ヴァンラーレ八戸 School Trip Day イベントレポート
どうも、株式会社デジタルキューブグループ、広報室のタカバシです。
株式会社ヘプタゴンは東北に根ざす企業として、地方の活性化やスポーツの発展、チーム・選手の活躍に微力ながら貢献したいと考えています。そこでヴァンラーレ八戸、ベガルタ仙台、STVV のスポンサーとして応援を続けているのですが、今回はサッカー J3リーグのヴァンラーレ八戸が 9月6日に開催した「School Trip Day」イベントに出展させていただきました。
「School Trip Day」は校外学習として、小中学生がヴァンラーレ八戸ホーム戦を観戦、協力企業や団体による職業体験やレクリエーション体験の場が設けられ、地域のこどもたちへ教育的価値を提供するものです。
ヘプタゴンは、地元の子どもたちに AI を身近に感じてもらいたいという願いから「AIインタビュー体験」というアプリを出展しました。「AIインタビュー体験」は、AI を使ってヴァンラーレ八戸の選手との会話を再現するもので、子どもたちは好きな選手に質問しながら、最新技術を気軽に体験してもらいました。
具体的には以下のような流れで動作します。
アプリの画面でインタビューしたい選手を選ぶ。
選手に音声で質問をする。
AI の選手が質問に答える。
裏側では以下のように選手の回答を生成して、動作していました。
ウェブサイトから選手のプロフィールデータを取得し、RAG(拡張検索生成:Retrieval-Augumented Generation)の取り込みに適した形式のデータに加工しました。
そのデータを ベクトルデータベースに保存し、RAG のデータソースとして使用します。
質問に対して、バックエンドで RAG が適切な選手のデータを選択し、それを基に回答を生成します。
生成された回答は AWS の音声合成機能を使って音声化され、フロントエンド側でその音声を再生します。
現場はかなり盛り上がって、約200名の子どもたちにインタビュー体験をしてもらいました。体験を終えた子どもたちに逆にインタビューしてみると…
「選手たちのことがいろいろとわかって楽しかった。」(小学生3年生・男子)
「AI を使っているのがすごい! 将来は AI についての仕事につきたいと思いました。今度、AI について調べてみようと思います。」(小学生6年生・男子)
といった感想を聞くことができました。
さて、今回はこのアプリの制作に携わったエンジニア・谷口さんにもお話を聞いてみました。
── 子どもたちに使ってもらうアプリ、ということで工夫した点はありますか?
ユーザーインターフェースも子どもたちが使いやすいように設計しました。選手の選択はスワイプ操作で簡単にできるようにして、質問は音声入力で行えるようにしました。AI の回答を音声で出力するようにしたのも、子ども向けの工夫の一つです。
また、生成AIが行う回答の設計においても、選手が自分自身について話しているような、親しみやすい口調になるようにしたのと、回答の長さを制限しました。具体的には、AI の回答を100文字以内に制限するよう設定しました。長すぎる回答だと子どもたちが飽きてしまったり、内容を理解しきれない可能性があるからです。
── その他に実装面で工夫したことはありますか?
主に2つあります。1つ目は、RAG を使用する際のデータ取得の精度です。RAG では、すべての選手のデータが同じデータソースに入っているため、質問したい選手とは別の選手の情報を答えてしまう問題がありました。これを解決するために、Amazon Bedrock の細かい機能を学び、実装することで、狙った選手のデータだけを取得できるようになりました。
2つ目は、プロンプトエンジニアリングの部分です。AI に選手になりきって回答させることが想定以上に難しかったです。単に「あなたはサッカー選手です」や「選手になりきって答えてください」といった指示では、AI が第三者視点で回答してしまうことがありました。試行錯誤の末、「主語を自分として回答してください」という指示を加えることで、選手本人として回答する AI を実現できました。
── 今回の経験で今後活かせそうなものはありますか?
いくつかの発展や応用の可能性を感じました。
まずは、社内タスクへの応用です。LLM(大規模言語モデル:Large Language Models)や RAG を使用した社内向けのツール開発に応用できると考えています。例えば、過去のチャットログを取り込んで回答を生成するシステムなど、社内の業務効率化や情報共有に役立つツールの開発が可能だと思います。
あとは、地域特化型 AI の展開にも興味が湧きました。今回のように、特定のローカルチームに特化した AI を比較的容易に作れることがわかりました。これを発展させて、様々な自治体や地域組織向けにカスタマイズした AI を開発できる可能性があります。例えば、各自治体の特徴や観光情報、地域の歴史などに詳しい AI ガイドは比較的リーズナブルに作れるんじゃないか、と思いました。
── 谷口さん、ありがとうございました!
最後にヴァンラーレ八戸の広報・ホームタウン主任の野辺地さんからもコメントをいただきました。
「今回、小学生を中心に様々な体験をするという中で、こどもたちには AI に触れていただきたいということでご相談させていただきました。タブレットにて選手にインタビューを実施するという内容となり、参加した生徒たちも大盛り上がりでした。体験した生徒の中から、AI に興味を持ち、将来はエンジニアになる子もいると思います。ご協力いただき、誠にありがとうございました。」
ヴァンラーレ八戸の「School Trip Day」で披露された「AIインタビュー体験」アプリは、地域のサッカーチームと AI 技術をつなぐ新しい試みでした。子どもたちが楽しみながら選手のことを知れるだけでなく、地域の話題と AI が意外と相性がいいことも分かりました。
谷口さんが言うように、このアプリのアイデアは他のことにも使えそうです。例えば、地域の歴史や文化について、例えば地域の偉人をモチーフにした AI に質問できるようにすれば、観光や教育、まちおこしなどにも役立つかもしれません。
また、このプロジェクトは最新技術を地域の人たちにどう伝えるかという課題にも一つの答えを示しています。難しそうな技術も、地域の人にとって身近な話題と結びつけることで、受け入れられやすくなるかもしれません。
これからも、こういった面白い試みが増えて、新しい技術と地域の暮らしがうまくマッチしていくことを期待したいですね。
それでは、また。