RADWIMPS『新世界』レビュー。未知なる日常への扉はすぐそこに
RADWIMPS『新世界』レビュー。※この記事は2020.06.08にDIGLE MAGAZINEに掲載されたものです。
Writer:梶野有希 97年生まれ。ライブハウスとインディーズロックが大好きです。
“新世界”という言葉から人は何を想像するだろう。希望、救済、不安。様々だと思うが、多くの人に共通して言えることは新世界という言葉は変化の象徴であるということだ。
それは本曲も例外ではなく、これから訪れる転換期を「新世界」は描いている。ただRADWIMPSが描く新世界には、これからを生きる私たちの為の道標がハッキリと立っていた。
そもそも本曲はテレビ朝日系『ミュージックステーション』への出演依頼をきっかけ制作され、5月8日(金)に地上波で放送された作品。しかし既に放送前には、中国に住む人たちを励ますために制作された「Light The Light」、変化していく日常に隠れる愛しさを描いた「猫じゃらし」をリリースしていた。ましてや先日リリースされた新型コロナウイルスの収束を願う「ココロノナカ」は同番組にて披露するはずだった曲である。
暖かなエールや祈りが込められた既存曲を披露する選択肢もあった中、なぜRADWIMPSは少し先にある未来への批評を冷静な音で描いた「新世界」を選んだのか。
その理由は、最初の震えるような静かなブレスにある。これは彼らの覚悟の音だ。これから出会う未知なる情景をまっすぐ見つめていくという消えることのない深い決意を感じた。
<当たり前が戻ってきたとしてそれはもう赤の他人>、<綺麗な0を描いてさ 新しくしよう「今」>というリリックは、私たちが歩んできたこれまでの日常がもう存在しないことを示している。
通勤時間の必要性を問う人が増えたし、外に出ずとも欲しいものが手に入るオンラインショッピングの利便性に新たに気づいた人も多いだろう。アフターコロナの世界ではこれまでの「当たり前」が「古びた常識」へと容赦なく腐敗していくのだ。
本曲は、この先にある新しい世界を私たち自身で創造していかなければならないと強く訴えかけている。求められているのは1からではなく、0からの再構築だということを緊張感漂う音の中で繰り返し歌っている。
<君と描きたいのさ 揺れた線でいいから>。
「新世界」は真っ新な未来への入り口そのものだ。緊急事態宣言が解除され、街に活気が戻ってきているが、私たちは開放感の先に待つ真っ白な日々を迎える身支度をしなくてはならない。それぞれの想像力と創造性を抱きしめ、白紙の道へ一歩を踏み出す時がもうすぐそこまで来ているのだ。
新世界への扉を開けた時、広がる情景に戸惑うかもしれない。しかし、本曲は迷子の私たちがこれから歩むべき方角を照らしてくれる道標となり、前に進む勇気をくれるはずだ。
掲載元:DIGLE MAGAZINE
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