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箱から見る均質な世界 - 『箱男』
箱から見る世界はどんなだろうか?
「箱男」は段ボールの中で生活をする人間だ。浮浪者とは違う。彼らは誰にも注目をされないことを求めて、段ボールに入る。
箱男は、ダンボールに四角い切れ込みを入れることで視界を確保している。
当然ながら彼らの視野はとても狭い。地面がよく見えるように切れ込みを入れるので、ほとんど下しか見えない。箱男曰く、人は上を見上げる機会などめったにあるものではない。
文字通り、彼らが見る景色は普通の人と全く異なるのだ。
誰でも、風景に接した場合、つい自分に必要な部分だけを抽き取って見がちなものである。たとえば、バスの停留所はよく憶えていても、そのすぐ隣の何倍もある柳の木のことはさっぱり思い出せない。〔……〕ところが、箱の窓を額縁にして覗いたとたん、すっかり様子が違ってしまう。風景のあらゆる細部が、均質になり、同格の意味をおびてくる。
私はこの小説を読んでいる間、ずっと夢を見ているような気分だった。まるで、今まで信じていた世界のあり方が全く変わってしまったようだった。
「見るべき」と無意識に感じていたものが剥がされる感覚。生活という必要性を剥ぎ取られたランダムな世界。
箱男の狭い視野が、私に広い視野を与えてくれたようだ。
つい思いついたので上手いことを言ってしまった。調子が悪いようなので、今日はこんなところで。