公務員と配属
配属ガチャという言葉を見ました。
マイナビが意識調査を発表したところ、54.9%と半数以上が、配属先は「職種も勤務地も自分で決めたい」と回答したそうです。
参考記事:「配属ガチャ」不安で内定辞退や早期退職も 就活生55%が「職種も勤務地も自分で」……マイナビ調査(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース
私は知らなかったのですが、「配属ガチャ」という言葉自体は、最近出たものでなく、テレワークが本格的に定着する前の2020年にもあったようです。
参考記事:新入社員を苦しめる「配属ガチャ」発生の背景 | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
「勤務場所や勤務内容が入社してみないと分からない=運次第」というところが、新入社員からすると、スマホゲームのガチャのように感じるのかもしれません。
これが、公務員にも該当するか、考えていこうと思います。結論としては、運次第だから配属はガチャであるとは考えられません。運次第と嘆く前にやるべきことがあります。
1 そもそも新入職員の配属はいつ決まるのか
最終的には人事課や人事委員会が配属先を決定します。内示が出るのは、大体異動日(4月1日)の3営業日前であり、職場が「うちにも新入社員が配属されるのか。」と認識を持つのは、内示の日となります。(おそらく管理職はもっと前に知っているでしょう。)
本人に知らせるのは、自治体ごとに異なります。一週間前に郵送で配属先を教えてもらったという友人の地方公務員もいますが、私の所属する自治体では、入庁当日に首長から配属先を伝えられて初めて、本人が知ることになります。
そのため、入庁する(早くても入庁ギリギリ)まで、配属される場所は、本人は分からないことになります。
2 配属はどうやって決まるのか。
公務員の事務職・行政職でも「これがやりたい!」と希望をもって入庁する方はいます。
そうした希望は、まず、面接試験で表明することになります。おそらく、どこの自治体でも「どんな部署で働きたいか。」「どんな仕事をしたいか。」など、配属の希望は面接でも鉄板のネタです。
・都市計画に携わって、大好きな町の全体像を描きたい。
・企業誘致ができる課に行って、色々な企業とかかわりたい。
・これまで学んだ語学を生かせる国際交流関係を希望している。
などなど、熱意の濃淡はあれど、一定程度の配属の希望を持って入庁してくる方が多いです。ここで、自治体は入庁者の希望を把握することになります。
晴れて内定が出たら、今度は入庁前に人事課との面談で説明することになります。私もそうでしたが、入庁希望者は面接試験で聞かれたことと同様に、「どんな仕事に興味があるのか。」「今まで力を入れてきたことは何か。」を改めて聞かれ、面接時に話した内容とそれほど乖離していない内容を説明します。
ここまでで、少なくとも2回は自分の配属希望を入庁する自治体に伝える機会があります。しかし、ふたを開けてみると、大多数は本人の希望した場所、想定した場所とは異なる場所へ配属されます。
3 なぜ希望はかなわないのか
配属を決める方も、決して意地悪で希望をかなえないわけではありません。試験を突破してきた優秀な若手をみすみす手放そうとする理由はなく、可能な限り希望通りとしたいと思っています。
ただ、それよりもその職員がどうしたら成長できるか、どこの職場なら力をより発揮できるかを見ます。そのため、面接の過程で分かった適性や、上司となる職員との相性を予想しながら配属先を決定しています。
入庁試験では、大体2~3回の面接があり、最初は若手職員、最後は幹部クラスの職員が面接官になることが多いようですが、どの面接でも、結局のところ一番の評価軸は、「この人と一緒に働きたいか」です。
一緒に働きたい、同僚になりたい、部下にいてほしいと思えば、面接で高い点がつけられます。そして、高評価の順に育成に定評のある上司の下につくように配慮されるなど、より成長が望める部署に配属されることになります。
「入庁先が考える良い配属先」=「新入職員に人気の配属先」ではありませんが、少なくとも手放したくないと考える職員に対しては良い待遇で迎えたいというインセンティブは働きます。
つまりは、配属は運次第ではありません。面接で高評価を得られた順に、良いと思われる配属先に、入庁希望者を割り振っていくことになります。一緒に働きたいと思う順に、配属先が割り振られていき、晴れて合格した後も、一律同じ土俵で判断されるわけではないということです。
面接なんて数分の結果で判断できるのかという反論もあるかと思います。しかし、これはエビデンスがあるわけではありませんが、結構、第一印象って馬鹿にできないものがあります。好い人はそのまま好い人だし、合わない人はたいていそのままです。
私も一度、「一緒に働きたい」といった好感を持った人に対して、経験上、裏切られたことはありません。近頃は企業や大学等の試験でも面接重視になっていますが、そういった背景もあるのかなと思っています。
ここまでの結論としては、配属について、回した本人は何が出てくるかわからないことを指して「ガチャ」というならばその通り、何が出てくるかは運次第ということを指して言うならば違うというものです。
4 「ガチャ」に外れたら終わりか
では、初めの配属がダメだったら、取り返しがつかないのかというとそうでもありません。
確かに、初めての配属先は印象深いものです。私も初めて配属先を告げられた時の心情は今でも残っていますし、その後、期待と不安が3:7で混ざった気持ちを抱えて配属先に向かったことを思い出せます。一生忘れることはないでしょう。
ただ、公務員、特に新入職員の異動ローテーションの平均は3年間です。周りの評価を覆すには十分な時間です。
希望ではなかった配属先でも、結果を出せば道は変えられます。面接ではたった数分であった、自分を見てもらえる時間が今度は3年間あります、目の前の上司が面接官です。
成長し、有無を言わせぬ結果を突きつければ、評価されます。希望の配属先に行ける可能性はグッと上がります。少なくともさらに成長が見込める職場に配属されることになるでしょう。
自分のいる場所が望んだものと違っても、そこで必要とされているのだと意気に感じて仕事に取り組むかどうかで見える景色も変わってきます。まずは、済んだ結果を嘆くよりも、できることから始めて次の配属をつかみに行く方が良いと思います。
一方で、この楽観的な考えは、配属先の上司がちゃんと評価をしてくれるという前提に立っているとも言えます。自分はしっかり仕事をしていても、評価されていないと感じる、査定も思ったほど出ない。多くの職員、特に新入職員が悩む道です。
原因は、上司にある場合もあれば、担当にある場合もあるので、一概には言えません。ただ、一つ言えることは、少なくとも面接試験を乗り越えて合格できたのは、誰かが一緒に働きたいと思ったからです。自治体に自分を評価してくれる上司は必ずいます。
1年2年も経てば評価者も変わります。今の自分に合わない上司なのだと、結論付けて、自分の仕事に集中する方が、物事は良い方向に回ります。
ただ、若い人の1年、2年は貴重であることも確かです。自分を評価してくれないことがどうしても受け入れられない、配属先に納得できないのであれば、違う道である早期異動希望や転職を考えるのもありだと思います。
5 まとめ
ゲームをやる方ではありますが、自分を含めた誰かの人生を「ガチャ」といった言葉に当てはめるのは好きではありません。どうしても、「行き当たりばったり」「運次第」ということにつながるためです。
配属は、誰かの人生を変えることもある重要なことです。だからこそ、どこの自治体も適当に決めているわけではなく、必死で考えて決定しています。
配属は運次第ではありません。自分の今までの努力や成果を誰かが評価し、その評価の結果として決まるものです。他の候補者もいるため、すべてを自分でコントロールできる訳ではありませんが、自分は俎上の魚でもありません。
全ては自分の意欲から始まります。配属も、動けば変わります。運がなくガチャに外れたと嘆くよりも、まずはやるべきことをやって、天命を待つのがよいではないかと思います。
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