“船橋出身者の名刺代わり”を目指して — 船橋市観光協会とイシイがタッグを組んで生まれたご当地「ふなばしカレー」誕生秘話
千葉県船橋市に本社を置く我々、石井食品。
戦後すぐに、千葉の海で取れた小魚を中心に、佃煮を作る会社として発足しました。
そんな船橋とは縁の深いイシイですが、様々な地域とのコラボ商品を発売してきたにも関わらず、船橋に特化した商品を開発する機会は多くありませんでした。
創業から78年の時を経て、今回素敵な機会をいただき完成したのが、「船橋」の魅力をぎゅっと詰め込んだご当地カレーである「ふなばしカレー」です。今回は、このふなばしカレープロジェクトに関わって下さった、船橋市観光協会の栗田様と、石井食品の髙野さん、山﨑さんにお話を伺いました。
船橋の代名詞となれるよう…いや、船橋の代名詞になりますので、ぜひ応援いただけたら嬉しいです!
お話しをしてくれたのは…
船橋の隠れた魅力?地元の人にもっと届け
— コロナ禍になり、東京にも通勤しやすい「船橋」という地は、ベットタウンとしてもより注目を浴びやすい環境にあるのではないかと思います。船橋の現状について、改めて教えてください。
(栗田)船橋は、千葉県内では千葉市に次いで第2位の人口を誇る市で、政令指定都市ではない市区町村では日本最大の人口を有しています。商業、工業、農業、水産業、どれも盛んで、特に船橋はにんじんの生産量が多いことで有名です。コロナ禍と呼ばれるようになってから、船橋にお住まいの人が、より自分が住んでいるこの地域に目を向けてくださることが増えていると感じています。船橋という地域の学習は、小学校の授業を通して行う機会はありますが、逆に大人の方には情報が届きづらいのが現状です。より船橋を身近に感じてもらうため、観光協会では、船橋を盛り上げるため、イベントやご当地グッズの開発など、たくさんの取り組みを行っています。
例えば「街ガチャ in 船橋」という取り組みでは、船橋市の名所や名物をキーホルダーにして展開しています。大人世代のガチャ人気の後押しもあり、各シリーズ10種類のバリエーションで展開しているガチャは、すでに第3弾まで発売しています。
今までに「水神祭(すいじんさい)」や「アンデルセン公園」「小松菜ハイボール」「ばか面踊り」などを模したキーホルダーが発売されています。
— 人口が増え続けている大きな都市という印象がある一方で、農業が強いことは知りませんでした。そんな船橋市が、今回「ご当地カレー」の企画に乗り出したのはどういった背景からでしょうか?
(栗田)市内の産業をもっと盛り上げるための観光庁の事業に応募したことから始まりました。大変長い名前なのですが「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業」という取り組みです。
この事業では、食だけでなく自然や伝統芸能に関するもの、その他、体験型の事業も多く採択されています。船橋市は、「首都圏、体験、新発見!?意外と知らない船橋の「食」ミステリーツアー造成事業」として採択されました。
この事業の一環として、食の領域でも船橋市出身者の名刺代わりになるような商品を作りたいと考え、カレーの開発に至ります。
— 今回、「ふなばしカレー」にチャレンジするに至った経緯について教えて下さい。
(高野)地元のご縁で、新聞社の千葉日報様が間に立ってくださったことで実現しました。イシイとしても船橋に特化した商品を販売するのは初めてなので、とても情熱を持って取り組んでいるプロジェクトです。船橋市観光協会さんを中心に社内外のメンバーをすぐに集めて「チーム船橋」を組織しました。
(栗田)ミートボールというご家庭では馴染みのある商品をお持ちの企業さんなのに、船橋の会社であるということが案外知られていないのは大変残念でした。私自身も佃煮事業で始まった会社であることを、今回のプロジェクトで初めて知りました。
もっと船橋市民に「イシイは船橋の会社だ」という誇りを持って欲しいと思っていたので、今回のプロジェクトは本当に嬉しいです。
最近はご当地のレトルトカレーや特定のお店のレトルトカレーがたくさん出ていますよね。そこで目をつけたのが「カレー」です。箱を並べて置くことで見た目のインパクトもあるレトルトカレー。これを船橋にも作りたいと考えていました。
— 今回の主な材料は「小松菜」ということですが、カレーの開発で難しかった点はありますでしょうか?
(山﨑)今回のカレーで使用するメインの素材は「小松菜」。実は、葉物野菜は高温処理が苦手です。加熱すると茶色く変色してしまうので、どうしても使用を避けがちでした。特に、イシイの製造過程では食品添加物は使っていないので、おいしそうな色味を出すことへの難易度はさらにあがります。
しかし、船橋といえば、印象的なのは「小松菜ハイボール」だと思っていました。小松菜を使いたい思いと、色味が悪くなるのではないかという葛藤はあったのですが、やはり小松菜を使うアイデアを優先することに決め、開発に着手しました。
— 結果、野菜の甘味も感じられる船橋野菜のカレーとなりましたね。他にはどんな船橋のおいしさが詰まっているのでしょうか?
(栗田)小松菜以外には、千葉県の中でも船橋市が最も生産量の高く、地域団体商標でもある「船橋にんじん」。その他、船橋産の梨をピューレにして使用しています。船橋三大農産物を3つとも贅沢に使用しています。実はホンビノス貝など、今回は使用を見送った名産品もあります(笑)それはまたゆくゆく…。
この取り組みは、単に船橋産の野菜を使用しているだけでなく、「食品ロス」の削減にもつながっています。例えば、梨の場合は「蜜症(みつしょう)」と呼ばれる、実が半透明になってしまう現象が起きることがあります。蜜症が生じた実は、味はおいしいものの、食感と見た目が損なわれてしまうため、そのまま店頭に並べることはできません。そんな梨も捨てることなく有効活用するために、農家さんでは以前から「ピューレ」として加工する取り組みが進んでおり、今回はそれを隠し味に使わせてもらうことにしました。
このピューレの加工は社会福祉法人大久保学園の 「ふなばし工房」で加工されています。障害をお持ちの方をはじめ、地域のみなさんの雇用創出や、協働の機会に繋がっていることも喜ばしいです。
(山﨑)今回使用させてもらった「船橋にんじん」は大変綺麗な状態で工場に届けていただきました。イシイでは、素材を無駄なく活かすために、市場に出回らない形がいびつな野菜や、収穫過程で傷がついてしまった野菜を活用する取り組みを行っています。今後は、こういった食品ロスにつながる野菜の活用に対しても、観光協会さんと一緒に考え、微力ながらも農業の発展に繋げられたらと思っています。
— 素晴らしい農作物が集まりましたが、開発工程は大変だったと聞いています。他の開発メンバーからはどんな意見が出ましたか?
(山﨑)工場スタッフからも「小松菜いれちゃうんだ!」という驚きの声が、たくさん出ましたよ(笑)カレーになる前の小松菜はいわば「青汁」です。しかし、試作を重ねた末、青臭さが抑えられた辛さ控えめの優しい味に仕上がっています。野菜嫌いなお子さまでも気づかないのではないでしょうか?将来的には辛いバージョンなど、ラインアップが増えたら楽しいですね。
イシイの商品開発や生産に関わるメンバーは、単に仕事をしているというよりは、売り場や食べるお客様のお声なども気になってしまうような、お客様の気持ちに寄り添う人が多いのが自慢です。開発の段階から「この商品はどこで販売されるのだろう?」「売り場が見てみたい」と口々に言っていました。
実は、工場から出荷する段階で私たちが目にするのは、箱の中身だけのアルミ包装の状態なんです。まだ見ぬパッケージの箱のデザインを目にしたらびっくりすると思いますよ。ぜひみんなで売り場を見に行きたいですね。
— 今回はパッケージのインパクトも魅力の一部です。この絵柄のデザインも、船橋にゆかりある方に依頼されているんですよね。
(栗田)船橋在住の切り絵作家さん、中村頼子さんにパッケージデザインを依頼しました。有名な清涼飲料水のパッケージも手がけたご経験をお持ちの中村さん。しかし、流石にカレーのパッケージは初めてとのことで、依頼させてもらった時は驚かれていました。今回の依頼にあたり、改めて小松菜を観察して制作してくださったと聞いています。
中村さんには「街ガチャ」の絵柄作成でもお世話になっているので、船橋市民にとっては馴染みがありつつ、インパクトのあるデザインになったのではないでしょうか。本プロジェクトにあたって「オール船橋パワー」の総力戦で挑めたことは嬉しいです。
— イシイの生まれの地「船橋」の取り組みですが、これで終わってしまうのは寂しいです。これからの展望などはありますでしょうか?
(高野)今回のカレーでの使用は見送ってしまいましたが。船橋の名産品にはホンビノス貝があります。他にも、海苔、佃煮などの名前がよく挙げられます。このような海産加工品は、地元で頑張っている老舗メーカーも多くあるのですが、どうしても「贈答用」としての用途がメインです。船橋を代表する、カジュアルにお土産として渡せる様なアイテムは今まで多くありませんでした。
栗田さんもおっしゃる通り、これからは「名刺代わり」として船橋出身者の象徴となる様な商品を、どんどん手がけて行けたらいいですね。まずはこのカレーの知名度を上げていかねばと思っています。ここから第2弾、第3弾と続けばセット販売で手土産やギフトとしての質も高まると思います。
また。せっかく素敵なパッケージになったので、このパッケージを生かした売り場づくりをしたいです。
(栗田)イシイさんと一緒に、もっと「船橋推し」をしていきたいですね。船橋市とイシイは、包括的な連携協定というものを締結済みで、イシイの非常食を用いた防災の取り組みを行った実績があります。さらにこれからは、船橋のおいしいものを地産地消するための取り組みにも、一緒に挑戦したいですね。
— ゴールは「街ガチャ」のキーホルダーとして「ふなばしカレー」が採用されることですね!今日はありがとうございました。
販売店舗のご案内
船橋市観光協会(浜町 2-1-1 ららぽーと TOKYO-BAY 西館 1 階)
石井食品コミュニティハウス Viridian(本町 2-7-17)
ふなっこ畑(行田 3-7-1) ・船橋市役所地下 1 階デイリーヤマザキ(湊町 2-10-25)
船橋市観光協会オンラインショップ「BASE2784」
船橋市ふるさと納税返礼品 他