忘れてしまった幸せを マンガ『うめともものふつうの暮らし』を読んで
カツカレーという食べ物を知らない人はいないだろう。食堂に行けばたいていは存在しているし、人生において頻繁に目撃しているメニューだと思う。
では、自分にとってスペシャルな1品か、というとそうではない。嫌いというわけではないが、大好きというわけでもなく。ちょっと贅沢したい時に食べるメニュー、くらいの印象だった。だいたいの人はそうだろう。カツカレーを食べて感激して涙を流す人はいないはずだ。
しかし、である。よく考えてほしい。「カツカレー」って、超絶贅沢なメニューではないだろうか。
「とんかつ」単体でも贅沢な食べ物だ。有名な『美味しんぼ』のセリフが象徴するように、日常の贅沢品として扱われる。
チェーン店の台頭で、手頃な価格でも食べられる機会も増えたが、やはりとんかつを食べたくなるのは自分のご褒美として食事するとき。行列のできる名店にいって、それなりに贅沢をして食べたいメニューだ。
そして、そこに「カレーライス」が加わるのである。子供から大人まで、みんな大好き、もはや日本の国民食といってもよい、カレー。大人になってくると、そんなに高価なものではないので、忘れてしまうが、間違いなくカレーライスは家庭で食べられるご馳走だった。
この2つをかけ合わせた、カツカレー。そんな食べ物を目にした時には、これくらいのリアクションをしても良いのではないだろうか。
今日伝えたいのは、カツカレーという食品の希少性ではなく。カツカレーのように、普段は見落としていた日常の幸せを教えてくれる、すてきなマンガを紹介したいのだ。
ふつうのくらし
今日紹介したいマンガは、『うめともものふつうの暮らし』というマンガ。
マンガの内容としては、タイトル通りのマンガである。小さな猫耳の女の子、うめとももの、二人のふつうの暮らしを描いているだけ。いわゆる、「日常モノ」である。
このイラストから分かる通り、ファンタジーな世界ではなく、現実世界を舞台にしたマンガ。ふつうの人間も存在する。
その中で明らかにデフォルメされまくった2頭身のうめとももが暮らしていくのだが、この2人に対しては人々はふつうの子供と同じように、何事もなく接している。そういった意味では少しファンタジーな世界なのかもしれない。
ただ、2頭身のケモミミ少女がいることが、今作品の重要なポイントではない。だってこの作品が描くのは「日常」だから。
うめとももの2人は、ごくふつうに暮らしている。仕事(焼きいも売りと裁縫)をし、買い物を行い、ご飯を食べる。夏が来たら夏服に着替え、夏祭りにでかる。冬にはクリスマスやお正月など、冬のイベントを2人なりに楽しんでいく。
そんな何気ないくらしが描かれる。かわいいし、癒やされる。それはもうハチャメチャに。仕事で疲れた時に読みたいマンガランキングの上位だ。
忘れていた幸せを
じゃあ、かわいさや癒やしだけがこのマンガの魅力かというと、そうではない。個人的に、このマンガの一番すごいところは、忘れていた日常の幸せを再発見させてくれることだと思っている。
冒頭のカツカレーなんかもそうだ。あんなに豪華な食べ物なんて、そうそうないはずなのに、我々はスルーしている。
貰い物のクッキーの缶とか、たしかに子どものころはすごく高級感を感じて、ワクワクしていた。それをただのお菓子と受け流すようになったのはいつからだろうか。
2人の生活は、なんでもない日常のはずなのに、楽しさでいっぱいだ。高級マンションのチラシを見て、そこに住んでいる妄想をして楽しんだり。ドーナッツを買って食べる際も、そのために事前にアイスティーを仕込んだりして、楽しむための万全の準備をしている。
このマンガを、日々の生活を全力で楽しみ、幸せを感じているうめとももの2人を見ていると。自分ももっと人生を楽しまないとなと思う。もっと楽しみはいっぱいあるはずなのだ。それをただの日常と割り切って、受け流すか、自分なりの楽しみを見つけ、幸せを感じるか。
うめとももの2人を「子供だね」と笑う人もいるだろう。その通り、2人は子供なのだ。でもだからこそ、日々の小さなことにも純粋に、新鮮に驚きを感じ、幸せを得ている。
大人になって、そうした純粋な幸せを忘れてしまっていた。大人ぶって嘲笑するよりも、うめともものような純粋さを持って生きていきたいと自分は思う。
こんなにも、世の中には幸せになれるきっかけがたくさんある。この2人の日常は、忘れてしまっていたそんなことを教えてくれる。だから、自分はこのマンガが好きなのだ。
もっと早く読んでおくべきだった賞
このマンガの魅力をもう1つ、別の言い方で表現をすると、幸せのおすそ分けをもらえるマンガだと思う。うめとももの2人の日常の幸せから自分も幸せになる。
そして、2人みたい何気ない日常の幸せを見つけようと、毎日が楽しくなっていく。そんなマンガだ。ただの日常マンガとジャンル分けしてしまうのはもったいない。
このマンガを知ったのは、下記の記事から。
ここでも書かれているが、まさに「もっと早く読んでおくべきだった賞」がふさわしい。
日々の生活が退屈に感じてしまっている人には、特にオススメです。自分の周りはこんなにも幸せになるきっかけがあるんだなと、気づかせてくれるマンガです。
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