モチベーションから考える目標設定とキャリブレーション
目標設定は、自分やチームのパフォーマンスを引き出す強力なツールです。
一方、マネジメント目線では、筋の良い目標設定、期中の 1on1 等におけるキャリブレーションを通し、どのようにマネジメント配下のメンバーのパフォーマンスを最大化するか?に苦心されていると思います。
「期中の目標キャリブレーション」にフォーカスして、日々の考えを書いてみようと思います。
日々の皆様の 1on1 等でご活用いただければ幸いです。
「この目標設定だとやることがなくなってしまいそうです」
例えば「xx までに、xx のプロジェクトの xx フェーズを完了させる」の目標設定があったときに、外部要因等で「xx フェーズ」なるものに、その人自身が関与する必要がなくなった場合、です。
不確実性が高いプロジェクトではよくあります。この場合は可能な限り「この目標設定のモチベーションに立ち返る」ことを意識します。
例えば「xx のプロジェクトの xx フェーズを完了させる」について、その人にとってのチャレンジが「プロジェクト全体の完遂確度をあげる」なのであれば、先回りして次のフェーズの下準備まで回る、が次のアクションとして考えられます。
「xx フェーズ完了に求められる、yy というスキル面において貢献する・チャレンジする」が当初のモチベーションであれば、そのプロジェクトに限らず、「yy というスキル」を活かせる・チャレンジできる別のミッションに切り替える選択肢があるでしょう。
不測の事態でも、モチベーション達成のための手は止めないガイドが重要です。
「もう達成できてしまいした」
例えば「xx を N件やる」「xx の数値を N まで向上させる」の場合、その数値が想定外に早期に達成される場合があります。
この場合、もちろん達成要因については振り返った上で、同じくモチベーションに立ち返るアプローチを取ります。
事業成果としての結果自体は、賞賛と振り返りをしつつ、それによって個人としてのレベルアップ、チャレンジが十分にできたのか?にフォーカスします。
元々考えていた個人としてのチャレンジがなかった場合、この目標設定では当初モチベーションとしていたチャレンジができなかった、ということになります。
確かに数値上は達成ではあるが、当初前提としていた動機は達成されていないのです。
当初想定のチャレンジ要素と、及びそこにチャレンジできていないことを当人が認識しているかが非常に重要です。
期中の目標進捗が良い場合こそ、慎重なキャリブレーション力がマネージャーには求められるでしょう。
「別の xx をやっていたので目標が進んでいません」
例えば、「緊急性高い案件があり…」「トラブル発生につき…」という場合です。
そもそもマネージャー目線では喫緊ではないことに時間を取られていて、本来の目標が進んでいなかった場合には、組織からの期待値を正しくメンバーに落とせていないことになりますので、これはこれで対処が必要です。
そうではなく、事業上も緊急性が高い案件対応をしていたために目標進捗しなかった場合です。
その際もまた同様にモチベーションに立ち返ります。
往々にして、緊急性が高い案件やトラブル案件は、学びの宝庫です。
当初の目標設定においてモチベーションとしていた観点と、今回意図せず工数を割いた案件から得られた経験を、うまく結びつけるキャリブレーションが良いです。
緊急性が高い事象は、計画外のことですので、基本的にはこちらの準備が整わない状態で取り組まなければなれません。つまり対応力の自力が問われます。
ある意味「言い訳無用」の環境において、どうにか出来たこと、もっと出来たことを振り返ることはとても重要です。
どうすればもっとよくできたか、だけでなく、他の人が同じ状況に陥った際に、より良くできるための組織としての前準備、(トラブル系であれば)そもそも同じ問題を未来永劫引き起こさない根本解決、など、緊急案件こそ精緻な振り返りのよちがあります。
緊急性が高い案件に取り組んでいただけた感謝を伝えると共に、それが本人の経験としても無駄になっていない、むしろプラスになっている認識を作れると理想的です。
「来週までは何をすれば良いでしょうか?」
週次 1on1 等がうまく機能している場合、毎週の ToDo とその進捗確認のサイクルがうまく回っているものと思います。
一方、ToDo を 1on1 内で決定しすぎてしまうと、常にマネージャー承認が得られた ToDo を回しているかの状態になっている可能性があります。
その場合、マネージャーと決めた ToDo という前提があるので、「これをやっておけば目標進捗上間違いない」というマインドに傾いてしまっている場合があります。
一定期間を経て蓋を開けてみて、目標に対する結果が芳しくない場合、マネージャーと握って進めたにも関わらず結果が出ない、という不健全な状況になってしまいます。
マネージャーの目線では、週次のフィードバックで ToDo レベルまで決めにいく際には、どうしても被フィードバック者に近い目線に立って考えるので、達成したい未来像からのバックキャスト目線が弱くなってしまいます。
それ自体は、週次という短期目線では正しい判断ですが、目標の最終ゴール、つまり背景のモチベーションから考えた時に最適でない可能性があります。
そのため、一見うまくマネジメントが回っているような場合でも、「それは目標背景にあるモチベーションの達成にも寄与できているのか?」という視点での促し、問いを、定期的に立てていくキャリブレーションが必要に思います。
「目標が難しすぎます」
設定目標が飛躍的すぎた場合は、どうやっても困難を打破できずスタックしてしまう場合もあると思います。
その際、安易な介入・巻き取り、またはリアサインなどは本人のデモチを招きますし、「失敗」の印象が強まるため、マネージャーとして判断しづらいことがあると思います(もちろん事業上の優先度が極めて高いイシューの場合は、状況説明の上でその判断も必要です)。
とはいえ、明らかに数段階難易度が高いチャレンジを継続することも疲弊を招くため、危険です。
その場合は、「困難は分割せよ」です。
打開困難な課題に直面した際に、どう対処するかの方法論、思考法を理解することは重要です。
いかにして困難な課題を分割するのか、その上で、どこに注目し、どこはやらないと決めるのか、
などの思考の整理を促します。
目標の不確実性が高く、定量的に分割不能なケースもあると思います。
例えば、
xxx ポジションをN人採用
という目標設定があったとして、採用ファネルが不安定だった場合、ロジカルな要素分解が難しいです。
その場合、行動ベースではありますが、Key Action として、考えうる実行可能な打ち手を検討し、その実施量で達成率を考えることも良い手段です。
合理的な定量分割にこだわりすぎてスタックするよりは、少なくとも実行可能なアクションを決め、実際にアクションする方が事態は進展します。
例
Key Action:未利用の xx という媒体を動かす, スカウトを N件送る, イベント露出を N件する, etc.
… という、困難な状況をどう整理するのか?自体にも価値があります。
整理した上でどう優先度をつけるのか、その上でどこまでの実行を計画するのか?など、得てして分割プロセスには多くの学びの余地があります。
目標は不確実な未来の先行指標
目標設定、およびその達成自体は、不確実な未来の達成確度を上げるための先行指標である、と捉えるのが良いと思います。
概して目標達成したからといって、その背景のモチベーションの達成が確約されるものではありません。
目標設定は、将来の不確実で抽象的な要素を部分的に具体化したものです。そのため、実環境の様々な外因影響を受けます。色々な「もしかしたらこの目標設定になっていたかもしれない世界線」がありえます。
目標達成自体は意義深いですが、背景にある実現したい姿やモチベーション(動機)の達成にどれだけ近づいたか?を常にキャリブレーションする必要があります。
期中の目標進行に困った場合は、この構図に立ち返ると、より良い目標達成のためのキャリブレーションができると思います。
終わりに
① ちょうどこちらの記事を読み、普段意識している「目標背景のモチベーション思考」という点と通じるところがあるなと思い、書きました。合わせてご参照ください。
② 今回は人事評価とは切り離して、自己成長のための目標達成とマネジメントについて書いたものとなります。
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