2024年ベストアルバム10選 by DMLJP
はじめに
2024年もたくさんの洋楽ロックのアルバムがリリースされましたが、そんな中から個人的によく聴いたお気に入りの10枚を選定しました。優劣の差はそれほどありませんので、順位は形式的なものと考えてください。デンマークの国民的ロックバンドDizzy Mizz Lizzy、およびバンドのリーダーでSSWでもあるTim Christensenがここ30年ほど最も好みのアーティストではありますので、今回選んだ作品もそれに通じる音楽性を何かしら備えているケースが多いと思います。そして中には、Timや他メンバーが聴いていたアーティストの作品も含まれています。それを踏まえると、Dizzy Mizz LizzyやTim Christensenが好きなリスナーにはより響くであろう10枚と言うこともできるかと思います。特に日本ではまだ海外ほど人気や知名度がないアーティストの作品は、もっと多くの人の耳に触れて大きな評価を得て欲しいですし、なんとか来日公演にもつながれば嬉しい限りです。
10位 Opeth 「The Last Will and Testament」
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スウェーデンのプログレ重鎮による14thアルバム。基本的にはここ数作品と同じく古典的プログレ成分の多いスタイルがベースであるが、初期のデスメタルサウンドの一要素でもあったグロウルが効果的に復活している。ジャケットが示す通りダークなコンセプトやストーリーに呼応するようにスリリングさとダイナミクスがより強調された展開は飽きずに一気に聴ける。
9位 Raphael Gimenes 「Dinamarca」
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デンマークで活動するブラジル出身のフォーク系SSWの4thアルバム。Tim Christensenも現在のデンマークで一番好きなアーティストと発言している。これまでと同じくアコースティックギターを主軸にオーケストラやパーカッションなど様々な楽器を組み合わせた壮大でオーガニックなサウンド。南米の大自然に囲まれているような心地好い雰囲気は癒し効果もある。それと同時に時折見せる自然の厳しさや畏怖のような不穏さの表現も絶妙な隠し味になっている。
8位 Toe 「Now I See The Light」
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日本のポストロックバンド9年ぶりの4thアルバム。各楽器が主役として独立しながらも複雑に絡み合い一つの楽曲としてまとまっていく構成は見事。基本はポストロックでありながら細かいアイディアは他のジャンルからの引用も多くあってToeでしか出せないオリジナリティをさらに強力なものにすることに成功している。長い間待った甲斐があったと思わせる大幅な進化が嬉しい。
7位 Blood Incantation 「Absolute Elsewhere」
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アメリカ出身のオールドスクールなデスメタル+古典的プログレバンドによる3trdアルバム。メタルにしてもプログレにしても様々なジャンルを取り込んで発展してきたが、この組み合わせたがまだ残っていたかという驚きがある。デスメタルパートもプログレパートもそれぞれ完成度が高く、無理に馴染ませるような展開はせず、不自然さや違和感を残すことでフックに転換させる潔さがそのまま面白さとなっている。
6位 Mono 「Oath」
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25周年を迎えた日本のポストロックバンドによる12枚目のアルバム。盟友で名プロデューサーであるスティーブ・アルビニがこの作品を最後に急逝してしまったのが惜しまれる。パンデミックを経験したことで、すべてに対する愛と感謝をテーマに制作しており、今までで最もポジティブで優しさや希望に満ち溢れた方向性。オーケストレーションと調和も極めてナチュラルで素晴らしい。Tim Christensenはここ数年で最も影響を受けたアーティストとして挙げている。
5位 Judas Priest 「Invincible Shield」
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結成50周年を迎えたメタルゴッドの19thアルバム。個々の楽曲の充実度が驚異的に高く、全体的にも過去に発表した数々の傑作に全く引けを取らない。これぞヘヴィーメタル、これぞジューダス・プリーストと断言できる。作曲も演奏もリッチー・フォークナーの貢献度が特に目立つが、ロブ・ハルフォードのハイトーンヴォイスやその他のメンバーのプレイからも並々ならぬ気合いと究極のメタル愛を感じる作品。
4位 Tigran Hamasyan 「The Bird Of A Thousand Voices」
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アルメニア出身のジャズピアニストによるアルバム。ジャズと言ってもハードロックやプログレの影響も受けているので、ハードなサウンドや複雑な展開が魅力。ヨーロッパとアジアの中間にあるアルメニア出身という点でも、非常に独特の響きを持った旋律がハマる。今回はエレクトロなサウンドも取り入れたり、アルメニアの物語に着想を得た二枚組のコンセプトアルバムという新鮮さもある。
3位 96 Bitter Beings 「Return To Hellview」
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アメリカ出身のオルタナメタルバンドの3rdアルバム。90年代のオルタナをベースにエレクトロやサイケの要素も入っている。やたらとキャッチーなコーラスにダンサブルなビートやグルーヴの組み合わせはニューメタル的でもあり、ライヴでより一層盛り上がるのが簡単に想像できる。なぜか北欧のFreak Kitchenに通じる曲もある。現代では希少なスタイルと完成度は大いに支持したい。
2位 Lowen 「Do Not Go To War With The Demons Of Mazandaran」
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イギリス出身のサイケ/ドゥーム系バンドの2ndアルバム。中東の血も通う女性Vo.ニーナの力強く伸びやかな歌唱が大きな魅力となっている。ヘヴィな伴奏と中近東的なメロディーも一度聴くとクセになる。アルバム全体は統一された雰囲気ながら起伏に富んでおり、プログレからの影響も強く感じられる。
1位 The Smashing Pumpkins 「Aghori Mhori Mei」
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アメリカ出身のオルナタバンドの13枚目のアルバム。かつての王道オルナタスタイルをモダンにアップデートし、新たなマスターピースを完成させた。TOOLなどの影響も感じされるヘヴィチューンからストリングスの入った壮大なバラードまでカラフルな展開は聴き手の意識が離れる隙を与えない。首謀者ビリー・コーガンの奇才ぶりは衰えるどころか第2の黄金期を迎える予感さえさせる。
おわりに
以上が2024年のベストアルバム10枚でした。ジャンルとしてはオルタナ、プログレ、メタル、ポストロック、ストーナー、サイケ、ドゥーム、フォーク、SSW、ジャズとそこそこ幅はあるものの、それ以外のジャンルは昔ほどピンとくることが少なくあまり聴かなくなってきています。限られた時間の中で、ある程度絞り込んで深堀りしているからこそ良いアーティストや良いアルバムと出会うことができたと感じます。特にポストロックやストーナー、プログレあたりは新旧を問わず他にも繰り返し聴いた作品は多く、Dizzy Mizz LizzyやTim Christensenの最近のスタイルが気に入っている影響が大きいです。Tim自身のレコメンドする作品にも当たりが多く、彼と趣向がもともと近いことにも改めて感謝しています。来年も同じようなジャンルを中心に聴いていくと思いますが、新しい方面での出会いも期待はしたいところです。お薦めのアルバムはXアカウントのほうで随時紹介していく予定ですのでチェックして貰えると嬉しいです。また、年明けに10選に惜しくも漏れた10選を掲載しようかなと考えています。