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どんな税金が減ることが嬉しいか

税金について考えさせられる報道が相次いでいます。原因は、今国会でも議論されている「デフレ完全脱却のための総合経済対策」によるものでしょう。
所得税・住民税の定額減税「1人当たり4万円、約9000万人対象に」岸田首相会見11月2日(全文)※冒頭発言のみ(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

総額17兆円を見込む大型経済対策であり、目玉は、約9000万人を対象にした総計3兆円半ばの所得税・住民税の定額減税です。来年の6月に、本人・扶養家族を問わず、所得税3万円、住民税1万円が引かれる今までにない減税施策です。

素人考えでは、物価高の今、減税をしたら余計にインフレが進むのではと思わなくもないですが、税金が減って可処分所得が増えるのは個人の家計的にはありがたいことです。

一方で、巷の反応は良くないようです。ANNの調査でも、所得税などを定額で4万円減税することを軸に政府が検討を進めていることについては、「評価しない」と答えた人が56%と過半数を占めています。
ANN世論調査 岸田内閣支持率 発足後最低の26.9% (tv-asahi.co.jp)

評価しない最大の理由は「政権の人気取りだと思うから」だそうです。政府とすれば、減税施策によって国民の関心を集める目的もあったでしょうが、それを評価しないとされてしまうと可哀想な気もします。「じゃあ、どうすればよかったんだ!」という声も聞こえてきそうです。

一般的に、減税は喜ばれるはずです。それなのに評価されないということは、所得税を対象に選んだことを大勢が反対しているように思えます。もっと減らすならば別の税にしようというものです。

今回は、自分の家計簿を見ながら、何の税金が減るのが嬉しいか考えていこうと思います。

1 所得税・住民税が減る

所得税や住民税が減るのは大変ありがたいです。子育て世帯の場合、扶養家族が4人いるため、本人も入れれば合計で20万円の減税です。昨年の所得税が、そのくらいだったと記憶しているので、来年は税金が0になるかもしれません。(注:4万円のうち1万円は住民税から減額されます。)

所得税は、稼いだ額が大きければ大きいほど、支払う税金の額が大きくなる累進課税となっています。所得税を減税することで、頑張って働いて稼いだ人の取り分が増えることは望ましく、率でなく定額にすることで、所得の低い人にも行き渡るようにという考えであるように思います。

一方で、他の控除との兼ね合いは気になります。そもそも、所得税は住宅ローンによる控除をはじめ、iDeCoや生命保険料控除など、自分で不慮の事態に備えている人ほど、減額の恩恵を受けられなくなるのではないかという懸念もあります。

住民税についても、ふるさと納税をやっている人は、納税を行える限度額が、例年より減ってしまうのではという妙な心配もあります。

とはいえ、そんなことを些末なことと思えるほど、所得税・住民税の減税はありがたいことだと個人的には受け止められます。扶養家族を入れての減税であれば、その分、目に見えて可処分所得が増えて、家のためにお金を使うことができます。

2 消費税が減る

他の税を減らしてほしいと主張する場合の本命が消費税のようです。政府の所得税減税提案に対して、野党側は消費税の減税を主張しています。

政党によって異なりますが、10%と8%に分かれている消費税を一律8%に、または一律5%にと主張する政党もあるようです。

わが家の純生活費がおよそ300万円ほどとして、全て8%の消費税だったとすると24万円です。仮に消費税が半額になったとして12万円の減税です。所得税のインパクトと比べると、少し落ちますが大きなものです。

一方で、個人的には消費税の減税は好ましくないと考えます。その理由は、消費税は社会保障の財源となっており、減税した場合はおそらく保険料の増額で穴埋めをすることになり、結果的に勤労世代の負担が増えると考えるためです。

現在、少子高齢化が進み、年々社会保障給費が増加しています。2023年の予算ベースで約134兆円で、1980年は30兆円足らずだったことを考えると40年経たないうちに4倍になったことになります。
参考:給付と負担について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

社会保障給付費は、年金(約60兆円)や医療(約41兆円)に充てられており、おいそれとすぐに減らせるものではありません。今後高齢化は進み給付費が減ることも見込めません。

社会保障給付費の財源は社会保険料と公費=税金です。この税金に該当するのが、消費税法にも記載のとおり消費税であり、その額は23.4兆円に上ります。

仮に消費税を一律半額にしたとすると、税収は約12兆円減額します。そうするとその穴埋めをする必要があり、真っ先に代替として思い付くのは同じ財源を構成する社会保険料でしょう。

消費税が下がったとしても、社会保険料が上がってしまっては意味がありません。トントンか、下手をすれば減額以上の社会保険料に取られてしまうことになります。

社会保険料ではなく、国債を発行するという手もありますが、コロナ禍によって嵩んだ国債の発行残高をさらに積み増しするのもピンときません。国債残高とは言うものの、次世代が支払うことになる借金の積み上げです。

私の専門は経済学ではないため、異論反論はあるかと思いますが、消費税の減税をしても、自分が支払う社会保険料が増えるか次世代の負担が増えるかだと考えるので、消費税が減税されたとしても喜べないでしょう。

3 社会保険料が減る

これもありがたいのですが、若干不安です。

自分の年収のおよそ2割ほどを社会保険料として徴収されているため、年収600万円だとすると、およそ120万円です。半額になっただけでも60万円と、これまでで一番のインパクトです。大変大変高額です。

さらに、社会保険料は労使折半であるため、同じ額を会社(自治体が)支払っていることになります。この額は本来であれば給料に充当されているはずと考えれば、労使分合わせて半額減ると120万円が入ることになります。かなりアバウトな計算ですが、非常に夢があります。

一方で、これも財源のことを考えなくてはいけません。社会保障給付費の財源の内訳をみると、被保険者(労働者等)と事業主合わせて77兆円です。これを半額にすると約38兆円の穴が空きます。先ほどの消費税の約1.5倍で、この財源を埋めることは難しいでしょう。

いざ実行されても、また国債が増えるのでは?消費税を倍にしないと持たないのでは?と疑心暗鬼になってしまいそうです。

恩恵を受けられる額だけで考えれば、給与所得者からすると、社会保険料が減るのが一番ありがたいのですが、減った後の穴埋めをどうするのだろうと考えると、尻込みしてしまいます。

4 他に手立てはないか

他に何の税金を減らすかを考えてみても、固定資産税は資産を持っている人だけで不公平、ガソリン税は若い人は車を持っていない人が多く恩恵を受けづらい、法人税は労働者に給料アップという形で恩恵が行くか不透明など、出来なさそうな理由ばかりが浮かびます。

そのため「減税します!」といわれた時に、真っ先に浮かぶのは、所得税・住民税、消費税、そして税ではないですが社会保険料、私のような給与所得者にとっては、この3つです。

そもそも物価が上がっている時に、減税をしたら、余計に物価が上がる傾向になるのでは?という疑問があるのは置いておいて、何が税金として減ったら嬉しいかを改めて考えると、3つの中では所得税なのかもしれません。他の二つは減っても先に不安が立ちます。

昔は税金が減ると言われれば素直に喜んでいたのですが、子どもも生まれ、先行き不透明な時代になったこともあって、ともすれば余計なことを考えてしまう年になりました。

とはいえ、減税することは決まったようです。決まったことは素直に喜んで受け入れて、来年6月の給与明細がどうなるのかを待ちたいと思います。

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