長期競技者育成理論を促進するためのフレームワーク
こんにちは。Dice Trainingです。
岩手県でトレーニング指導を生業にしてます。
アメリカ留学中にNSCA CSCSを取得。
留学中のインターンシップも含めると、
トレーニング指導に携わって20年以上になります。
今回は、
「ジュニア世代のアスリートに指導している方」
にぜひ読んで欲しい内容です。
僕自身もジュニア世代と関わる機会があります。
どのようにプログラム提供をするのがベストか?
をいつも考えています。
とても参考になる記事を見つけたので、
アイディアをシェアしたいと思います。
参考にしたのは、
「A Coaching Session Framework to Facilitate Long-Term Athletic Development 」
著者:
Kevin Till, PhD,
Joe Eisenmann, PhD,
Stacey Emmonds, PhD,
Ben Jones, PhD,
Tom Mitchell, PhD,
Ian Cowburn, PhD,
Jason Tee, PhD,
Neil Holmes, BSc,
Rhodri S. Lloyd, PhD,
著者は全員、
イギリスやオーストラリア、
ニュージーランドなどの
大学教授や研究者です。
タイトルの通り、
ジュニア世代に対する
”トレーニング指導の枠組み”
がすごくよくまとまっています。
まず、長期競技者育成理論とは?
全ての世代の
・健康
・身体活動
・スポーツパフォーマンス
を向上させるための考え方です。
過去に僕も触れているので、
ぜひ、こちらの記事も読んでください。↓
最近では、
・スポーツ活動への参加機会
・タレントの発掘/育成機会
の2つのが大きな目的がなっているようです。
目的や世代によって、アプローチが少し変わる
”スポーツ活動への参加機会”
が目的の場合、主な狙いは
”フィジカル・リテラシー”の向上です。
身体活動の向上と並行して、
・運動参加へのモチベーションや自信
・運動の知識や価値の理解
・人生においての身体活動への参加
など、どんな人でも、
生涯にわたって活動的な生活を送るための
基礎を作る意味あいが強いと思います。
こちらだと、年齢やレベルに関係なく、
全世代が取り組むべき内容になります。
一方で、”タレント発掘・育成の機会”
が目的の場合は、主な狙いは
運動スキルの向上になります。
従って、
・上半身の筋力やバランス
・下半身の筋力やバランス
・体幹部の安定
・加速/減速/再加速/方向転換などの能力
・ジャンプなどの瞬発的な動作
・投げる/捕る/蹴るといった基本的な動作
など、より競技力を向上させる能力開発を目指します。
青年期(概ね高校生以上)で、
競技参加を目指している方は、
こちらのアプローチになります。
理解は進んでいるが、まだまだ浸透していない長期競技者理論
長期競技者理論に関する理解は高まっている一方で、
実状では、そこまで実施されていないようです。
海外の事例でも、
・若年層の身体能力の低下や肥満の増加
・ジュニア世代アスリートの運動スキルの低下
・ジュニア世代アスリートの酷使による怪我の発生
などが報告されています。
この辺は日本でも同様の傾向がありますよね。
なぜ浸透できないのか。。。。
さまざまな障害がありますが、
その一つが、”指導者側の体制”になります。
ジュニア世代の競技者の指導は、
主に、そのスポーツチームの指導者、
もしくは学校の先生になります。
”自身の専門外”の分野も
カバーしなくてはいけない。
これはなかなかハードです。。。
なので、今回の記事が、
ジュニア世代のトレーニングに
困っている指導者の方達の参考になれば幸いです。
指導のガイドラインは「RAMPAGE」です!!
トレーニングセッションを
局所的な内容ではなく、
”全体的に網羅したセッション”
にするためのフレームワークが、
「RAMPAGE」になります。
それぞれのアルファベットが、
それぞれのトレーニングセクションを表しています。
仮に1時間程度の
トレーニングセッションを仮定し、
実施例を挙げていきます。
① R → Raise
このセクションの目的は、
体温(筋温)を上げることです。
いわゆるジェネラルウォームアップです。
所要時間(目安):
●5分程度
実施種目:
●ジョギングやスキップなど。
前後左右、色々な方向に動く
② A → Activate
特に活用する筋肉に刺激を与えます。
(次の③とMobilizeと並行して行います。)
③ M → Mobilize
特に活用する関節の可動域を高めます。
所要時間(目安):
●5分程度
実施種目:
●動的ストレッチや自体重エクササイズ
(スクワット、腕立て、プランクなど)
④ P → Prepare
徐々に運動強度を高めていき、
この後に控えるセクションの準備をします。
所要時間(目安):
●10分程度
実施種目:
●ダッシュやバウンディング、
アジリティなど
⑤ A → Activity
このトレーニングセッションで身につけたい
スキルや戦術のメイン練習パート。
所要時間(目安):
●15分程度
実施種目
●新しく取得したい、挑戦したいスキル練習
⑥ G → Games
⑤Activityで練習した技術や戦術を、
より実践的な状況で実施します。
所要時間(目安):
●20分程度
実施種目:
●時間を短縮したゲーム
ハーフコートのゲーム
シチュエーション限定のゲームなど
⑦ E → Evaluate
クールダウンを行いながら、
トレーニングセッションの振り返りをします。
所要時間(目安):
●5分程度
実施種目:
●ストレッチ等をしながら、
セッションの振り返りを行う。
選手たちの”気づき”を
誘導するような質問をする。
以上で60分になります。
上記内容は、中学校の部活動を
イメージしてます。
これは小学生のスポーツ少年団だと、
セッション時間がもう少し短くなり、
内容も、あまり競技特化せず、
前半のRAMPの部分にもっとウェイトを置きます。
身体的な成長とともに心理的な成長も促す
RAMPAGEは、
トレーニングセッションのフレームワーク。
身体能力向上を目指し、
うまく組まれていると思います。
ただ、特にジュニア世代の場合には、
肉体だけではなく、
精神的な成長も促していく必要があります。
特にRAMPAGEは、
心理社会的なカリキュラムとして、
・コミュニケーション
・コントロール
・自信
・集中力
・抵抗力
・存在感
・自己認識
・コミットメント
の8つの項目に注目してます。
ちなみにこの8つの項目は、
オリンピックや世界大会に
出場する競技者が
持っている特性として
定義されています。
指導者は、参加者たちの行動を観察し、
上記特性が発揮できるような
課題を設定していきます。
自信がない選手がいるなら、
小さな成功体験を積み重ねるように、
簡単な課題を設定したり、
コミュニケーションが
苦手な選手がいるなら、
小さなグループに分け、
課題に挑戦させたりします。
まとめ
ジュニア世代を指導する方は、
今回のRAMPAGEを基準に、
日々のトレーニングセッションを
組んでみてください。
小学生なら前半のRAMP部分を
厚めに設定することをお勧めします。
基本的な身体能力や、
基本的な運動スキルが
早く獲得することができます。
身体能力とともに、
精神的な成長も促すと、
子供たちが将来、
活躍できる可能性が高くなります。
競技から離れたとしても、
生涯にわたって活動的になれる。
個人の生活の質の向上につながります!