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パーパス(企業の存在意義)を設定しCleanTechへ|スタートアップdigglueの挑戦

  • MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は知っているけれどパーパスは知らない

  • パーパスはなんのために設定するの?

という方も多いかもしれません。パーパスを設定する企業は近年増えてきましたが、一般的とまではいえません。

この記事は、ブロックチェーン事業をやってきたスタートアップ「株式会社digglue(ディグル)」がパーパスを設定することになった経緯と、パーパス設定を機に向き合おうとしている新しい事業への挑戦をご紹介します!

▶︎ この記事の形式:CEO原インタビュー(聞き手:マーケチーム🌿)

dig(発掘する) + glue(接着剤、つなぐもの) = digglue

📝社名「digglue(ディグル)」の由来

digglueの社名は、僕(代表取締役CEO原英之 @harahidey)と中谷さん(代表取締役COO中谷元 @h_nakata2)で社名をどうしようかという話をしていた時に、手元に「とんかつDJアゲ太郎」があって。とんかつDJアゲ太郎って、「とんかつも揚げて、DJも上げて、フロアも上げる」というギャグ漫画なんですけど。

その中で「ディグる」というシーンが出てきて。DJが「ディグる」っていうのは掘り出し物のレコードを探していく行動のことなんです。ちょうど、たくさんのレコードが並ぶ棚で、レコードのタイトルやジャケットを探っていく様子が、何かを掘り当てようとしているように見えるところから、きているそうです。

当時ブロックチェーンを軸として起業したいという思いがあって。ブロックチェーンって「マイニング(mining)=発掘/採掘」というキーワードがありますよね。

💡ブロックチェーンのマイニングとは?
ブロックチェーンは新しいブロックを作成するために、ネットワーク参加者がコンピュータによる計算行為をし続け、それが成功するとコインを得られるという仕組みがあり、これを「マイニング(採掘)」と呼んでいます。

▶︎ ブロックチェーンについてはdigglue運営サイトBaaS Info!!もご参照ください🫴 つまずかないブロックチェーン学習の始め方と学習手順 

発掘する、という語に僕たちは惹かれました。「お客様の埋もれているインサイトを発掘して、そして価値を提供する」という仕事をしていきたかったというところに繋がって、「掘る」というモチーフは自分達のやっていきたいことにとても近いと。

だから最初は「diggle」だったんです。でも「掘る」だけでいいんだっけ、という議論が起こりました。そうじゃない、「インサイトを掘り起こし、技術で知恵と情報を繋げていくことで、新しい価値をつくっていくんだ」

そこで、つなぐものとして、次のモチーフ「糊(のり) / 接着剤=glue」が出てきたんです。diggleとglueを組み合わせて、「digglue」にしました。

こうして、「digglue(ディグル)」が社名に、「価値を発掘し、経済圏をつくる(dig for value and create economy)」というのが最初のミッションになりました。

ブロックチェーンに感じた魅力と限界が、パーパス設定のきっかけに

📝ブロックチェーンを軸とした起業に至るまで

ーーもともとブロックチェーンが軸だった理由はなんですか?

前職に入る前から、僕自身は起業することを決めていました。前職に入社する時にも、「僕は将来起業したいので、いつかそのために退職します!それでもいいでしょうか」と正直に伝えた上で入社して、そして4年間勤めて退職したときに、有言実行でdigglueを起業しました。

その4年のあいだに、ソフトウェアの領域で、バイオとかIoTとかAIとか、さまざまなテクノロジーを見ました。その中で抜群に魅力を感じたのが、ブロックチェーンとの出会いでした。

ブロックチェーンは技術的なおもしろさがあります。世界を変えるかもしれないと思いました。今の呼び方でいえばWeb3.0の領域ですね。

2017年に、ブロックチェーンに興味を持って、イーサリアム(仮想通貨の一種)を自分で購入してみました。今だと25万円くらいするのですが、当時2,000円だったんです。ブロックチェーンバブルのど真ん中を体験したわけです。自分の資産も増えるわけですから、本当にびっくりです。と同時に、「すごいんだけれど何がすごいのか分からない」と、その仕組みや裏側の技術面に強烈に惹かれて、調べ始めました。

確かにこれはすごいと、そのときに思いました。当時、世界にGAFAがあるなかで、どう戦っていくのかというのをよく考えていました。GAFAという巨人がいる中で、AIであればデータが必要で、今からGAFAに立ち向かえる技術だと思えない。一方で、ブロックチェーンは、「非中央集権型」なんです。

「非中央集権型≒分散型」というのはどういうことかというと、データを中央サーバに集めるGAFAが得意な仕組みではなく、データを分散させて、どこにも中央がないプラットフォームをつくり上げる仕組みなんです。この両者(GAFAの得意とする中央集権型の仕組みと、ブロックチェーン技術による分散型の仕組み)は本質的に相反するもので、そういった意味でとてもおもしろく、これまでにないものだと思いました。

そして、共同代表の中谷とも、ブロックチェーンがきっかけで出会いました。ブロックチェーンの勉強会に参加して、digglue創業メンバーとなる高村さん(現・digglue社外取締役 高村健一)と出会い、前職での後輩だった中谷を紹介してもらったんです。「一緒に起業しよう」とすぐに意気投合して、digglueの立ち上げに至りました。

📝パーパス(企業の存在意義)の設定へ

ブロックチェーンを主軸に事業を展開して4期目。2021年には受託案件も安定してきて、ブロックチェーンメディア(BaaS Info!!)の運営も軌道に乗り、仲間も増え始めていました。

digglueのブロックチェーン案件については、次回の記事で詳しくご紹介していきます。

その中でdigglueの特徴になってきていたのが、もちろんブロックチェーン技術を持っていることがプロジェクトの起点ではあるのですが、「この課題に対する解決策として、本当にブロックチェーンが必要でしょうか?」といった提案までできることだったんです。ブロックチェーンありきでは決して考えない。そのお客様の持っている課題に対して最適な選択肢を、あくまでフラットに模索し提案する。そうしたお客様への向き合い方が、「digglueっぽさ」としてカルチャーになっていました。

「技術は手段、目的ではない」。聞けば当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ブロックチェーン技術を軸に事業をすることを決めて起業した僕たちとしては、これは予想外のことだったのです。それでもこれに向き合うことに決め、4期は、「では、僕たちがdigglueで本当にやっていきたいことはなんだろうか」と考える時間が増えていきました。

そして、2021年11月、パーパスの設定をすることに決めました。パーパスとは、企業の存在意義として設定する概念です。

digglueウェブサイトより

僕たちはすでに、ビジョンとミッションを持っていました。それに共感してくれるメンバーもいて、現にブロックチェーン事業が推進されていたんです。パーパスは、さらにその上の概念として設定することができるものだと考えました。企業の行動の行き先や姿勢を示すのがビジョン・ミッションなら、その行動の理由を一言で表すのが、パーパスです。

パーパスを設定・導入している企業は多くはなかったのですが、現実としてdigglueの活動はすでに、ブロックチェーンを手段として持ちつつ、何らかの意味を持つ方向へ向かって動いているような実感もあり、その言語化こそがパーパスだと、すぐにピンときました。

「この海の美しさを、次世代にも見せたい」企業としての方向性が決まっていった

📝パーパスに向かう原体験と共感

ところで、今のパーパスが決まる前に、一つの原体験がありました。これは、パーパスを決めるよりも前の経験で心に残っていたんです。
 
妻が出産する前に、「子どもが生まれる前の最後の旅行をしよう」と2人で沖縄の石垣島に旅行に行ったときの経験です。川平湾という素晴らしいビーチがあって、珊瑚礁の浜辺の美しさに感動したんです。
 
帰宅後、偶然、珊瑚礁の絶滅危機に関するドキュメンタリーを見ました。「チェイシング・コーラル 消えゆくサンゴ礁」というNetflixのドキュメンタリーです。気候変動によって枯れてしまう珊瑚の問題を追ったドキュメンタリーでした。
 
今ある珊瑚礁って、海水の温度上昇でほぼ絶滅してしまうと言われています。珊瑚が死ぬと、海はどんどん汚れていきます。自分の子どもが妻のお腹の中にいるタイミングで、「この子が大人になったときに、あの美しい珊瑚礁は地球で見られなくなってしまうのか」ということを思ったんです。
 
後世に今私たちが生きる中で触れられる良いもの、美しいもの、価値あるものを残していくことって、これほど重要なことはないんじゃないかと思いました。
 
海に興味を持ったとき、海水温度の上昇、海洋プラスチックごみ問題など、人間の行動を変えることでしか解決しない問題がいくつもあるとわかりました。そこにきちんと向き合い、企業として取り組んでいけたら、これほど胸を張って、やりがいを感じてやっていける仕事ってないんじゃないかと考えたんです。パーパスについて考え始めたとき、このときの気持ちを思い出しました。

📝社内で醸成されていた持続可能性への関心

そういう話を社内でしたら、思いのほか共感を得られて。

実は、そこには理由がありました。当時、digglueに集まり始めていた案件には、ある特徴があったんです。そのときdigglueが取り組んでいたのが、「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」「太陽光パネルリユース市場プラットフォーム開発」「日本産食品のトレーサビリティシステム開発」など、いわゆるサステナビリティ(持続可能性)をテーマとした案件。そうした案件に触れることで、社内ではすでに「持続可能な世界」に対する課題意識と共感が醸成されていたんです。おそらく僕自身が石垣島の珊瑚礁を見て感じたことを思い出したのも、底流にはそういうものがあったのかもしれません。

そうして、議論を重ねた末に、digglueのパーパスを、この社会や世界の持続可能性(サステナビリティ)を高めていくということを軸にすることに決めました。

時代としても、SDGsやESG投資に対する関心が高まり始めていました。けれど、この領域は腰を据えて取り組む必要のある課題が多く、決してスタートアップの参入が多いとはいえません。社内で多かったのは、「だからこそ、自分たちが挑戦する意味もある」という意見でした。

僕たちはすでに、ブロックチェーンを軸に、大企業や伝統的な産業と付き合いながら開発を進める、業務改革をしていく、現場業務の見える化をしていくといった実績があります。社会課題や環境問題に挑戦するには、多くのプレイヤーを巻き込み、たくさんの協力と理解を得ながら社会にインパクトを与えていくことが必要です。

これからより多くの、そして多様なプレイヤーと一緒に物事を変えていくことや、より良い社会循環をつくっていくことが、digglueだからこそできるのではないか。こうして、digglueはブロックチェーンを軸とした会社から、 CleanTechの会社へ変わることになりました。

💡CleanTechとは
クリーンテック。グリーンテックともいう。地球規模の環境問題、社会課題の解決に向けてテクノロジーを駆使してアプローチするスタートアップのこと。
 
参考)https://www.cleantech.com/release/cleantech-group-names-2021-global-cleantech-100-the-top-innovators-driving-sustainability-and-change/
クリーンテック専門の米調査会社であるCleantech Groupが毎年発表している、今後インパクトを与える可能性の高いスタートアップを世界から100社選定して紹介しているリスト。
※日本発のスタートアップは、まだこのリストに掲載されたことはありません。

どんな言葉を存在意義として掲げるか?

📝パーパス「テクノロジーで持続可能な世界を実装する」

ーー実際に設定したパーパスについて、詳しく教えてください。

「テクノロジーで持続可能な世界を実装する」このパーパスを決めたのは、2021年の11月でした。何時間も膝を突き合わせて、経営チームの5人で議論を詰めていきました。
この一文は3つのパートに分けられるので、それぞれ紹介します。

テクノロジーで

digglueはブロックチェーンに興味を持った二人から始まっていて、メンバーの特性として、みんな新しい技術やガジェットが好きなんですよね。そしてみんな、テクノロジーの力を信じている。

これまでやってきたブロックチェーン技術を駆使したさまざまなプロジェクトもあります。その積み上げの先にdigglueが新たな社会課題にチャレンジするにあたって、僕たちが武器として持っていきたいのは技術/テクノロジーだ、ここは外せない、と「テクノロジーで」の部分はすぐに決まりました。

持続可能な世界を

パーパスを設定する上で、「今私たちが生きている世界の良いところを持続させていく」というテーマがまずありました。これをどんな言葉で表現すべきかは議論が起こりました。

この議論の中で印象に残っているのが、こんな会話です。「人類の究極的な目的って何だろう?」と僕が問いかけた時に、久保さん(CTO 久保圭司 @cojicoj67044353)が一言いったんです。

「絶滅しないことだね!」

その場にいた経営チーム、みんなハッとしました。絶滅しないこと、生命としてそれが生きる目的であるのは明らかなわけですが、一方で僕たち人類が絶滅する可能性って、実は現状のままではとても高い、とそんなことに思い至り、語り合ったんです。「持続可能な世界」というのはスタートアップが掲げるにはかなり大きな表現ではありますが、これに真っ直ぐ向き合う意思をそこで確認しました。

「持続可能な社会」でなく「持続可能な世界」なのは、2つ意味があって。一つはdigglueはもともとグローバルに展開していきたい企業だということです。僕自身がアメリカの大学を出ていることもあって、日本発で、世界に挑戦したい気持ちが創業時からありました。
 
また、社会というのは自分たちが生きる場所ですが、それだけが「持続可能」であれば良いわけでもないと思っています。もっと広く、地球環境全体を考え、海も森林も大気も全てを含めて守っていくからこそ、人の生活も持続可能になっていく。そこまで視野に入れた表現にしたかったんです。

実装する

「実装する」というのは英語にしたときにimplement。コードを書くこともimplementというので、テクノロジーの意味合いもあります。

一方で、僕たちがこれから向き合っていく社会課題は、おそらくソフトウェアだけで解決するものではなく、しっかりと人を動かし、企業を動かし、政府を動かし、伝統的なやり方や慣習も動かしていかなくてはいけない。つまり、社会実装する必要がある領域だと考えています。アイデアだけ、机上の議論だけ、データの見える化だけではなく、きちんと社会を変える力になっていかなくてはならない。その覚悟も込めて、「実装する」という具体的な言葉を使うことにしました。

英語にすると、Implement Sustainable World with Technologyというのが、digglueのパーパス(存在意義)です。

最後に

この記事は、ブロックチェーンの会社からCleanTechの会社へと、進化と挑戦を続ける株式会社digglueを紹介する「digglueマガジン」の最初の記事です。「digglueマガジン」ではこれから、現在進行形のdigglueの挑戦をご紹介していきます。

次回・今後は?

次回の記事では、今回もチラッと触れたテーマ、「ブロックチェーンの会社が、なぜCleanTechへ?」にさらにフォーカスします! ブロックチェーンの会社としてどんな案件に取り組んできたのか? そこからどのようなインサイトを得て、今後につなげようとしているのか?

さらに、digglueからβ版提供中の新サービス「MateRe(マテリ)」の開発ストーリーと、向き合っている社会課題にフォーカスしたnoteシリーズも始めます。そちらもお楽しみに🌿

世界的には、スタートアップの新領域としてCleanTechはますます注目を集めています。digglueでは、国内初のCleanTech領域に特化したオープンファクトブックを提供開始する予定です。どうぞご参考になさってください!

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