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【ディスカヴァー春の応援企画】#わたしの受験記(東大出身/プロダクト部牧野の場合)

4月から受験生になる学生のみなさま、
来年からではないけどそろそろ受験のことを考えなきゃという方々にもオススメしたい一冊が、
喜多川泰さんの『手紙屋 蛍雪編』。

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本日から3日間、社員がリレー形式で受験の思い出(#わたしの受験記)を語ります。
トップバッターは、プロダクト部の牧野です。

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先週、リモートワークも飽きてきて、ふと散歩をしてみた。
ちょっと肌寒く、でも街には暖かい色が出てきて、春を感じた。

家に帰る途中で、制服を着て、卒業証書を持った小学生とすれ違った。
そうか、そんなシーズンか―


春の時期、春めく街を見て、卒業や入学を思い出す人の方が多いことだろう。

しかし、僕はいつも、大学受験の受験会場にいた時のことを思い出す。
10年ほど前に受けた、東京大学の後期試験会場だ。


まだ少し冷え込む講堂で、
自分を含む、500人に満たない受験生が、
近からずも遠からず、絶妙な距離感で、
背筋をピンと伸ばして、
息を張り詰めて座っている。

そして、その中に、僕もいた。


前期試験の合格点に数点足りず、落ちた悔しさと、
後期試験の受験資格を得た嬉しさと、
諦めと、そして少しの希望を持って。

緊張感と、興奮と、冷たさと、いろいろな感情がごちゃ混ぜになったような。
ずっと急降下するジェットコースターに乗っているような、
そんな感覚を覚えている。


そして、試験前。
そんな感覚を感じながら、
受験までの高校生活を思い返していた。

「受験は通過点で、ゴールではない」
「受かるための勉強が、本当の勉強ではない」
といっちょ前に言い張り、嫌いな先生や短絡的な授業は聞かない。
教科書の分からない部分は、納得するまで徹底的に考える。

やりたいと思ったことは、勉強そっちのけでやる。
学祭も、美術部・ディベート部の活動も、やりたいと思ったらやる。
自習の時間があれば、友達と遊ぶ時間として遊ぶ。
当時、福山雅治が好きで、ガリレオシリーズがあるからと、ドラマ・原作・映画を見る時間は惜しまない。


高校の3年間は、楽しかったし、好き勝手やったし、悔いはない。
けれど、もうちょっと勉強しておけばよかったという気持ちはやはりあった。

だって、わがまま言って、その結果、前期試験不合格。
ダサい。カッコ悪すぎ。

センター試験の結果で何とか引っかかり、後期試験を受けられることになったが、
大学で張り出しを見た後、母親への報告の電話をかけるために手に取った携帯は、いつもよりとても重かった。


だから、その後の後期試験までの期間は、一生分やったのではないかというくらい勉強した。

過去問は何十年分もチェックし、
数学の問題集は、2日で1冊終わらせた。
考えることと早く解くことを両立するための勉強を、寝る間も惜しんで繰り返した。

頑張ったからこそ、受かりたい。

友達が合格し、受験を終える、もう受験シーズンが終わる頃、はじめて芽生えた気持ちだった。


…そこで、高校生活の回想は終わり、受験会場に意識が戻る。
もう、鳥肌はおさまっていた。
やる気にあふれた過去の僕に、死角はなかった。
結果も合格で、浪人することなく、大学生活を送ることができたのであった。

めでたしめでたし。


―ここで終われば、ただのハッピーエンド、自慢話。
なのだが、会場の雰囲気とともにもう一つ、思い出すことがある。

それは、後期試験の結果を、東京から伝えてくれた兄の電話の声だ。


実は、兄は、僕にとっての「手紙屋」だった。

納得するまで徹底的に考えるとき、答えを指し示してくれたのは、先生でも塾講師でもなく、兄だった。
勉強時間が短い僕に、将来のことも含めて心配し、声をかけてくれたのも兄だった。
後期試験前、過去問の採点や分からない問題の解説をしてくれたのも兄だった。

何のために勉強し、何のためにそれを使うべきなのか、そして自分は何をしたいのか。
その意味を教えてくれたのは、兄だった。
そして、兄ナシでは、ありえない合格だった。


だからこそ、どんなに感動する映画を見ても泣かない僕だけど、
電話で兄の喜ぶ声を聞いたときは、少し泣いた。

そんな、思い出、感情を、兄の声を思いだすのだった―


それから10年。
大学院に進学し、研究職を目指したりもしたが、
今はディスカヴァーという出版社で働いている。

ディスカヴァ-で働こうと思ったきっかけは、大学生活に興味を持って行った、学部時代の活動。そこから、学習・教育に興味を持つようになり、入社に至った。

そして、入社からはや5年。
懲りずに、興味をもったことをやり、好きなこと・楽しいことをやるという姿勢は、いまだに変わっていない。


受験が終わり、本当にこれでよかったのかと考え込んだことは何度もあった。
しかし、自分の好きな気持ちを信じれば何とかなるものだな、と思う。そして、そこにこそ、夢や情熱があるのだと思う。


本気でやれば何だって面白い。そして、本気でやっているものの中にしか、夢は湧いてこない。 

―『スタートライン』(喜多川泰著・ディスカヴァー)より

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▼その他、喜多川泰の名作が紹介されている特設サイト
https://d21.co.jp/column/kitagawa_yasushi/

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