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「ITIL®」って? 古くは英国政府のIT改革の一翼を担い、いまや世界に広まる“ITサービスマネジメントのガイド”

「先進IT人材」「DX人材」「デジタル人材」それぞれに必要なスキルは異なり、かつ多岐にわたります。全体像を把握するだけでも一苦労ですが、今回は、必要なスキルの習得へ大いに役立つ「ITIL® 4」について紹介します。

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「ITIL®(アイティル)」は、ITサービスマネジメント(ITSM)における最新のナレッジをまとめたガイド(手引き)です。元々は「Information Technology Infrastructure Library」の頭文字を取った略称でしたが、現在は「ITIL®」が正式名称です。

「ITIL®」は1980年代後半の英国で生まれました。当時、英国は不況真っただ中。時の首相マーガレット・サッチャーは、状況を改善すべく、政治と経済の改革を断行します。

当時、英国政府のITの調達や管理に責任を負っていた「CCTA(中央コンピュータ・電気通信局)」は、高品質かつ最適なコストでのITの導入、管理、調達の基準として勧告(recommendation)をまとめました。これが「ITIL®」のはじまりです

1989年に初版が発表された後は、1998年から2004年にかけて「ITIL® V2」、2007年に「ITIL® V3」と内容を刷新(2011年には「ITIL® V3」のマイナー・バージョンアップ版である「ITIL® 2011 edition」もリリースされています)。そして、2019年にリリースされた「ITIL®4」が最新版となります。

30年にわたって、リニューアルを繰り返してきた「ITIL®」。世界中で読まれ、数多くの企業や組織で活用されてきました。「ITIL®」の功績は、ITの管理や調達における視点が、技術偏重からビジネス重視に変えられたことにあります。その結果、今日ではITSMのデファクトスタンダードとしての地位を確固なものにしているのです。

いま、最新版の「ITIL® 4」を、学ぶべき理由


最新版の「ITIL® 4」は、それまでの「ITIL®」とは別物です。

「ITIL® V3」がリリースされた2007年当時は、まだスマートフォンは存在せず(iPhone 3Gの発売は2008年)、「DX」という言葉も「クラウドコンピューティング」や「DevOps」という言葉も、やはり一般的ではありませんでした。つまり「ITIL® V3」が書かれていた当時と現在では、ITサービスを取り巻く環境が大きく異なります。「ITIL® V3」に書かれている内容は、いまの状況にはそぐわないものになっているのです。

最新版の「ITIL® 4」はどうでしょう。こちらは、いま求められるITSMに対応すべく、新たな成功事例を追加して編纂されています。

例を挙げてみましょう。過去の「ITIL®」には、「アジリティ(俊敏性)」と「レジリエンス(強靭性)」という視点がありません。なぜか。

それは、以前のITシステムで重要視されていたことが、安定稼働のために相当の時間をかけてテストを行い、慎重に変更を判断することだったから。しかし変化が速く、予測できない状況にしばしば直面するのが、いまという時代です。ITサービス提供の最適化には、安定稼働の重視だけでは不十分。安定稼働と変更のスピードを両立させることが重要なのは、もはやいうまでもありません。

そこで、重要になるのが「アジリティ」と「レジリエンス」です。単にITシステムを新しくすればこの2つを担保できるわけではありません。システムの刷新に加えて、ITサービスに対するマネジメントもモダナイズしていく必要があるのです。

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