第5のレシピ オペレーターに寄り添うツールWalkMe
「新時代コンタクトセンター」のレシピには新たなテクノロジーが必要です。料理の舞台にも「フードプロセッサー」や「電子レンジ」はもとより、調理に便利な道具が次々と登場してきました。料理の歴史は道具とともに発展してきたといっても過言ではありません。コンタクトセンターの現場でもオペレーターの「こんなものがあると良かったのに!」に応えるツールが開発されています。今回のレシピは「デジタル・アダプション・プラットフォーム」WalkMeを紹介します。耳慣れない単語ですが、クラウド上にあるソフト、例えばSalesforceなどを使うとき、「誰に相談しなくても、確実に操作ができ、かつミスなくデータが入力できる」道具があったら素晴らしいと思いませんか?
6月17日に~アフターコロナへの共同提言「新時代コンタクトセンター」あり方とはじめ方~でご一緒したWalkMe株式会社の道下社長にこの便利な道具について語っていただきます。
(右:WalkMe株式会社 代表取締役社長 道下 和良 氏
左:株式会社デジタルシフトウェーブ パートナー 出水 啓一朗)
出水:
「デジタル・アダプション・プラットフォーム」は耳慣れない言葉ですので、まずはじめに会社とソリューションに関してご紹介ください。
WalkMe 道下氏:
私どもWalkMeは2011年にイスラエルで創業した会社で、以降一貫してこの「デジタル・アダプション・プラットフォーム」を提供して参っています。世界で2,000社を超えるお客様、Fortune 500企業の35%を超えるお客様がWalkMeをご利用下さっています。日本は昨年2019年6月にオフィスを開設し、本格的な事業展開を開始しました。
出水:
私と道下さんの出会いは、私のSPCC(スカパー・カスタマーリレーションズ)時代の「Salesforce Service Cloud」導入時にセールスフォース・ドットコム社の常務執行役員、エグゼクティブ・スポンサーとしてスマートコンタクトセンター構想に参画頂いたことがきっかけですが、そもそもなぜご転職されたのでしょうか?(笑)
WalkMe 道下氏:
「デジタル・アダプション・プラットフォーム」という言葉はおっしゃる通り耳慣れない言葉だと思いますが、実はセールスフォース社内では一般に流通している言葉で、日本語で「定着化」と呼ばれ、お客様との間での共通言語にもなっていました。
Service Cloudも当然ですが、SaaSのようなクラウドアプリケーションをご導入頂いた際に最も大切なものは「カスタマー・サクセス」で、その礎になるのが、この「定着化」がどれだけ進んでいるかという考えだったのです。よって「定着化」で悩まれてるお客様は多くいらっしゃいましたし、セールスフォースの社員として「定着化」のために汗を流していました。
WalkMeのお話しを頂いた際にホームページにアクセスをしてみて最初に目に飛び込んできた言葉がこの「デジタル・アダプション・プラットフォーム」でした。「定着化」のためのソリューションを人的サービスではなく、プラットフォームとして提供している会社があるという事実を知り驚きました。ここならお世話になっているセールスフォースのお客様にも新しい形でお役に立てるのではないかと思い、転職に至った次第です。
出水:
そういった経緯だったんですね。では、WalkMeは具体的にどんなことが出来るのでしょうか?コンタクトセンターでの利用を想定して教えてください。
WalkMe 道下氏:
WalkMeはSalesforceのようなアプリケーション画面の上に表示される「カーナビ」のようなものとご想像ください。カーナビは表示された地図上に目的地までのルートをリアルタイムに案内して行きますが、WalkMeもまったく同じです。
下の写真にある通り、アプリケーション画面上にガイダンスと呼ばれる操作案内を業務の流れに沿って表示し、広い画面上のどこをクリックするべきか、どこの入力項目にデータを入力すべきかをリアルタイムに案内します。またBotが実施したい業務に沿って質問をしますので、その通りに一問一答で答えれば、面倒な画面遷移や入力項目を探すのに迷うことなくデータ入力を完了することができます。
コンタクトセンターではオペレーターの方が入社されると、システム操作を覚えるために一定期間トレーニングを受けたり、マニュアルを読み込んで操作を覚えたり、OJTを受けたりします。WalkMeはそうしたことを不要にし、期間を短縮することができます。
オペレーターの方は迷いなく画面操作できるのでお客様対応に専念することができますし、センター側はトレーニング実施やマニュアルの作成・改訂の手間を無くしつつオペレーターの方の早期戦力化が可能となります。
またWalkMeは単なる画面操作の案内だけではなく、業務ルールに沿ってデータの入力制御ができるので、漏れなく正しいデータインプットを促進しつつオペレーターの方へのコーチングなども自動化できます。
例えば米国のT-MobileではSalesforce Service Cloudが5,000名を超えるオペレーターが在籍するコンタクトセンターや、3,000を超える全米の店舗で利用されていますが、その定着化にWalkMeが使われています。毎月入社されるコンタクトセンターのオペレーターや、物理的距離があることから集合研修ができない店舗スタッフの早期戦力化に貢献しています。
出水:
私が道下さんからWalkMeの話を聞いたときに、まさにACW(アフター・コール・ワーク)の生産性を上げるのに役に立つのではないかと思いました。
それでは最後に、先日6月17日の~アフターコロナへの共同提言「新時代コンタクトセンター」あり方とはじめ方~でもご一緒しましたが、アフターコロナの「新時代コンタクトセンター」においてWalkMeはどのような役割を担うでしょうか?
WalkMe 道下氏:
出水さんにお示し頂いた「あり方」のビジョンのなかでも、特に在宅型も見据えた分散型のコンタクトセンター実現の際にお役に立てる機会が多くなるのではないかと考えています。
新型コロナウィルスの感染防止や事業継続の観点から、在宅や地域拠点などにオペレーターの皆さんの配置が分散されることになると思います。当然、分散すればするほど集合型のトレーニングはできませんし、Face to faceのOJTやコーチングなども出来なくなってきます。先ほどの全米3,000店舗のT-Mobileの事例のように、そのようなリモートの環境での「定着化」にWalkMeは力を発揮します。
より根源的には、コロナ下のリモートの環境という、ある意味オペレーターの皆さんも孤独や不安を感じる環境において、システム操作やそれを利用した業務の習熟のプレッシャーという不安やストレスを取り除き、サポートすることで、よりいきいきと本来やるべきお客様対応へと力を発揮頂ければと思います。
WalkMeが目指すところは、テクノロジーの側から人間に寄り添ってゆき、その人が本来持っている価値を最大化するお手伝いができればと考えています。
出水:
人が何をしなくてもロボットがすべてを片付けてくれる時代はまだやってきそうにありません。しかし、人をサポートするデジタルシフトはここまで来ていると実感できるお話でした。「デジタル化はそれ自体が目的ではなく、無視できない手段」と言う言葉をWalkMeのテクノロジーは体現しています。
次回のレシピはコンタクトセンターには欠かせない道具、PBXの登場です。日本の大規模センターで最も使われているAVAYAの技術責任者、沼田幸喜さんにPBXの最前線を伺います。
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出水 啓一朗 (Keiichiro Demizu)
1974年信越放送入社。2003年WOWOW常務取締役、2006年スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT)執行役員常務、2009年同社取締役執行役員専務兼マーケティング本部長を経て、2011年スカパー・カスタマーリレーションズ代表取締役社長に就任。2019年6月同社退任。
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