「休み方」にも方法がある
何もしなくても勝手に疲れていく脳の休め方について書き、シリーズ30万部のベストセラーとなっている『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その方法が、マインドフルネス瞑想。今やアメリカでは、トップエリートたちが次々にマインドフルネス瞑想を取り入れているという。
著者はイェール大学医学部精神神経科で学び、アメリカ屈指の精神医療の現場に従事した後に開業、最先端の治療を取り入れた診療を展開してきた久賀谷亮氏。
日本人にもなかなかわかりにくい「瞑想」への理解を深めてもらおうと、本編が小説仕立てで展開されていくのが、大きな特徴だ。
イェール大学の研究員ナツが、マインドフルネスに詳しい教授のアドバイスのもと、叔父の経営するベーグル店をいかに建て直していくか、というストーリーの中で、「いまここ」から目を離さない大切さや集中力を高める方法、よい睡眠のための心得、ポジティブな感情を自分の中に育てる技術、こわばった身体のゆるめ方、脳の疲れを防ぐ食事、雑念の消し方、怒りへの対処法、苦境でも心の安定を保つメソッドなどが幅広く紹介されていく。そして、スタッフの心が荒み、経営の傾いたベーグル店は再生していく。
ナツは、マインドフルネスを使った「本当の休息」の重要性を強く認識することになるが、教授はこう語る。
これまでアメリカ人もビジネスの方法を追求するばかりで、休息についてはあまりにいい加減にしか向き合ってこなかった、と教授は続ける。だから、誰もが脳に疲れを溜め込み、炎を燃やせなくなっている、と。
そこで、「最高の休息法」であるマインドフルネス瞑想が、アメリカで大きく受け入れられるようになったのだ。
幸福度を高めて「ネガティブな感情」をとかす、ある意外なこと
もともとナツは、京都の禅寺に生まれた。住職をする父に対して、「座禅? 仏教? 瞑想? そんなものでは、人を救えるはずがない」と考えていた。だから、「人の心を癒す科学の最前線」を求めてアメリカに渡った。
しかし、「先端脳科学vs仏教的なもの」という対立構図には無理があることに気づく。今や両者はマインドフルネスにおいて融合しつつあるからだ。ナツは自分が強く求めていたものにたどり着いていたかもしれないということに気づく。
そんなナツに、教授はさらに本質的な問いを投げかける。
ナツは、「でも結局、どれくらいお金持ちになれるとか、どれだけ偉くなれるかが肝心だという結論になるんじゃないですか?」と尋ねる。
そして、幸福度を高める生き方の因子として、教授は「感謝」を掲げる。他人や社会に対して感謝する気持ちを持っている人のほうが、幸福度が高い結果が出ていると語る。脳科学の分野でもこれがデータで示されているという。感謝の気持ちは、怒り、恐怖、嫉妬など、さまざまなネガティブな感情をとかすのだ。
感謝が、組織や人を大きく変えていくのである。
マインドフルネスは、社会や組織も癒す理由
ナツはベーグルの店に何が足りなかったのか、マインドフルネスで瞑想を続けてわかっていく。これが店の再建のための大きな気づきとなる。
感謝とやさしさで、小さなベーグル店は息を吹き返す。そして店内のスペースを使って、マインドフルネスセミナーも始めることにした。発案したのはナツではなく、マインドフルネスの効果を実感した、他のスタッフたちだった。教授はこう答える。
世界のエリートがやっている最高の休息法は、組織も社会も変えようとしているマインドフルネス瞑想だったのだ。最先端の脳科学の手法でもあるのだ。
本書には、本を読み終えたら、すぐに実践できるメソッドがたくさん掲載されている。日々の小さな取り組みが、あなたの脳を劇的に変えるかもしれない。
(本記事は『世界のエリートがやっている 最高の休息法』より一部を引用して解説しています)