Rin音『swipe sheep』レビュー。確固たる個性と豊かなサウンドで彩る初作
※この記事は2020.06.18にDIGLE MAGAZINEに掲載されたものです。
トレードマークは「インターネット」と「睡眠」。Rin音の楽曲はSNSや眠りがテーマになることが多いが、『swipe sheep』というタイトルもまた、スマートフォンの操作「スワイプ」と眠る時に羊(Sheep)を数える行為が由来している。
タイトルの通り、Rin音の根幹が強く反映された本作は、緩やかなフロウとネット世代ならではの現代的なリリックという、これまで提示し続けてきた個性が欠けることなく集約されており、彼の輪郭がより顕著になった初アルバムだ。
フィーチャリングゲストだけではなく、若手トラックメイカーのShun MarunoやBASIのプロデュースを手がけるニューリーなど特筆すべき作曲家も多く揃っている。そのためファンタジーを体感できるようなポップサウンドがより濃く映し出されており、柔らかい雰囲気の中にしっかりとした音の厚みがある楽曲が目立つ。
本作は滑らかなフロウと響きのいいリリックに加え、表現力の豊かさというRin音が急成長を遂げている理由の証明になり得る作品だと感じた。
例えばアルコール度数に因んで「本当の自分はいま何%か?」と問う「%BOY」は、缶チューハイを開ける音や考え込むような泡の音など、遊び心あるサウンドと漂う浮遊感でほろ酔い気分にさせてくれる。またドレスコーズなどを手がけるmaeshima soshiとのタイトル曲「swipe sheep」は、彷徨うようなバックメロディーとキーボードの高音で正に眠りにつくような世界感を構築している。
そして器用な表現力を最も感じるのは「earth meal」だ。本曲のテーマは宇宙移住で、宇宙船に乗り遅れた男女が未だ地球で生きているというSFチックなストーリー。全体的な近未来感はシンセサイザー、登場人物のポップなマインドは軽やかなピアノ、そしてフィーチャリングに招いたシンガーソングライターasmiの可愛らしい歌声と自身の甘い歌声で男女の暖かい恋心を表現している。
滑らかなフロウとユニークな発想、そしてそれを上手く汲み取ったサウンドがあわさることで楽曲の世界観を丁寧に構築しているRin音。”新世代ラッパー”と名を馳せる理由を本作で証明した彼は、この先もコンテンポラリーで個性溢れる音楽を各所で響かせてくれることだろう。きっとそこにはカラフルな景色が広がっているはずだ。
Writer:梶野有希 97年生まれ。ライブハウスとインディーズロックが大好きです。
【Rin音】 福岡県宗像市出身、1998年生まれの新世代ラッパー、Rin音。配信限定でリリースされていたファーストEP『film drip』が2020.1.22(水)待望の全国流通!本作には、Rin音と並び新世代ラッパーとして注目のクボタカイ、空音をフィーチャーした“Summer Film’s”をはじめ、ボーナストラックとして“film drip”が追加。全7曲を収録。そしてRin音待望の新作「snow jam」が2020.2.19にリリース!プロデューサーにRhymeTubeを迎えた、自身初のウィンター・ソング。MVは昨年からラブコールを受けていた中江 啓太監督を迎え、ロード・ムービーかのような美しい映像作品に仕上がっている。
掲載元:DIGLE MAGAZINE
最新の音楽・映画情報を発信するプレイリスト&カルチャーWEBメディア。
👉 Link List
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?