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ゆびさきほどの風邪を引いて

年内は日本にいます。師走ですね❄️

12/9(月) 晴れ
東京のナミビア大使館に行く。一月の出張のビザ申請のためだ。南部アフリカの日本と交流が少ない国でも、立派な大使館が東京の中心地にあることに驚く。神谷町の駅から坂を登る。ブリティッシュスクールが通りを挟んだ向かい側にあり、子供たちの歓声が聞こえてくる。

大使館の受付で係のお姉さんに書類を渡した。今回出張で訪れる北部が自身の故郷だと言うので「どんな場所ですか?」と聞いてみた。「田舎で、景色が白いよ」と予想外の答え。白? どんな景色で、なぜ白いんだろう。知らない国の話を聞くのはいつも胸が踊る。帰り道に恵比寿駅でラーメンを食べた。調べたら、ナミビアは国土の広さが日本の倍以上あるのに、人口は大阪市程度だそうだ。



12/10(火) 晴れ
大きく腕を振って、両足はできるだけ自然と前へ進むに任せる。足よりも腕を使うのがいいとどこかで読んでから、ランニングの時は意識的にそうしている。身体の中心軸を使って、ねじるように左右の腕を振る。ひとつの動作が流れとなって次に連結していくその引っかかりのなさが好きだ。それがするするする、といくときは調子がいい。シルクハットから万国旗を取り出す手品師を思い浮かべる。

ところが、今日はうまく身体が動かなかった。全身が硬直して、動作一個一個がバラバラだ。寒さのせいか。いや、風邪の引き始めだ。全身がだるくてじんわり熱を帯びている。ゆびさきほどの風邪である。早く寝よう。



12/11(水) 晴れ
昨日の続き。少し喉が痛く、夜、葛根湯を買って飲んだ(カッコントーって頼もしい名前ですよね、ところで)。調べてみたら、葛根湯はセルフメディケーション税制という制度の対象で、申告すれば購入費用が所得控除されるそうだ。セルフメディケーションは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」だそうだ。個人の健康維持のための自助努力ということだろう。

その通り、不調は自分で治すのがいちばんだ。でも、健康を保つための努力に眼を向け始めると、子供の頃がなつかしくなる。あの頃、風邪を引いた日は、学校に行かなくてもいい特別な日だった。当時家にはカセットデッキがあって、布団で横になってミヒャエル=エンデの「モモ」の朗読テープを聴いた。母が卵のおかゆを作ってくれたが、そこは子供で、肉や魚が食べたいと思っていた(母ごめん)。体調不良はどこからともなくやってきて、いつの間にかいなくなる、親戚の子供みたいなものだったのだ。あれから二十年が経った。僕はセルフメディケーションで葛根湯を飲むようになったが、いまだに「モモ」は読んだことがない。



12/12(木) 晴れ
仕事で使う「平和構築」という単語がある。国際協力業界の用語(?)で、ある国が紛争後に社会経済的秩序を取り戻したり紛争を予防したりすることを指す。地雷除去や元兵士のための職業訓練が代表例だが、最近ではひろく社会の安定や異なる社会背景を持つ人たちの共存を目指すための介入や支援を指すようになった。

英語で「Peace building」だと思っていたが、一語で「Peacebuilding」だと今日知った。ビルディングというとまるで平和が建造物みたいだ。少しずつ積み上げていくものという意味では当たっている。だが、経験上、平和はもっと流動的で形を変える、日々の生活に染み渡っていくものだとも感じる。

去年やっていたのは、難民居住区の仕事だった。一ヶ月ほどウガンダの難民居住区で調査した後、普通の街に戻ってきた。仕事帰りなのか早足のおばさんや友だちと笑い合う子供たちが夕陽に照らされた街路を歩いていた。

それを見て、肩の荷を下ろすように、緊張がほどけていった。難民居住区は必ずしも壮絶な場所ではないし(ウガンダ政府の難民政策は他国に比べて寛容だ)、難民にも日々の暮らしはある。でも、何かに脅かされることのない生活は、本当にそれだけで貴重なものだ。そう感じたことをふと思い出した。


12/13(金) 曇り
久しぶりの曇天。ずいぶん寒くなったが、今朝すれ違った中学生はカッターシャツで自転車を全速力で漕いでいた。最近、あのスピード、自転車で出してないな。



12/14(土) 晴れ
カネコアヤノさんの好きな曲を聞く。

眠れない 無理に寝ない
こうして誰かを想ったりして
明日の愛を想像する

カネコアヤノ/眠れない

今の所、これが眠れない時の過ごし方ナンバーワンだ。




12/15(日) 晴れ
今週もおつかれさまでした。今日は冬物のコートを買いに行く予定。朝はコーヒーを淹れて、シーツを洗っています。皆さんもそれぞれの場所でよい一日を!



(おわり)

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