こんなに楽だったら罰が当たりそう(義両親の看取りにかんして)
お前らに、エライ迷惑かけてすまんなぁ。
今までに、義母は何回私たちに言ってきただろうか。
そのたびに、夫は優しい言葉を返すし、私もその時ばかりは適切な言葉を返す。
言葉を返すと時々義母は涙したりするけど、ただ単に返事を聞いて安心を得たいのかだなんてことも思ったりする。
だけど、その時私が発する言葉は、紛れもない嘘のない言葉。
何度も聞くのが面倒で返事をしないこともあるし、こちらに余裕があると返事をする。
義母さん、義母さんだって、おばあさんを見送ったやんか。
順番や。順番やで。
私だって、嫁いでくるときに、義母さん達と同居するのを了承して結婚したんやし、最期まで見送る覚悟で来たよ。
この間はそう伝えた。
そう、三十年ほど前に嫁いでくるとき、私は義両親と同居の条件を受け入れ、結婚した。
あと、農業を一緒にするとか条件にあったけど。
その時、壮絶な介護とかやらを想像した。
私は最後、義両親の介護に勤しむんだろうなとか。
ところがどっこい、義父が床に伏したのは、ほんの数か月のみで、夫やケアマネさんの勧めで病院に入院の後、1カ月ほどで亡くなった。
義父が床に伏した数か月の間、生まれて初めて他人のトイレの世話なんかを経験したが、介護の内には入らない介護だった。
だけど、義父が自ら最終的に「入院」という選択をしなかったり、義父が入院先から家へ帰ってくるとなっていたら、がっつり『介護』をしていただろう。
義母も義父の病が進行して亡くなる過程で、認知症がすすんできて、今なお進行中だが、なんてことはない。
日常生活の中でいろいろややこしい事がでてきているが、時々トイレを汚されるだけだし、食事は用意しておくと自分の食べたいだけ食べているし、薬も用意しておくと服用しているし、お風呂も就寝も問題はない。
ただ、料理や洗濯はできなくなったし、年から年中「入れ歯がない」と騒いだり、認知度が低下しているため、八茶菓めっちゃかなことを言って周囲を困惑させたりする程度だ。
ともあれ、嫁姑のあいだなんてものは、もとから宇宙人同士のようなもの。
義母の宇宙人度が増したというだけで、許容範囲内だ。
月曜から土曜までデイサービスへ通ってくれていて帰ってくるのは夕方で、介護度もあがって施設入所の準備が淡々とすすんでいる。
これで、デイサービスへ通うことがなしに、私がつきっきりで一緒に居るとなると話しは別だが、がっつり『介護』には至らない。
そう!
義父母共に、私が結婚当時想像していた「介護」とは、ほど遠い。
そう!
私が思っていた、義両親の老後を看取ることを考えれば、ものすごく楽。
「介護制度」がすすんだお陰もあるのかもしれないけど、こんなに楽だといつかしら自分に仕打ちが返ってくるかもだとか、バチが当たるのかもだとか、少し恐怖にさえ思う。
「完全同居は大変でしょう」と一般的には言われるけど、私のような環境だと、結婚当初はメチャクチャ大変だったけど、今となっては、義両親ありきの日常。
日常に義両親が入り込んだ状態。
介護が楽だと、何てことはない。
10歳くらい年が若い実両親と比べても元気なのは、長年にわたって農作業をしてきたからだとか、自然に囲まれたところで生活しているほか考えられないが、丈夫な義両親に救われたといったところ。
それに比べると、結婚と同時に自分たち夫婦と、生まれてきた子供たちの世帯で数十年やってきて、いきなり義両親の介護がやってくるとなると、ものすごく大変なのではないかというのが、私の見立て。
自分も年を重ねていく過程で、義両親が年老いていくことは気になるだろう。
だけど、結婚して数十年もの間に、自分たちだけの生活が確立されていて、自分たちのペースもあるなかで、義両親とは年に数回会うだけの間柄となると、なかなか初動を起こせないのではないかと、思ったりする。
私自身が核家族に育ち、祖母とは年に数回だけしか会わない間柄だったり、実父が定年後里に帰り、父方の祖母と同居を試みた経緯などがあって、想像を馳せる。
私の場合だと、結婚と同時にエンジン全開で義両親との同居に挑み、だんだんとエンジンを緩めてきたが、もし私がその立場だったら、エンジンがかかるかどうか・・・。
そう思う経緯があるので、「note」界でも、普段、舅姑さんと別居しているにもかかわらず、やれ入院の付き添いやら、入院の見舞いやら、様子を見に行かれたりと、義理の実家のために動いていらっしゃる方を拝見すると、お声をかけたくなる。
本当に凄いなって思うから。
私自身は、そこまで動く必要もなかったから。
だけど、私が義両親と同居という環境故、声を掛けられた方は、複雑な思いをされる方もいらっしゃるのかなと、時々思う。
そりゃあね、八茶菓めっちゃかな義母に振り回されて、腹が立つこともあるのよ。
忙しい時には、家事の出来ない義母にイラっとすることもある。
だけど、声をあげるほどの大変さはないのよ。
一番しんどかったピークは、結婚して10年の間だったし、義母はまだまだ自分の足で歩いてくれているし、デイサービスに通ってくれているし、介護らしい介護もなし。
数週間に一度の通院は、運転ができる夫が連れて行ってくれるし、私は薬の用意と食事の用意のみ。あとは家事だけ。
ほんと、こんなに楽でいいのかしら・・・ね。
先はまだ分からないけど。
ちなみに、義母が看取った、90代半ばで亡くなった、夫の曾祖母は三日寝付いただけだったという。
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