コロナ禍の受験に寄り添って。(2)
昨年度の私の学校は、他校より一足遅れて6月から分散登校が始まりました。一週間の分散登校後、通常の学校生活が開始されましたが、私たちの役目は、当然ながら生徒の感染予防の徹底でした。学校が補助金を使い非接触式体温センサーを校門から入ったところに設置し、全校生徒がその前を通過し校舎に入ります。クラス担任は朝礼で生徒が記入した健康調査票を毎日回収します。トイレ付近や教室の入り口にはアルコール消毒液を設置しました。私のクラスは幸い人数が多くなかったので、教卓と生徒の机を2m程度離して並べました。人数が多いクラスでは出来ないのですが、教室の広さは決まっているので仕方がありません。生徒にはマスクの徹底を呼びかけました。けれどマスクを忘れる生徒は皆無に近い状況でした。さらに、生徒には人との距離をとること、昼食は全員前を向いて食べることを呼びかけたのですが、ご想像の通り、生徒たちは休み時間はマスク越しながらも談笑し、昼食を無言で食べることは苦痛で、ついつい近くの友人と話してしまうのは、仕方ないことかな、思いながらも呼びかけは続けました。
また、高校3年生の多くが楽しみにしていた体育祭は、休校のため中止となり、校長・教頭から放送を通じて生徒たちに知らされました。毎年一生懸命取り組む高校3年生を見ていた私はどんな言葉をかけていいのかわからなかったのが正直なところです。
さて、高校3年生は受験という大問題が立ちふさがっています。例年であれば、4月に生徒個々に面談をし、本人の希望や将来への考えを聞き、7月の保護者も含めた面談に臨みます。だから5月にはクラスの生徒たちの進路希望はほぼ頭に入っている状態で、個々に声をかけながらアドバイスしていくのですが、この年は6月からのスタートでしたので、全員の進路希望が頭に入ったのは、7月の三者面談直前でした。このクラスはその前の年に授業には行っており、そのときの担任からある程度の情報が伝達されていたのですが、やはり、自分で生徒の話を聞かないと、進路に対する微妙な生徒の心の揺れはわかりません。
私が受け持ったクラスは、理系の標準クラスと呼ばれていて、もう一つ理系応用クラスというものがありますので、成績は今ひとつです。正直、四年制大学への進学が厳しい生徒もいます。どういうわけか、ここ何年かは理系標準クラスの担任を任されることが多くて、毎年進学指導に大いに頭を悩ませるのです。さらにこの年は共通テスト元年であり、コロナ禍の影響も十分に考えられ、志望動向が例年とは様変わりすることは十分に予想されました。生徒たちにはいくつかの心構えを話しました。
①受験は3月まである。最後まで諦めずに努力し続けること。結果はどうあろうと、努力したという事実は大きな財産となるはずだ。
②賢い大学選びをしよう。コロナ禍でオープンキャンパスが実施されない大学もあるが、情報を集め自分の将来の希望に、その大学が合うのか周囲と相談しよう。
③他者のアドバイスに耳を傾けよう。柔軟な心を持ち、「ここしかない」とか「ここしか受験しない」ではなく、学びの機会は多いので範囲を広げて受験校を選ぼう。アドバイスを聞かない性格の悪い者は受験に失敗しがちである。
④目標は全員が合格通知を手にすることである。つらいこともあるが互いに励まし合おう。
こうして、私と生徒たちの戦いは始まったのです。(続く)