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須藤元気の外と内面を分析する

須藤元気率いる「WORLD ORDER」が約2年間のブランクを経て、昨年2021年9月11日、新曲CENSORSHIPをリリースした。


タイトルの「CENSORSHIP」は訳すと、「検閲」と言う意味を持つ言葉であり、社会風刺を得意とする須藤元気の真骨頂が歌詞やダンス等の端々にほとばしる。
※歌詞は以下のページで読むことが出来ます。⇩


私は音楽評論家であるが、正直「WORLD ORDER」の描く音楽や詞の世界にはこれまで余り関心が無かった。だがこの作品をはじめとする幾つかの作品に妙にそそられ、特に今作品CENSORSHIPの歌詞の以下の部分が突出して鼓膜に刺さって来たので抜き出しておきたい。

答えにならない答えを繰り返すのさ
真実なんていつか作られているものさ
言葉にできない言葉は黒く塗れるのさ
紙切れなんていつか無くしてしまうものさ
答えを出さない答えは
空気を読んで
(失礼にいたしましては)
記憶にはございません


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数年前、須藤元気が選挙戦に躍り出た時に、私は一度だけ彼と会話をしている。
その時の会話で印象的だったのが以下のようなセンテンスだった。

:
「WORLD ORDER」はやめてしまうんですか?

須藤:
はい。僕はこっちの世界で頑張ろうと思います。
あっちは僕以外の仲間たちが頑張っているので、是非今後も「WORLD ORDER」を応援して下さい。


そう言い終えると選挙の立候補者らしく須藤氏は "ぎゅっ" ‥と固く握手をしてくれたが、その人間離れした筋肉質な須藤氏の手の感触を私は今も忘れられない。

あの時は確か、Tシャツにジーンズ、黒メガネに襷を掛けていた。度々PVで観ていた須藤元気とは印象が違い、目に浮かび上がる弱弱しい印象が私の単なる錯覚ではなかったと、今は思っている。

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最初に「WORLD ORDER」の動画を視たのは、私の記憶が正しければ2011年3月11日の大震災からそう遠くない、夏のある午後だったと思う。
曲目はこれ、「MACHINE CIVILIZATION」であり、「WORLD ORDER」の中でこの作品に勝る他の作品は無いだろう。

この作品には2つの良質な動画があり、私は上の作品動画よりもライブ・パフォーマンスの方が気に入っている。
特に注目すべきは動画4:18~ からの、須藤演じる壊れて行くロボット人間の動き。当時多くの芸人がこれを真似してコケたのを思い出したが、これは必見だ。⇩


須藤氏は恐らく小室哲哉の影響を強く受けた人ではないだろうか。
そう言えば「WORLD ORDER」は活動初期に一曲だけ、小室哲哉(TRF)の楽曲「BOY MEETS GIRL」をカバーしているが、それが圧巻だった。
勿論編曲やミックスはかなり粗削りで音楽として単一で聴けるかと言われると「No」のクオリティーではあるが、PVの印象は他の動画に引けを取らない。

(※但し上記の楽曲は「WORLD ORDER」のオリジナルではないのが、ファンとしては残念なところである。)


彼らのオリジナルの中で何が秀逸か‥ と言うと私は上記で触れた「MACHINE CIVILIZATION」の次に、MISSING BEAUTYを挙げておきたい。

MISSING BEAUTYで須藤元気は弱弱しい失恋を描いており、どこかカンツォーネやラテン音楽にも通ずる男の未練をたらたらと歌詞に綴っているのが印象的だ。
その弱弱しい、ある種の女々しさをあの、眼光鋭い表情で歌うのだから、そのギャップはある意味笑いをそそられるし、ある意味では女性のリスナーの同情さえ引く。

だが作品を聴いた後に尾を引く何とも言えない空々しさが一体どこから来るのか、ずっと分からずに居る。言葉には言い表しにくい嘘っぽさをリアリティーたっぷりのあの表情で演じているギャップを、数年が経過しても埋められないのだ(笑)。


そして何と、編曲違い、構成違いでMISSING BEAUTYのPVを、須藤元気はソロ作品としても配信しているが、これがなかなかに情けなくて笑える出来になっている。


2017年3月にリリースされている「SINGULARITY」では7人だった「WORLD ORDER」だが、2018年10月9日に公開された「MISSING BEAUTY」ではメンバーが2人減って、演者が5人になった。

勿論ソロ作品としての「Missing Beauty」は2015年12月2日に配信されているので、少しずつメンバーが少なくなって行った経緯とは全く無関係ではあるものの、ソロのMissing Beautyを観ていると一抹の寂しささえ感じてならない。

背広と言うユニフォームをひとたび脱いで私服の「素」の須藤元気に立ち込めるこの弱弱しさと、数年前に選挙演説後に直接話しをした時の須藤元気はまさしく同じ人物であり、ソロのPVで感じた彼の情けなさの方が実は須藤の「素」ではないのかと私は思っている。

「絶対にお手を触れないで下さい」と書かれた背広姿の須藤元気に万が一手を触れても、崩れ落ちるのは手を触れた人ではなくもしかすると愛に枯渇しているように見える須藤元気の方ではないのか‥ とさえ思えて来るから、人は見掛けによらないものだと思わずにはいられない。

Screenshot 2022-02-24 at 13-19-09 須藤元気 Missing Beauty”


さて、大体の記事ではその記事の〆に良作と思われる動画や音楽を貼っているが、今回は例外的にその逆をやってみたい(笑)。

あの名作「Merry Christmas Mr.Lawrence」を何と、須藤元気が演奏している。それが何とも情けないのだ。
未完成のロボットがピアノを弾いているような光景に、ほんっとうにお話しにならない程下っ手くそなMr.Lawrenceがたらったらと展開出来ずに右往左往する様子が、まるで自転車を怖がっている少年のようで胸がしめつけられる。

この言いようのない苦悩を是非、皆様とシェア出来たら本望である。


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