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環境は人を変える
じゃあ、皆間隔をあけて、一番上の段から、塗りつぶしていってくれる?
〇〇さんは、むこうが遅れ気味やから、むこうに入ってサポートしてくれる?
今度は、上2段を山の方へ向かって塗りつぶそうか。
脚立や空コンは、置きっぱなしにせずに、一緒に持って移動してよ!
さぁ!休憩にしよう!
さぁ!やろか!
大勢のアルバイトさんが来てくださっての、この時期の山椒採り。
私の大きな声が響き渡る。
土曜日曜ともなると、アルバイトさんは二十人近くになることもある。
声を出しながら時々思う。
これだけ、人って変われるもの?
はじめてドキドキしながら、アルバイトのみんなに仕事の指示を、大きな声でしたことを思い出す。
それまで、主人が常にそばに居て、アルバイトさんに指示を出してくれていたのに、私は急に「お客さま」から、仕事場を取り仕切る「当事者」になった。
農家をやっている親戚関係のおばちゃんたちが、来てくれている分には、あうんの呼吸で仕事は進んでいったが、今度はそうもいかない。
仕事を効率よく進めるには、腹から声を出して、皆に聞こえるように明確に指示を出さなきゃ伝わらない。
迷っていてはダメ。
仕事の進み具合にあわせて、次なるミッションを考え、明確に伝えるにはどう伝えればいいのか考え、慣れないうちは、頭の中でリピートして、腹を決めて声をだした。
今となっては、声を出すのにそんなに勇気はいらないけど、ちょっとした「勢い」は必要だ。
大きな声で明確に指示をすることによって、現場は引き締まり、仕事の進み具合はよくなるように思う。
学生時代は、教室の隅に居るような大人しい性格で、中学のときなんて私の声を聞いたことのない子もたくさん居たと思う。
OL時代も、「結婚するので退社します」と挨拶したときには、驚かれて騒がれたくらい目立たない存在だった。
自己主張することがとても苦手で、皆と調和するために自己主張はずっと「悪」だと思ってた。
学生のころは、内容に限らず、まずは頭のなかでリピートしないと言えなかった。
社会人になるころには、近しい関係の人とは、喋れるようになったけど、こちらに嫁いできて、子供たちの通う保育園や小学校の保護者の集まりなどでは、まだその傾向があって、大勢のなかで普通の会話をするにも頭のなかでリピートが必要だった。
相手に嫌がられるだろうな・・・と前もって分かってることは、なおさらだ。
だから、結婚して主人に言いたいこと、分かってほしいことは、ためにためこんだ。
限界まできて、やっと気づいた。
夫婦といえども、他人同士。
分かってほしいことは、言わなきゃ伝わらないんだ。
実家の家族以外の、他人に「嫌がられるだろうな」と分かっていることを言ったのは、初めてだったかもしれない。
そのときも、何度となしにリピートして伝えたけど、伝わらなかった。
伝わらないイライラも重なって、長年にわたって貯めていたものを一気に感情的になって言ったものだから、散々だった。
その後、少しずつ賢くはなったけど、結局、嫁姑のことは、主人に言ったってダメ。
私たちの、喧嘩が増えるだけ。
それを察した私は、やっとのことで、イヤなことはイヤ。と言わなきゃ、義母に伝わらないと気づいた。
「イヤ」という言葉だけでは、ちょっとキツイかなと、理由もつけることを心がけて伝えよう。
これも、私からすると、ものすごい決断だった。
「デキル嫁は、姑にモノ申してはいけない」と、自分で勝手に決めていたものだから、モラルに反するようで最初は心が痛かった。
それも何度となしに頭のなかでリピートし、それでもなおかつ、強気に出るくらいの気持ちでいかないとと、勇気がいった。
自己主張すると、義母は言葉で攻撃することはなくなった。
自分の身を守るためにも、自己主張することは、大事だと学んだ。
だけど、大半のことは伝わらないと察した。
伝えるより、自分で強行突破。
自分で都合のよいように、機転をきかせて動いたり動かす方が楽。
それも察したことだけど、どうしても我慢できないことだけを伝えようと決めた。
ついこの間も、サラッと言ったよ。
だって、息子の部屋から服を持ち出して洗濯するんだもの・・・。
そのときは、ほんとにサラッと言えた。
でもね、気をつけないと、「言わなきゃ」「言わなきゃ」。
「イヤなことはイヤ」と自己主張しなきゃ・・・と、そんな思いを強くしてきたせいか、ついつい語尾がきつくなっちゃうことがある。
この間も、ひと回りほど年下のアルバイト君に言われちゃった。
普通に会話してただけなんだけどね。
奥さん、怖いっすね・・・!
何言うてるの!こんな優しい奥さんいないわよっ!
ここの農園の奥さんは、優しいのよっ!
覚えておいてねっ!
なーんて返しができるようになったんだ・・・と、しみじみ思うわたし。
それも、ここに嫁いできたからかな・・・。
単に、普通のおばさんになっただけかもしれないけど。