I'm An Android
感情の塊を墜としていく
だんだん だんだん 空っぽになっていく
喜びも 哀しみも 戸惑いも 切なさも もうわからない
体という入れ物は 生命活動だけを残して機能を停止する
まるでアンドロイド
与えられた指示は寸分違わずこなすけれど
まるでアンドロイド
共感を強いられた感情はまるで理解ができない
多分僕はジャンク品 修理してくれる誰かが現れるまで
壊れたままで動き続ける
記憶の壁が高くなっていく
どんどん どんどん 手が届かなくなっていく
楽しかった思い出も 忘れられない初恋も もう見えない
頭という入れ物は 伝達の仕事だけを残してシグナルが走る
まるでアンドロイド
入力されたデータは狂いなく残るけど
まるでアンドロイド
記録のないシステムを前に処理落ちする
きっと僕はまだ出来損ない
あとどれほどのプログラムを覚えればいいのだろう
エンジニアの努力の結果 産まれたそれは動き出した
毎日書き換えられていくシステム 毎日追加されるプログラム
処理速度が追いつかなくなっては 増えていく基盤とメモリ
人間らしく
そういったエンジニアは 感情を与えたけれど
もっと精密に
そういったエンジニアは 感情を排除した
人間らしく
そういったエンジニアは 考えることを組込んだけれど
もっと速く
そういったエンジニアは 考えることを排除した
この社会が求めるよう変化させられてきたけれど
まるでアンドロイド
人間だったはずなのに 人間らしさがわからない
まるでアンドロイド
この利益優先の社会ではそのほうが楽なのだろう
僕は人間だった
感情もあったし 考えることもできた その筈だった
今はアンドロイド
誰かのプログラムで毎日を処理していく