見出し画像

三者三様

死に憧れる少女は 心を殺す悪魔と出逢った
オルゴールを鳴らすと悪魔が囁く 今宵はいかがいたしましょう
金属が奏でる音色と共に奪われていく命たち
少女は嗤いながら血の涙を流す
最後に捧げられるのは無垢で残酷な少女の命
悪魔に囚われた少女の魂は透明なまま深い闇の中で眠る
 
生に憧れる少年は 命を作る天使と出逢った
オルガンを搔くと天使が微笑む 今宵はいかがいたしましょう
鍵盤が揺らす空気と共に息吹く命たち
少年は笑いながら自分を削っていく
最後に生まれたのは柔らかく小さな新しい家族
天使に囚われた少年の魂は鮮やかなまま白い光の中で眠る

少女が出逢ったのが悪魔でなく少年なら
少年が出逢ったのが天使でなく少女なら
血の涙を流すことも 自分を削ることも なかったのでしょう
2人の魂は囚われることなく自由だったのでしょう
少女が出逢ったのが悪魔でなく少年なら
少年が出逢ったのが天使でなく少女なら
奪われた命も 作られた命も なかったのでしょう
2人の魂は違う形で命に触れることができたのでしょう
 
永遠に憧れる老人は 無限の時間を持つ死神と出逢った
地面を打つステッキに合わせ死神が問う
今宵はいかがいたしましょう
ゆっくりとしたリズムが命を眠りへと誘(いざな)う
老人はわらうこともなく鼓動に耳を傾ける
最後に眠るのは利己的で欲深い老人たち
死神に憑りつかれた魂は醜いまま永遠の奈落を彷徨う
 
老人が無垢で残酷な少女のままならば
老人が息吹く命を願う少年のままならば
死神に出逢うことも永遠を彷徨うこともなかったのでしょう
彼らの魂は清らかなまま 違う永遠を手にしたのでしょう
 
天使と悪魔はそれぞれの命を抱えて
死神はヒトの醜さを知って 哂う

いいなと思ったら応援しよう!