自分の死後に必要なお金について考える
FP(ファイナンシャルプランナー)の勉強をしていると、相続関連の問題が多く出てきます。多くのものは、急な不幸があって、遺産がこれだけあるが、相続税額はいくらか、または残された家族にどれだけの生活費が必要か、というものです。
私には相続の基礎控除を超えるくらいの財産があるべくもないので前者の問いは無関係なのですが、遺族の生活費は興味があります。
縁起でもないのですが、私が今すぐに即死したとして、遺された家族は生活できるのか。想像してみると、非常に大きな心配事です。
FPの駆け出しとして、まずは隗より始めよ。今回は、そんな縁起でもないことについて、生命保険会社のキャッチコピーではないですが「もしもの時のために」考えていきたいと思います。
1 自分の死後どれだけのお金が必要か
給与稼得者・生計維持者が急に亡くなった際に、今後の生活費としてどれだけ必要になるのかは難しい問題です。
末子が大学を卒業するまでの教育費・生活費の全額を想定した場合、億を超える額になり、給料のかなりの部分を生命保険に突っ込まなくてはいけなくなります。
私が亡くなった場合、現実的には、妻が再び働くことになるのでしょう。ただ、自分の死後、子どもたちも含めて、おそらく1年は落ち着かないと思われます。
また、1年経って少し心身が安定しても、すぐに仕事が見つかるとは限りません。人手不足とはいえ、子どもを抱えながらの就職活動はなかなか困難なはずです。安定した職を見つけるのに、これもまた1年は見ておいた方がよいでしょう。
2年が経って生活が安定しても、再び不測の事態が起きたときの備えとして、1年間は何もしなくても大丈夫なように、生活防衛資金も用意しておきたいところです。これを1年分予備の生活費とします。
このように考えると、3年間は何も収入がなくとも生活が成り立つように3年間分の生活費は最低限準備はしておきたいところです。具体的に見積もってみたいと思います。
今の我が家の純生活費、出費から税金等の支払いを除いた純粋に生活のために必要な費用として、300万円を見積もります。ここから亡くなった自分を除いた75%の費用は250万円であり、250万円の3年分なので750万円です。
葬式代等は香典等から、教育費は今の貯蓄から支出するとして、3年分の生活費である750万円が必要となると目星をつけました。
2 死後にもらえるお金はどれくらいか
(1)死亡退職金
サラリーマンや公務員であれば、予期せぬ事故で在職中に死亡した場合、業務外死亡退職として退職金が出ます。以前に、退職金についてはnoteにも記載しましたが、退職金の支給額は「基本額=退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合」で計算されます。
当然ながら、死亡退職は自己都合とはならないため、退職金の支給率も高くなります。私は公務員になって15年目であり、自己都合退職であれば「月額×10.3788」ですが、死亡退職の場合は「月額×16.216875」となります。およそ1.5倍です。
参考:国家公務員退職手当支給率早見表
私の月給を35万円として、死亡退職の支給率を乗じると、およそ560万円と算出しました。これに調整額を加算します。調整額は、在職期間中の貢献度に応じて60カ月分の加算があり、その職位(部長、課長、課長補佐)によって額が異なります。詳しい計算方法は人事院の例が分かりやすいです。
今の私の職位から計算すると、調整額は160万円ほどでした。基本額と合算して720万円です。これが私の今の死亡退職金ですが、税金が引かれることになるので、700万円と見積もっておきます。
(2)健康保険・振興会関係
自分が加入している公務員の振興会や共済組合からも、万が一の際は支給金があります。見舞金、埋葬料、そして育英金です。
見舞金はその名の通り、共済の組合員(職員)が亡くなったことに対する弔慰金のようなものです。亡くなられた職員の遺族に対して、支給があります。
埋葬料は、協会けんぽでも同じような制度がありますが、埋葬にかかる費用が支給されます。
ご本人・ご家族が亡くなったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
さらに育英金です。亡くなった職員に子どもがいた場合、子どもを育児するために必要な費用の補助として、子ども一人に対して補助があります。額は加入している組合等によって異なるようです。
その他、振興会の死亡退会金もあり、上記に書いたものと諸々を合計すると、死亡退職金以外に、共済組合等から給付される350万円ほどの支給金があるようです。
(3)遺族年金
忘れてはいけないのが遺族年金です。こういうことがあった時のために社会保険料を払っているのですから、しっかりと享受しなくてはいけません。遺族年金は2階建てで、遺族基礎年金と遺族厚生年金で構成されています。
参考:遺族年金|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
遺族基礎年金は、被保険者等であった方が亡くなった場合、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。
いくつか取得のためには要件がありますが、通常公務員として働いていれば対象になり、我が家であれば、子のある配偶者=妻が受け取ることになります。
遺族基礎年金の額は795,000円です。これに子の数によって加算が加わり、1人目および2人目の子の加算額は228,700円、3人目以降の子の加算額 各76,200円です。
我が家は子どもが3人なので、計算すると、795,000円+228,700円×2人+76,200円で、合計は132万8,600円です。これが基礎年金の額になります。
続いて遺族厚生年金です。支給対象者は基礎年金と同じですが、支給額は働いた年数と亡くなるまでに得た月給によって異なります。
遺族厚生年金の計算式は「老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」です。これだけだといくらか分かりません。
老齢厚生年金の報酬比例部分とは、平均標準報酬額に5.481/1000と加入月数を乗じた値です。平均標準報酬額と、また新しい言葉が出てきましたが、簡単に言えば今までの月給と賞与を総合計して、平均にし、月にいくらもらっていたかを表したものです。
とはいえ、自分で計算するのは難しいので、1年に一度配達されるねんきん定期便で確認するか、公務員(地共済)であれば地共済年金情報Webサイトに登録して報酬比例部分の額を確認するとよいでしょう。ついでに、将来支給されるであろう年金額も分かります。
私の平均標準報酬額は40万円として、これを計算式に当てはめると、400,000×5.481÷1000×300=657,720円です。(※加入月数が300以下の場合は300月加入したとみなして計算します。)
この額を3/4しますので、私の遺族厚生年金は493,290円でした。この額に、先ほどの遺族基礎年金の132万8,600円を合計して1,821,890円で、遺族年金は約180万円です。毎年この額が、子どもが18歳になるまで入ることになります。(子どもが18歳になるごとに額は減っていきます。)
ここまでをまとめると、私が亡くなった時に入るお金が、700万円(死亡退職金)+350万円(振興会等)+180万円(年金)=1,230万円です。
亡くなった時に必要となるお金が750万円なので、差し引き480万円で、十分な余裕があります。取り越し苦労かと思ったのもつかの間、私には借金があります。住宅の貸付金です。
家を購入するときに、職場の住宅貸付を利用して購入しました。この貸付は、死亡退職時には、退職金と相殺して返済になるそうです。返済をスタートしたばかりであるため、借りた金額がほぼ丸々負債として残っています。
その額は1,000万円以上です。負債を返済するため、振興会費や退職金で相殺すると、残額は約200万円です。3年分の生活費に550万円ほど足りません。
3 保険を活用しよう
ここまでの想定によると、生活費が550万円ほど足りなくなり、このままだと私が亡くなったらすぐに妻は働き先を探して給料をもらう必要があります。連れ合いを亡くした3人の母にとって、それは苦行です。
そこで保険を活用します。保険の役割は、起こる可能性が低いけれども起きた場合の尋常でない被害をリスクヘッジをするものと理解しています。現在、私が加入している保険は3大疾病に対するものですが、急な死亡に対しても300万円の保険金が出ます。
これでも、まだ足りません。そこで、新たに掛け捨てのネット保険に加入しました。最低限の保証で死亡のみに対して支払われるものであり、月々の保険料も以前に加入していた養老保険よりも低額です。
既存の加入分と合わせて600万円となるように保険金をかけて、万が一の時にも、家も確保でき生活費の心配もいらないようにしておきます。加えて、ローンの支払いも続いているので、保険料は低く抑えられるようにしておきます。
時分に万が一のことが起きたとしても、遺された家族が、更なる不幸に陥らないように、生計維持者としての責任を果たしておきたいと思います。