2020年の梅シロップ 後編

地元の八百屋で見つけた青梅を使い、梅シロップを作っていた僕だったが・・・。


容器に梅と、同量の砂糖を入れてしばらく放置する。
そうするとじんわりと果汁が出てきて、それが砂糖と混ざり合う。完成までだいたい2週間ほどである。

一日ごとにどんどん果汁がにじみ出て、しわしわになった梅がそれにぷかぷか浮き始めた。もう完成は近いだろう。猛暑の日に、これの炭酸割りを飲むのを想像し心が沸き立った。

10日後。
いつものように瓶を見ると、なにか変だ。
浮いている梅たちが白くなっている。
「腐ったか!?」
思わず駆け寄って蓋を開けた。白くなっていると思ったがそうではなく、それは大量の細かい泡だということがわかった。
耳を澄ますと、炭酸水を振ったときのような音がしている。

発酵しているのだ。
試しに箸で突いてやると、微炭酸飲料のように「しゅわああ」と小声のような音が瓶から聞こえてくる。



慌てて「梅シロップ 発酵」で検索してみる。すると人気の和食レシピサイト『白ごはん.com』さんにて対処法が掲載されていた。それによると、梅を取り出し、70度くらいまで加熱すると発酵が止まるらしい。
日本酒でいう「火入れ」と同じ理屈だろう。加熱することで発酵を促す微生物を殺してしまうのだ。早速それを行ってみる。

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翌日になると、梅は元通りになっていた。昨日までの騒ぎが嘘のようだ。騒いでいたのはおれだけだが。

これで完成である。梅はこれ以降シロップに入れず、取り出して煮詰めてジャムにした。


果たしてうまくいったろうか?試しに冷えた炭酸水で割って飲んでみる。
思わず声が出る味だった。作った感慨深さもあるだろうが、それを差し引いても、驚くほどの梅の香りと爽やかさが詰まっている味だった。

500ミリのペットボトル1本半ぐらいできた梅シロップは、その夏のあいだ炭酸水で割って梅サイダーにしたり、それに焼酎を入れて梅サワーにして飲んだ。飽きっぽい僕にしては冷蔵庫の肥やしになることなく、順調に消費していった。

それでも、冷蔵庫の片隅にまだペットボトル半分ほど残して保管してある。
なんだか、去年の夏をそのまま大事にのこしている、という気もする。



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