Aleppo Snow （アレッポの雪）

壊れた心はもう、二度と元には戻らない。それはアレッポの雪の中に放り出された瓦礫の連なりに似て硬直したまま、生まれ変わることは出来ない。

壊れた心はこの先も永遠に、壊れたまま生き続けるだろう。

人々の心に空いた大きな穴の向こうに時折思い出したように青空と太陽が仄視えては、再び雪に覆われる。
それでも人は生きて行く。子供も老人も女性たちも、一心不乱に明日の朝陽の輝きを頼りに生きて行く。全てが元通りになるその日を胸に抱き、瓦礫となり果てた我が家から遠く離れた真っ白いキャンプに身を寄せて十年、五十年、百年‥ と時を数えながら、人々は一日でも長くこの世界に留まろうと生き続ける。

壊れた観覧車の頂上に、或る音楽家の心の欠片が眠っている。それは粉々に割れた器のようにそれは無残に冷たかったけれど、その奥に微かな思い出を浮かべて死んでいた。