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エンジニアの"学び方"を学ぶ ─ デジタルキューブ 片岡さんの技術習得術

デジタルキューブグループ 広報のタカバシです。

皆さんは、日々の技術習得をどのように行っていますか? どんな工夫をされているでしょうか?

今回は、隙間時間を有効活用して資格取得を重ねつつ、フルスタックエンジニアを目指して日々学習を重ねる片岡さんに、その方法や工夫について訊いてみました。

元々は2024年に読んで良かった技術書を伺うインタビューの予定だったのですが、少し方向性が変わりました。「正解はない」からこそ見えてくる、新しい学びの形をご紹介します。


── 今回は、この1年間で役に立った技術書の紹介をお願いしようと思っていたのですが、最近は違った形で学習されているとか?

そうなんです。最近は本をあまり読んでいなくて、サイトやサービスを使って勉強することが多いんです。特に Web 開発の分野は日々進化が早いので、常にアップデートされる情報源を使うようにしています。

── 具体的にはどんなサイトやサービスを活用されているんでしょうか?

大きく分けて2つあって、1つ目は『web.dev』というサイト。もう1つは『MDN Web Docs』です。これらのサイトでは、HTML や CSS、JavaScript といったWeb 開発に必要な技術を体系的に学ぶことができます。

特に良いのは、コードをコピーして使えるという点です。技術書だと手で書き写す必要があるんですが、オンラインリソースだとコピー&ペーストができる。これが実践的な学習では大きな利点になります。

いずれのサイトも日本語版があります。

それから、これらのサイトはずっとアップデートされ続けているんですね。技術書の場合、一度出版されるとその内容は固定されてしまいますが、オンラインリソースは新しい情報が追加されたり、古い情報が更新されたりするので、常に最新の知識を得ることができます。

あと、『freeCodeCamp』というプラットフォームも活用しています。このサイトは体系的なカリキュラムがあって、HTML、CSS、JavaScript だけでなく、データベースやデータサイエンスまで、すごく色々な分野を学べるんです。特に良いのは、実際にコードを書きながら学べる「ハンズオン形式」になっているところです。

ただ、私の場合は途中で「アプリを作りながら学びたいな」と思って、違う方向に進んでいきましたが、基礎をしっかり学ぶには本当に良いリソースだと思います。それに、コミュニティが作り上げているサイトなので、記事や YouTube チャンネルなども充実していて、学習の幅を広げやすいんです。

さらに TypeScript に関して言うと、『サバイバルTypeScript』という日本語のサイトをよく見ています。このサイトは、JavaScript の歴史から説き起こして、なぜ TypeScript が必要になったのかという背景まで、深く理解することができるんです。

技術の歴史を知るというのは、私にとってとても大切なことです。言語やフレームワークって、基本的に何かの課題を解決するために生まれてきているので、その背景を理解することで、より深い知識が得られると思うんです。このサイトは、そういった意味でも非常に参考になりますね。一つ一つのトピックがそれほど長くないので、隙間時間を使って少しずつ読み進めることができます。

── 学習リソースの選び方について、何か基準はありますか?

はい。一番重視しているのは、無料でアクセスできることと、ウェブサイト上で見られることですね。それから、その技術の公式ドキュメントが充実しているかどうかも重要な基準になります。

公式ドキュメントはその技術を作っている人たちが出している情報なので、それ以上のものは正直ないと思うんですよね。なので、ドキュメントが充実しているかどうかで、その技術を使うかどうかの判断基準にもなったりします。
── 技術の全体像を把握するのに役立つリソースはありますか?

私がよく使うのは『roadmap.sh』というサイトです。これは、フルスタックエンジニアになるために何を勉強すればいいのか調べていた時に出会いました。GitHub でスターの数を調べられるサイトがあるんですが、世界で6番目くらいにスター数が多いリポジトリでした。ちなみに『freeCodeCamp』の教材はオープンソースになっていて、GitHub のスター数が一番多いです。

このサイトの特徴は、職種や言語など、特定のニーズに応じたロードマップを提供してくれることです。例えば、フロントエンドエンジニアになりたい場合、どんな技術をどういう順序で学んでいけばいいのか、具体的な道筋を示してくれます。自分が詳しくない分野で、最初に何を勉強していけばいいのかを考える時によく参照していますね。

例えば AI エンジニアの場合のロードマップ

あと、私は動画で学ぶのが好きなので、特に『Udemy』をよく使っています。動画学習の良いところは、講師が実際にコードを書いているところを見られることですね。コードを書く時は動画を止めながら一緒に書いていって、エラーが出たら戻って確認する、というように実践的に学べます。

講座を選ぶ時は、まず評価と受講生数を確認します。評価が高くて受講生数が多ければ、ある程度信頼できると考えています。それから、最初の2、3コマを実際に受けてみて、講師の教え方が自分に合うかどうかを確認します。合わないと感じたら、別の講座を探すようにしています。

── 動画講座を選ぶ際の具体的なポイントはありますか?

私が重視しているのは、実際にアプリケーションを作るような実践的な内容があるかどうかですね。理論も大切ですが、何かを作りながら学べる方が理解が深まります。

それから、講座の長さも見ていて、実は長い方を選ぶことが多いんです。短いものより長いものの方が、様々な内容を網羅的にカバーできていることが多いですから。例えば React だけでも70時間くらいの講座があったりしますが、その分しっかりと基礎から応用まで学べます。

── 英語の動画講座も活用されているそうですが、何か工夫されていることはありますか?

はい、私は基本的に英語の講座を2倍速で見ています。字幕も英語を使うようにしていて、聞き取りづらい場合は字幕で補完するようにしています。特にインド英語など、なまりの強い講師の場合は 1.75 倍速に落として、より丁寧に聞くようにしています。

実は YouTube も含めて、ほとんどの動画を2倍速で見ているんですよ。ただし映画などコンテンツは通常速度で見ます。純粋な学習目的の場合は、効率を重視して2倍速を活用しています。

── 他に活用している技術やサービスはありますか?

特にプログラミング学習では『Claude』をよく使っています。例えば、ドキュメントの説明がよく分からない時に、Claude に「これについて分かりやすく説明して」と聞くと、理解しやすい形で説明してくれるんです。

コードを書く時は『Cursor』という AI ツールも活用していて、これが本当に便利です。予測変換の精度が高くて、特にAIを前提に作られているので使い勝手がいいんですよ。

ただし、AI の回答も完全に信頼するのではなく、他の情報源と照らし合わせて確認するようにしています。間違った情報を出すこともありますから、複数のソースで確認する習慣は大切にしていますね。

── オンライン上の情報の信頼性については、どのように判断されていますか?

ネットの情報は全部そうなんですが、一回ちょっと疑うという気持ちがものすごく大事だと思います。私の場合、いろんなソースに当たるようにしていて、何か調べものをする時は2、3個は違うサイトも見るようにしています。
特に『roadmap.sh』のような、GitHub でスター数の多いリポジトリは、多くのエンジニアが価値を認めているという証になります。ただし、それでも鵜呑みにはせず、他の情報源と突き合わせながら確認するようにしていますね。

── 学んだ知識の整理について、何か工夫されていることはありますか?

ブラウザのブックマークを活用していて、例えば AWS なら AWS のフォルダを作って、その中にさらに細かくフォルダを分けて整理しています。教材用のスペースと、実際の開発でよく使うツールやライブラリのスペースを分けて管理していますね。
気になったサイトは一旦適当なフォルダに入れておいて、あとで見返した時に「これは使える」と思ったものを、ちゃんとカテゴリ分けして整理するような形です。

── 学習を続けていく中で、計画通りに進まないこともあると思います。例えば途中で違うことが気になって脇道にそれたり。

そういうことは本当によくありますね(笑)。勉強している時に「これってどうなんだろう」と気になることがどんどん出てきて、そっちを調べ始めちゃうんです。

ただ、個人的には勉強中であればそれも良いことだと思っています。開発の世界って、正解というものがないんですよね。ケースバイケースで、何がベストかは本当にいろんな要素が複雑に絡み合っている。だからこそ、いろんなことを知っておくことが大事だと考えていて、引き出しを増やすという意味で、とても価値があると思います。例えば、ある課題に直面した時に「あ、これ前に似たようなことを調べたな」と思い出せることもあります。

── 最後に、これから技術習得を始める方にアドバイスをお願いします。

日本語でやることを前提にするなら、まずは『Udemy』の動画学習がおすすめです。英語の講座でも日本語字幕を使えば十分理解できますし、実際にコードを書きながら学べるので、とても実践的です。

動画があまり好きじゃない方は、『MDN Web Docs』のようなテキストベースの教材から始めるのもいいですね。ただし、これは本当に個人の好みの問題だと思います。

大切なのは、「正解はこれ」と決めつけないこと。いろんな学習方法を試してみて、自分に合ったものを見つけるのがいいんじゃないかと思います。そして、分からないことがあれば、AI も活用しながら、どんどん調べていく。その過程で得られる知識の一つ一つが、必ず何かの形で役立つときが来ると思います。


片岡さんの語る学習方法を通じて、現代の技術習得のコツを知ることができました。従来の技術書中心の学習から、オンラインリソースや AI ツールまで、多様な選択肢を柔軟に組み合わせることで、より効率的で実践的な学習が可能になっています。特に印象的だったのは、『roadmap.sh』で全体像を把握し、『Udemy』で実践的なスキルを磨き、AI ツールで理解を深めるという学習アプローチです。

さらに「脇道にそれる」ことを恐れず、興味の赴くままに技術を探究する。そんな姿勢が、結果として豊かな知識の引き出しを作り、実践の場で活きてくるという考えが、片岡さんの言葉からも伝わってきました。

今回のインタビューを通じて、技術習得において「正解」というものは無さそうなこと、だからこそ求められる探究心の重要性を感じました。学習方法やツールは変わっても「好きこそものの上手なれ」、新しい技術への純粋な興味と探究心、それこそが持続的な成長の原動力となるのだと思いました。
ということで、学習を始めようと考えている方は、まずは自分の興味が少しでも向いたところから手をつけて、理解を深めてみるところから始めてはいかがでしょうか?

それでは、また。