお庭もみえるて京都を感じることもできる。予約時点でカウンターかテーブルかは伝えてくれるので、カウンターがいい人は事前に伝えるとよい。予約は電話のみ受付となっている。2週間前くらいにかければだいたい予約が取れる感じだ。
注文
カウンターに腰掛けるとまず大将から、つまみからいきますか?最初から握りますか?と聞かれる。お任せコースのみとなっているのでこのような聞き方になる。つまみからのコースはつまみ3品くらいと握り12貫くらいで握りだけだとだいたい15貫くらい。握りだけのコースは3000円くらい安い。さらにランチは2000円お得なのに加えて握り10貫で1万円というコスパ最強コースも存在する。京都観光の際に軽くお鮨を食べて若干お腹に余裕を残しつつ後で食べ歩きするという使い方もできます。お鮨は後から追加もできます。金額や数については変動あるかと思うので、そのあたりはお店にご確認ください。
かくいう私はつまみからのコースしかいただいた事がありません。やや食い気味につまみからでお願いしますと答えます。最近はつまみからでいいですかと聞かれるようになりました。
そのあとは飲み物を注文します。だいたい日本酒を注文することが多いです。奇しくも店名と同じ名前のお酒、伏見の「松本酒造」のみを取り扱っていました。しかし、まつもと酒造のいざこざがあったからか最近はちらほら大将セレクトの別のお酒も飲めるようになったようです。あとはビールやワイン等も置いてあるようですが注文したことがないのでわかりません。メニューがありませんので、おすすめを聞いて飲むのが一番いい楽しみ方だと思います。ぼったくられたりはしないので安心してください。(緊急事態宣言中は酒類一切提供されていません。)
日本酒を注文すると、複数のおちょこがのったお盆を持ってきてもらえます。色形さまざまなおちょこから自分の気に入ったものを一つ選んで使うことができます。選んだら最初の1杯は大将自ら徳利でついでくれます。いよいよ料理のスタートです。
お通し
もしかしたら、これは私がお通しと思ってるだけで違うかもしれません。つまみからのコースを頼まないとダメかも。そして、この部分だけ写真を撮った事がないらしいため、画像なしでお送りいたします。
注文後、すかさず最初の一品が出てきます。小鉢に入った一品です。季節によって出てくるものがかわります。もずく、じゅんさいの冷静トマトスープ、若い銀杏とかを食べた事があります。もずく率が高いです。シャキシャキした歯応えとお酢のさっぱりした味わい。こんなシャキシャキのもずくはなかなかお目にかかれません。特に夏は火照った体に染み渡り食欲をそそります。そのあとは日本酒を一口。顔がにやけちゃうね。
つまみ①
一品目をいただくと、塩と醤油が目の前に配置されます。必ず一品目には熟成させた明石のタコと甘鯛が出ます。これに加えてもう1種類季節の貝や白身が盛り付けられていることもあります。
タコとタイはどちらも少し塩を振って数日熟成されてるので程よく水分が抜けて旨味が凝縮されています。下味が付いているので塩か醤油をお好みで少しつけてくださいと説明を受ける。さらに薬味としてわさび/塩昆布/木の芽が添えられています。
この日はタイとタコに加えてあわびでした。鮑の横にはキモの醤油漬けが添えられてあります。

私はまず、タコを塩でいただきます。塩とタコのほのかな甘味の対比がなんとも言えません。噛めば噛むほどに味が出てずっと噛んでいたい。次に甘鯛。ここでいつも悩みます。わさび醤油か塩昆布か。ここでそのどちらも捨ててわさびと塩昆布を選択。塩と醤油はつけずにいただきます。これは大当たりだ。タイは熟成されてねっとりとした食感。したに絡みついて甘味と旨味が殴りかかってくるようだ。わさびがそれらの暴力を制止して引き締めて後から昆布の旨みと塩気がふんわりと広がる。口の中に残しておきたいのだがとろけてすぐになくなってしまう。儚いですね。ここでおちょこに残ったお酒をくいっと飲み干し、あわびへと箸を伸ばす。まずはお塩でいただきましょう。言わずと知れた高級食材の鮑。安いものを食べると実はそんなに美味しくなかったりして何故高級なのかと疑問を抱くこともありますが、こちらは納得の一品。歯応はあるが、口の中にいつまでも残っているようなことは起きない。貝特有の甘さを感じさせながらクセが一切ないパーフェクトのな貝。口の中になんの遺恨を残すこともなく綺麗に過ぎ去ってゆく。そして、横に添えられてるキモの醤油漬けにわさびを乗せてパクリ。強めの苦味とわさび醤油の大人の味わい。酒が進んでしゃーねーな。
2巡目のタコはわさび醤油だ。オーソドックスな味わいに持っていくことにより、テンションを落ち着かせる狙いもある。オーソドックスといえど、これまでの人生で味わったタコのわさび醤油の頂点に立つ事は間違いない。タコを飲み込んだところでまた酒を煽る。甘鯛は最後に残すためにアワビにゆく。キモは味が強めなので先にいただき甘鯛へのルートを確保しておく。キモはもう一度わさびを添えていただき酒をあおる。2口いく。そして、アワビをこれまたわさび醤油でいただく。口の中を浄化してゆく。そして、フィナーレの甘鯛。フィナーレといってもまだプロローグですが。この甘鯛も何と合わせるか非常に迷う。塩で鯛の甘さを引き出してもいい。オーソドックスにわさび醤油でまとめてもいい。木の芽もまだ使っていない。持論だが、木の芽を使うのは甘鯛がベストだ思う。よし、ここは木の芽と塩昆布を添えていこう。やはりまずは鯛が旨味の暴力を振るってくる。さらに昆布が追撃。もう耐えられないと思った時木の芽の晴天の空の如くさわやかな香りが優しく口の中を照らすのであった。しばらく余韻に浸ったところで次のお皿に移っていく。まだお鮨を食べていないのに満足感すら感じる。
つまみ②
2品目は結構流動的だ。季節や仕入れによるのだろう。夏あたりには貝3種盛りが来たり、味のポン酢和えがきたり、冬にはあん肝がいただけたりする。
この日はアジ。

少しのポン酢と胡麻と水菜がかかっている。
やはり特筆すべきは生臭さゼロというところであろう。やはり光物と言えば生臭くてそれが苦手という人も多い。私の妻もその一人なのだが、これはめちゃくちゃ美味しいという。
まず口の中に入れると、独特の味わいが広がる。赤身でも白身でもないような味わい。そしてひと噛みすると脂がジュワッと溢れ出すしまろやかな味わいに変化する。しかし、控えめにかかってるポン酢のおかげでしつこさを感じない。さらに噛み続けるとそこに水菜の歯応えと胡麻の香りが加わり素敵なハーモニーを奏でるのである。そして酒。他のアジが食べられなくなっちまうぜ。食欲がさらに増幅されるが満足感がめちゃくちゃ高まる不思議な一品だ。
別日だが、鰹についても紹介しておきたい。鰹は初鰹と戻り鰹の時期にでる。こちらもまた、生臭かなりがちであるが全くそれがない。もはや別物の魚。鰹と言われなければわからない。妻は、「学生の時根暗なキモオタだった男の子が大人になってイケメン実業家になって目の前に現れた」くらいの衝撃を受けたらしい。もちろん、妻は鰹が嫌いだった。
脂と赤身が程よく混ざり合い、藁で燻してある時もあるのでスモーキーにしあがっておりこれまた酒が進む。ウィスキーなどに合わせてもばっちりな味わいだ。ぜひ味わって欲しい。
つまみ③
ここも流動的。つまみ②で紹介したものがノミネートされてくることもある。あとは、頭の酒蒸しやいちご煮なんかが出てきたりする。この③で終わりの場合もあれば、④までいくパターンもある。
この日はスズキの骨蒸し。木の芽が添えてある。

大将から、骨にお気をつけてくださいと声かけをいただく。このようなお店ではマナーというのも非常に気になるが食べる前に、骨は手を使って取ってくもいいよ。汁は最後口をつけて飲んでもいいよ。と説明をしてくれるところも江戸の粋な計らいというやつかもしれない。素直に手で骨を取りながらむしゃぶりつく。お出汁の味と木の芽のさわやかな香りでほっこりする。見た目以上に食べるところは少ないが、脂がたっぷりで美味しい。少しばかり下品に身を食べ尽くし、最後は汁を飲み干してフィニッシュをキメる。
この時点でものすごい充足感だが、握りはまだまだこれから。この時点で酒は半分くらいなくなってる。2人で分け合ってる時はもうないので、酒を追加するのにちょうど良い。
塩と醤油が下げられ、鮨を置くための皿とガリが並べられる。いよいよ握りのスタートだ。
1貫目
1貫目は白身の昆布〆が提供される。甘鯛の昆布〆や平目の昆布〆等が多い。この日はスズキの昆布〆だ。スズキの昆布〆って初めて。酒蒸しの魚と同じやつだろう。味がつけられた状態なので、そのままいただく。余談だが、お鮨はお箸でも手でもいい。手で食べる時は、お鮨の横をそっとつまむ。親指と人差し指もしくは中指だ。中指で持つ時は人差し指がネタに当たらないように注意する。私は親指と中指で鮨を口に運ぶ。1貫目を食べるとまず、シャリの味と香りに驚く。赤酢の独特な香り、そして砂糖を一切使用せず塩のみで味付けされたシャリはパンチが効いていてなかなか尖った味と言える。口の中でホロリとほどけ、やや硬めの米粒の食感を楽しむことができる。その後スズキの淡白な味わいと昆布で〆られたことによるねっとり感がシャリと一体になって襲ってくる。シャこれが、鮨か。と鮨の概念を理解すること間違いない。私はしきりに「鮨」と記載しているのだが、それはこの一体感を表現したいがために使用している。こればかりは食べないとわからないのだが、鮨とはこのネタとシャリの一体感なのだという事を魂で理解するような感覚がある。いや、マジで。回転寿司はあれはあれで美味しいんだけど、ネタとシャリは特に一体してない。別々に食べても大丈夫なくらいだ。しかし、この鮨は一緒に食べるからこそ意義があるのだ。両者はカップ麺とお店のラーメンくらい違う。別の食べ物と言える。
御託はおいといて、とにかく美味しい。しかし、初回だとこの時点ではシャリの主張が激しく思うかもしれない。食べ進めれば慣れとネタの味の濃さが強くなってくるので問題なく食べ進める事ができるし最後には虜になっているだろう。じっくり噛んでネタとシャリをよく口の中で混ぜ合わせてゆっくりと飲み込む。ちょうどネタとシャリが同じくらいのスピードで無くなっていくのがバランスの所以なんだなと思う。
鮨を飲み込んだら、また酒を煽る。酒が進んでしゃーない。

2貫目
2貫目もほぼ確実に墨烏賊と決まっている。墨烏賊は鮨に1番合う烏賊だと言われている。大将も大好きだとのこと。塩がかかったイカの握りを口の中にほりこむ。噛んで驚く。イカがサクサク音を立てている。イカ特有の甘みと粘り気を有しつつ歯切れは抜群。すぐに噛み切れるのでシャリとうまく混ざる。これが鮨に合うということなのだと納得の1貫。そして日本酒を煽りここでガリをいただく。ガリも酸味が効いている。甘さはない。これだけでも酒が飲めそうだと思ったときにはすでに酒を口に運んでいた。

3貫目
3貫目は小肌。これもほぼお決まり。8月ごろはシンコと言って小肌の赤ちゃんが食べられるかも。これは食べられたらラッキーです。コハダといえば江戸前の伝統的なネタ。塩と酢で〆られている。コハダの処理は鮨屋によって大きく異なる。鮨屋でコハダを頼むと通っぽいというのはこの辺りからきているのだと思う。コハダはそのお店の個性と仕事が1番ハッキリと出るネタなのだ。
まつもとのコハダはかなり個性的と言える。酸味がかなり効いている。青魚特有の臭みは一切なく、酢と塩がかなり効いて梅干しくらい口の中がきゅーっとなる。シャリも酸味があるので酸味のパレードだ。1,2貫目は淡白な味わいだったのでこの変化もまた楽しい。
正直、好みが分かれると思うが私はとても好きだ。夏バテした時はこれを10貫くらい食べたいと思う。
日本酒とガリで口直しをして次の鮨を迎える体制を整える。

4貫目
4貫目、5貫目は鮪だ。赤身のヅケと中トロの組み合わせが1番多いが仕入れ状況によっては赤身がなかったり、大トロだったりする。この日は赤身はまず赤身。マグロは私の1番大好きなネタだ。季節によってかなり味わいが違う。冬はとろけるような味わい。夏は脂が少なくフレッシュでほのかな酸味がある。どちらも大好き。この時は夏なので赤身の良さを全面にかんじられる握り。マグロ特有の血のような臭みが一切ないように丁寧に処理されている。熟成しているのだと思う。この辺りから、シャリの主張が控えめに感じてくる。マグロはとにかく美味しいので正直詳しいことはわからん。とにかくうまい。妻はマグロが苦手だが、まつもとのマグロに関してはおかわりするほどに大好きだ。そのくらいうまい。
私も必ずおかわりする。食べたくなってきた。
また日本酒とガリでリセットし、次なるマグロを迎える。

5貫目
本日はなんと中落ちの握り。私中落ち大好き。軍艦じゃなくて握りというのも、大将の技術の高さがうかがえるように思う。さっぱりした脂を感じ、夏にぴったりだ。これもまあとにかくうまい。この辺りからうまいとしか感じられなくなってくる。
ちなみに、大将は割と産地にはこだわりが無いようだ。いろんな産地を言われるので全然覚えられない。しかし、その産地の特徴等をこちらから聞けば詳しく話してくれるのでそういう楽しみ方をしてもいいかもしれません。

6貫目
そろそろ折り返しの6貫目この辺りは毎回変動があります。季節の魚だったり、江戸前の伝統的な煮蛤だったり、貝類も結構多い。あとは7貫目に出てくる海老が出ることもあります。この日は北寄貝。貝独特のエグみのようなものは一切なく、あまくて噛めば噛むほど味が滲み出てくる。ジュワッ、ジュワッと出てきてまるで炭酸ジュースのようだ。この辺りですこし落ち着きを取り戻す。シャリの酸味を貝の旨味が包み込むので角が取れた感じでまろやかだ。貝も極力口の中に残らないよう柔らかく処理されている。
日本酒に合いますな。

7貫目
6貫目か7貫目には決まって車海老がでる。車海老は提供する直前に茹でられる。車海老は茹でたてが1番うまいのだ。そして茹でたあと適温まで冷ましてある。温度管理もバッチリだ。握ったあとは包丁で半分に切ってだされます。なんだかちょっぴり特した気分。海老は紅白の模様がハッキリしてるのがおいしいとされてます。みてくださいこの綺麗な模様。うまいんだろうなと思いながら素早く口の中へほりこむ。エビはムチムチぷりぷり。甘くて美味しい。シャリの酸味がまたエビの甘さを増幅される。ゆっくり味わい満足感に包まれながらも、さらにもう一個食べられるという事実に心が踊る。日本酒を挟んで残りの一つにも手を伸ばす。幸せアゲイン。

8貫目
この辺りはだいたい季節の白身がくる。クライマックスにむけて、これまでのテンションを一度落ち着ける。この日はキスだ。時期によっては春子鯛やサヨリなんかが出てくる。サヨリは一度お刺身でもいただいたがトゥルントゥルンで絶品。また食べたい。
話を戻そう。ご存知の方も多いと思うが、キスはお刺身で頂こうと思うとかなり水っぽいのでイマイチだ。そのためフライや天ぷらにするのが一般的だ。釣りをしたことのない人はほぼお刺身を口にしたことはないだろう。しかし、このキスは感動的なほど水っぽさがない。これが江戸前の仕事の成せる技なのだ。大将に聞くところによると、まず塩で〆る。塩を振って数日寝かせて水分を抜き、最後に木の芽で香りをつけるのだ。おそらく、何度も水を拭き取り塩をしてというのを繰り返しているのだろう。この工程も一歩間違えばカスカスになってしまう。水っぽくならないが瑞々しさは残る絶妙な調整がなされている。
口に入れると、先ほどまでとは打って変わって静かな味わい。キスのさわやかな風味に木の芽の香りが追加されてものすごく夏を感じる。身はふんわりしていてシャリとよく混ざり心を落ち着かせる。決してNo.1にはならないが、この一連のコースの要と言える一品だ。

9貫目
この辺りからはもはや予測不能ゾーンだ。季節や仕入れによって大幅に提供されるネタがかわる。この日は鰹。鰹の握りは初めてだ。なんて綺麗で輝いているんだ。シャリを包み込むように少し大きめに切られたカツオ。素早く口は運ぶ。口に入れた瞬間カツオの香りがふんわり漂う。そしてとろける食感。脂もほんのりのっていて甘さも感じる。カツオの味わい伝えるためには私の語彙力が足りなくて、ものすごく美味しいカツオとしか言えない。周りに迷惑がかからなければおそらく大声で叫んでしまうだろうといううまさだ。カツオってこんなにうまいのか。

10貫目
握りも終盤に差し掛かり、最後の盛り上がりゾーンに突入する。この辺りから軍艦の時もある。この日は太刀魚。これがもうめちゃくちゃうまい。全部同じこと言ってるかもしれんが。この日1番かも。口に入れると、藁で燻してあるのだろうか、すごくスモーキーな香りが広がる。ウィスキーでも飲みたいくらいだ。そしてひと噛みすると脂がじんわりと溶け出してくる。ものすごい脂だ。しかし、スモーキーな香りと炙ってあるのか香ばしい香りと赤酢のシャリのおかげでしつこさが一切ない。全てにおいてハイレベルにバランスがとられている。感動的なうまさだ。すぐになくなってしまった。

11貫目
11貫目は雲丹だ。この日は多分北海道の紫雲丹。11貫目はだいたい軍艦が来る。雲丹は日によっては握りと軍艦の2回出てきたり、雲丹といくらが出てきたりする。この雲丹がまた絶品。妻はウニが嫌いだが、初めて食べた時は魂が宇宙に飛ばされていた。そしておかわりをしていた。いいウニってのはやっぱうまい。口に入れた瞬間、まずは海苔の香りをすごく感じる。この店の海苔よりうまい海苔を食べたことがない。それくらい香り高い海苔だ。そして、後からウニの濃厚な甘さが洪水の如く押し寄せてくる。幸せとはこのことです。うめぇ。いやマジでうめぇ。初めて食った時は飛ぶぞ

12貫目
仕入れに問題がなければ、12貫目は穴子と決まっている。穴子が出てきたらもうおしまいの合図だ。これも江戸前の伝統的な出し方。そして、この穴子がまた死ぬほどうまい。まず、甘いツメがたっぷり塗ってあって濃厚だ。そして、アナゴの身はふわっふわ。しかし、ここでも赤酢のシャリの仕事が効いてしつこくなりすぎない。もう天にも昇る気持ち。これだけ食べて帰ってもいいくらいに美味しい。お腹減ってきた。

最後
最後は玉子とかんぴょん巻き。干瓢巻き巻きは出ない時もある。この干瓢巻きがまたすごい。これまでかんぴょう巻きなんざわざわざ外で食べる価値のねぇ寿司だと決めつけていた。しかし、初めて頂いた時衝撃をうけた。電気が走ったかのようだった。それからというもの、私は出てこない時は必ず追加で注文をしている。赤酢のシャリにたっぷりのわさびを効かせて大人な味わいに。そして、海苔はパリパリと風味豊で最後にかんぴょうの甘さが柔らかく全てを包み込む。完璧な食べ物だ。干瓢巻き大好き。絶対食べて欲しい。
そして、最後の玉子。これも小肌とならんでそのお店の特徴が1番出る一品だと思う。ふんわりしてるお店もあればまつもとのようにぎっしりしてるのもある。玉子は甘い。めちゃくちゃあまい。そして、まるで焼きプリンのような食感。もはやデザート。世界で一番うまい玉子焼きやこれは。

追加
そろそろ疲れてきたのでもう詳しくは書かない。玉子が出たら大将から、これで一通りですと声かけをいただく。そのあと、もしもっと食べたければ追加で注文することが可能だ。大将にその旨を伝えると、よろこんで。と言ってくれる。私はこの日、鮪の赤身と中落ち、それから甘鯛を追加した。妻は雲丹と蛸(あまだれ)を追加していた。海老は数が少なくて追加できなかったようだ。このように、コースに出てきていないものでも追加可能な場合もある。大将に効いてみるとよい。
退店
満足したら、温かいお茶を最後に出していただける。ゆっくりといただいて、お会計をお願いする。ランチでツマミからのコース+日本酒1合+3貫追加でだいたい2万円(1人分)だ。会計を済ませると最初に預けた荷物が用意されているので受け取る。必ず大将が出口までお見送りに来てくださる。挨拶もそこそこに店に背を向けて立ち去る。帰路につきながら余韻に浸る。そして、デザートにスタバのフラペチーノを買って帰るんだ。
あとがき
思ったより超大作になったしまいました。最後まで読んでくださりありがとうございます。このご時世、中々京都へ旅行にきたり、外食するのが難しいと思います。テキストで皆さんに美味しい鮨を食べた気分を味わってもらえればと思い、書いてみました。またミシュラン星付きと言えどこのご時世かなり辛いようで、大将もなんとか生き残りますとおっしゃっていました。このテキストを読んで、誰か一人でもお店に足を運んでくれる人がいればとても嬉しいです。ミシュランの星が全てだとは思いませんが、まつもとは京都にありながらも江戸前の伝統的で丁寧なお仕事を全うされていると感じます。料理はもちろん、大将の握る姿、包丁さばき、掃除の行き届いた店内、肩肘張らず楽しめる空間。そして、江戸前の粋な計らい。こう言った点もお店が評価されている一因だとすごく感じます。京都に来て訪れる価値のある素晴らしいお店だと思いますので、ぜひ足を運んでみてください。
注意喚起(2023年5月追記)
こちらの記事を書いてから随分経つが、未だにみていただけているようなので注意喚起をしておきます。
2023年4月に京都駅付近に「鮨まつもと」が新たにオープンしました。
こちらはこの記事のお店と関係がありませんのでこの記事を読んでお店に行かれる方はご注意ください。
私の記事のお店は祇園にあります。
※下記のお店は本記事のお店とは無関係です。
以下、この記事がおもしろかったと感じでいただけた場合の課金用です。
※特に何も書いてないのでご注意ください。
ここから先は
¥ 100
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?