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モンゴルの冬にまるまる
モンゴル🇲🇳です。本日の最低気温は氷点下26度!
2/3-7(月-金) ずっと晴れ、時々雪
「あのね、寒いってより痛いです」と言われた。モンゴルの首都ウランバートルは氷点下26度。どんな感覚も、度を過ぎると痛みに収束するらしい。「痛いほど分かる」という表現があるが、理解を痛みで例えるのは、達見かもしれない。
モンゴルの寒さは聞いていたので、準備は万端だ。肌着にシャツ、セーターとフリースのベスト、新調したダウンジャケット。下半身はタイツとズボンにレッグウォーマー。首から上はマスクとニット帽、セーターだ。札幌で過ごした学生時代より防寒戦闘力は二段上である。さあどうだ!
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ところが甘かった。胴体や下半身はいいのだ。寒いのは、足の裏である。厚手の靴下に防水靴で乗り切れると思ったら、冷気が生地を容赦なく貫き、一息に足の裏へ突き刺さった。まさに「突き刺さった」という感じだった。車に戻りたいが、今は聞き取り調査の途中だ。全身に渾身の力を込めて、寒さに耐える。
寒いくせに妙な比喩だが、熱した鉄板の上に立っているようだ。足の裏の接地面が急速に冷やされ、血管が押し広げられる。足がウッと熱をもって内側から膨らんでくる。馬鹿にされた人の顔が赤く怒張するアニメーションを見たことがある。今のぼくの足にも同じことが起きている。
たまらず床から足を離す、そうすると少しはマシになる。足を浮かせて座る姿勢はしかし安定しない。ダンゴムシさながら背中を丸めて爪先で重心をとって座る。伊藤潤二さんの世界なら、そのままうずまきになっていた。確かにこれは寒さというより痛みだ、冷気のプレス機で足をぎゅうぎゅう圧搾されているようだ。
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KARAOKEがKAPAOKEになる。
左の建物もかわいい
それでも、モンゴルは面白い国である。面積は日本の四倍で、人口は350万人。国連加盟国の中で人口密度は最低らしい。日本企業が進出している。スーパーでコアラのマーチが売られている。トヨタ、吉野家、キヤノン、コニカミノルタ。東横インを見つけた時は驚いた。英語より日本語の話者が多いくらいだそうである。
モンゴルはロシアと中国しか国境を接していない内陸国だ。凄い立地である。街並みにもロシアと中国の影響が混じっている。ご飯も美味しい。下の写真はボーズというモンゴル風小籠包とかぼちゃスープだ。お茶はアーティチョーク(キク科)の花で抽出したもので、上品な甘みと香りが絶品だった。
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雨はあまり降らない。首都ウランバートルの年間降雨量は300mm程度で、じつは二週間前にいたナミビアと(気温は60度違うけど)ほぼ同じだ。気候区分では乾燥帯(モンゴルの一部は冷帯)にあたる。低い草しか生えないので、草食動物の牧畜が営まれる。だから、どちらの国でも肉は貴重なタンパク源だ。南半球と北半球の17,000km離れた国の暮らしのありようが似る地球の論理に驚嘆する。
下の写真の雪景色は、夏になると、見渡す限りの草原に変わるそうだ。モンゴル人は自然を尊敬していて、登る途中に名前を呼んではいけない山もあるという。尊敬の表し方が「呼ばない」というのは不思議であり納得もできる。聖なるものは、探さないほど感じられる気もするのだ。
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2/8(土) 曇り
入賞した第11回漂流紀行文学賞の表彰式。場所は高知県黒潮町。オンライン参加はぼくだけで、「モンゴルにいます」と言ったら、会場で「そりゃ来れんわ」と地元の人に言われていたそうである。自分の作品を前向きに受け入れてくれる空間があったのは、嬉しいことだった。がんばって、よい文章を書こうと思った。
2/9(日) 晴れ
今週は忙しく、本も読めなかった。まったく! ため息をついても仕方ないが、読めない・書けない日々が続くと「俺は何をやっているのか」という不満が胸の内に膨らんでくる。
これは炎症のメカニズムによく似ている。外部刺激(膨大な仕事)への防御反応で免疫細胞(時間や労力)が血管から流出し、血管壁が薄くなって患部(心)が赤く腫れて存在を主張し始めるのだ。炎症は異常ではなく、身体に生来そなわった外部刺激に対する防御反応である。そう思えば、負の感情も心が取ってくれている防御反応なのかもしれない。楽観的すぎるかな?
今日は散歩でもしようか。息を吸ったら、またあした。みなさんもよい日曜日をお過ごしくださいね。
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(おわり)
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