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【海外レビュー翻訳】坂本慎太郎「ナマで踊ろう」|Pitchforkによるレビュー

アメリカの音楽メディアPitchforkによる、坂本慎太郎の2nd「ナマで踊ろう」のレビュー。
今回もこれを翻訳していきます。
人類滅亡後に流れている音楽」というコンセプトで作られた今作。
ジャケットも危ない感じ。
今作のスコアは7.1点、前作からは少し落ちましたが7点台です。
レビュー内で上げられてるのがフレンチポップからジム・ジャームッシュ監督の映画までと、比較対象や影響元として出てくるものの幅広さが半端ないですね。
ライターってそこが売りってのもあるんでしょうが、色んなカルチャーのライブラリ能力がすごいというか、自分の知らないことばかりで本当に勉強になります。
ただ、海外レビュアーの言い回しはとにかく分かりにくいものが多い…。
今回も意訳、雑訳多いです。
予めご了承ください。


日本のロックミュージシャン達は、ある種の自由を享受していた。
その自由とは、戦後の在日米軍のラジオからElvis Presleyを知ることができ、ブルースかフォークかといった伝統への忠誠をあまり気にしなくてもよいという、何とも風変わりな恩恵である。
それは、オリジナルであることの苦しみからの自由であり、別の言い方をすれば、そういった自由が坂本慎太郎のようなアーティストを生んだのだ。
坂本がゆらゆら帝国で演奏していた、セクシーなサイケ・ロックは、そのルーツであるサンフランシスコからロンドン、デトロイトを通過した、サイケデリックと麻薬の影響によるオリジナルの音楽だった。
しかしながら、Julian Copeが、日本のサイケデリアに関する自身の研究について記したJaprocksampler:邦題サブタイトルは「戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか」)において説明している通り、日本の愛好家はNuggets:おそらくは「Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era, 1965–1968」というサイケ系のコンピレーションアルバムのことだと思われる。確証は無い…。)以降の時代を推し進め、日本語に訳していったが、彼らはドラッグを避け、同じような高揚感を音楽によって得るために、異なる方法を選んだ。

:「Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era, 1965–1968」から何曲か。13th Floor Elevatorsは1stが有名ですね。前回記事で登場したNazzも入ってます。)

ソロアーティストとしての坂本は、音楽的な伝統におけるオリジナルさというものに対しては全く無関心で、彼の自我ともいうべきものは、彼のレコードでは度々消えている。
2012年のアルバム、「幻とのつきあい方」では、彼はポストモダン以後の歪曲された模造品のラウンジ・ポップをマスターした。
西洋の50年代、そして60年代の明るくて、度々うんざりさせられるようなポップ・ミュージックは、(Free Designからフランスの yé-yé、そしてMartin Dennyの 「exotica」 の音像に至るまで) 海外の影響を受けた日本のレコードオタクのお気に入りであり、坂本もその例外ではない。
彼の2枚目のソロアルバム「ナマで踊ろう」において、彼のそうしたサウンドへの愛着はさらに増し、向こう見ずな90年代後半と、go-goダンスの60年代を思い起こさせる全体像を築き上げた。

The Free DesignはNYのボーカルグループ。Martin Dennyエキゾチカというイージーリスニングのジャンルの代表者らしいです。)

: フレンチポップのジャンル、yé-yéが特集された雑誌のトレイラー?らしきものです。このへんはまだまだ勉強不足ですね…。)

Go-Goダンスはこれ。いかにも60'sって感じですね。)

前作のディスコ的なギター・リックやオルガンからの変化として、今作では坂本がハワイアン・スチールギターやブラジル楽器のクイーカ、そしてバンジョー(これらは「あなたもロボットになれる」で、無数の小さな歯車が素晴らしいコンサートを指揮しているようなサウンドになるように、選ばれループされた楽器だ。)に夢中になっているのが見て取れる。
もし今作になにか西洋的なものが(「Sleep Walk」以外に)あるとすれば、それはBeckだろう。(98年リリースの「Mutations」の、重く瞼を閉じた、生来の生真面目な反復。)
そしてインディ・ポップの遊び人、雇われアレンジャーであるSean O’Haganと彼のバンドthe High Llamasもそうだろう。
彼らの90年代のアルバム「Santa Barbara」、「Hawaii」はVan Dyke Parks:アメリカの作曲家、プロデューサー。)のアメリカ的な野望を吸収し、様々な問題を解決し、汚れのない音楽の教科書を作り上げた。
Beckの「Tropicalia」(:上述のアルバム「Mutations」収録曲。)のように、今作は
西洋人が外向けのキッチュ(観光客のお土産の、リオデジャネイロとかホノルルの景色の良い写真が写ったポストカードのような)とでも呼びそうなものが、完璧に制作されたバージョンのものだ。

:文中の「Sleep Walk」はこれのことだろうか。スチールギターがそれっぽい。)

High Llamasのアルバム「Hawaii」より「Nomads」。そしてBeckの「Tropicalia」。ボサノヴァ。)

だが、坂本のユニークな点は、本人にとって異国である西洋を、かすかに光る水彩画に変えてしまう技巧や、Steely Danのけばけばしいディスコソングとしては最後となった「Gaucho」を思わせるシンプルなグルーヴを作り出す力(「義務のように」を除けば、)でもなく、BeckGrace Jones、そして映画「Mystery Train」でメンフィスを放浪する横浜のティーンエイジャー、といった先人たちから習得した粋な無関心さをもって、上記のことを行ったという点だろう。
そうだ、坂本は「義務のように」や「スーパーカルト誕生」という、日本にいまだつきまとうお堅い社会構造に対する無感動な2つの物語において、反体制的なモノの習性について探求している。
だが彼を予言者扱いする前に、彼が歌うもう一つの選択肢をよく覚えておこう。
それは、「眉間に小さなチップを埋めて」、ロボットになることだ。
坂本のやり方はもちろん奇妙なものだが、同時に解放感が感じられる。
つまり、正しさというコンパスを無視すれば、どこへでも旅することができる。

Steely Danの「Gaucho」、Grace Jonesの「I've Seen That Face Before」。)

ジム・ジャームッシュ監督の「Mystery Train」予告編。なんとあのジョー・ストラマーが出演しています。)

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