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【日本人が知らない】疲れが一瞬で消える「最高の休み方」とは?

1情報が次から次へとあふれてくる時代。だからこそ、普遍的メッセージが紡がれた「定番書」の価値は増しているのではないだろうか。そこで、本連載「定番読書」では、ロングセラーとして読み継がれている書籍のメッセージをご紹介していきたい。第8回はイェール大学で学び、日米で30年以上診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が書いた『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。(文/上阪徹)

Photo: Adobe Stock

なぜ、休んでも疲れが取れないのか?

 疲れがどうにも抜けない、という人は少なくないかもしれない。しっかり休んでいるつもりなのに、なぜなのか。また、集中力が続かない、という人も多い。いろんなことが気になって仕方がない、という人も。

 そんな人たちに驚きのファクトを伝え、シリーズ30万部を超えるベストセラーになっているのが、2016年に刊行となった『世界のエリートがやっている 最高の休息法』だ。

 著者は、アメリカのロサンゼルス郡にあるメンタルクリニックの院長だった久賀谷亮氏。久賀谷氏はイェール大学医学部精神神経科で学び、アメリカ屈指の精神医療の現場に従事した後に開業、最先端の治療を取り入れた診療を展開してきた。そんな久賀谷氏が本書で書いたのが、科学的に正しい「脳の休め方」だった。

 たいていの人は、「休息=身体を休めること」だと思い込んでいます。
 たっぷり睡眠をとったり、リゾート地でゆったり過ごしたり、温泉にじっくりつかったり……もちろん、そうやって身体を休めることも大切です。
 しかし、それだけでは回復しない疲労があります。それが脳の疲れです。
 そう、脳には脳の休め方があるのです。本書ではそれをお伝えしていきます。

(P.1)

 脳疲労は肉体疲労とは根本的に異なる。身体を休めたからといって、脳が休まるわけではないのだ。むしろ、疲労はどんどん蓄積されていく、それが積もり積もって慢性化すると、人生のパフォーマンスは落ちていく。ひどいときには、心の病へと至りかねないのだ。

体を休めても、脳はずっと動き続けている

 アメリカの精神医療は大きく変わってきているという。日本では、精神医療といえば薬物治療が一般的だが、アメリカでは避けられる傾向にあるのだそうだ。

 その背景にあるのは、脳を1つの臓器として扱い、これをダイレクトに治療しようとする脳科学アプローチの発展です。先端脳科学の成果をもとに、TMS磁気治療などの技術革新が進み、副作用のある薬に頼らなくても、心の不調を改善できるめどが立ってきました。(P.2)

 また、カウンセリングの分野での最新トレンドになっているのが、瞑想などを含んだ第3世代認知行動療法だ。瞑想が脳にいい変化をもたらすことが実証的に確認され、実際に久賀谷氏はクリニックで瞑想ベースの治療を取り入れてきたという。

 本書で書かれているのは、この瞑想ベースの方法について、だ。手軽でありながら、かなりの有効性が期待できることが最新の研究動向からわかっているという。

 瞑想と聞くと、ちょっと怪しげなイメージを持つ人もいるのではないか、と久賀谷氏は本書で記す。そんな面倒なことをしなくても、何も考えずにぼーっとすれば、脳は休まるのではないか、と。

 しかし、これだけでは頭は休まらないのである。むしろ、どんどんエネルギーを消耗し続ける可能性すらある。それはすでに科学的に説明されている。

 しばしば言われていることですが、脳は体重の2%ほどの大きさにもかかわらず、身体が消費する全エネルギーの20%を使う「大食漢」です(*1)。さらに、この脳の消費エネルギーの大半は、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という脳回路に使われています。
 DMNとは、内側前頭前野(中略)などから構成される脳内ネットワークで、脳が意識的な活動をしていないときに働くベースライン活動です。自動車のアイドリングをイメージしてもらうとわかりやすいでしょうか。

(P.4)*1 Raichle, Marcus E., and Debra A. Gusnard. “Appraising the brain's energy budget.” Proceedings of the National Academy of Sciences 99.16 (2002): 10237-10239.

 つまり、身体を休めたとしても、実は脳はずっと動き続けている、ということである。

「科学的に正しい脳の休ませ方」とは?

 しかも久賀谷氏によれば、DMNは脳の消費エネルギーの60〜80%を占めているという。脳は、「何もしない」でも、勝手に疲れていくのだ。

 つまり、ぼーっとしていても、このDMNが過剰に働き続ける限り、脳はどんどん疲れていくわけです。
「1日ぼーっとしていたのに、なぜか疲れが取れなかった」という人は、このDMNに過剰な活動を許してしまっているのかもしれません。
 つまり、DMNの活動を抑える脳構造をつくっていかないと、あなたに真の休息は訪れないというわけです」

(P.5)

 疲労感とは、脳の現象にほかならないという。物理的な疲労以上に、まずは脳の疲労が「疲れた」という感じを、自分の中にもたらしているのだ。

 その意味では、「脳の休息法」を手に入れることこそが、あなたの集中力やパフォーマンスを高める最短ルートになるのです。

(P.6)

 そしてこの「脳の休息法」こそが、マインドフルネスだと久賀谷氏は言う。マインドフルネスとは、「瞑想などを通じた脳の休息法の総称」。アメリカでは、これが爆発的に流行してきたというのである。そして、瞑想が「科学的に正しい脳の休ませ方」だと言えるエビデンスが、次々に集まり始めているのだ、と。

 このマインドフルネスについて、脳科学的な知見も交えながら書かれたのが、本書なのだ。しかも、極めてわかりやすく、実践的に。そのために、ユニークな形式が取り入れられている。なんと小説仕立てになっているのだ。

(本記事は『世界のエリートがやっている 最高の休息法』より一部を引用して解説しています)

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター

1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット~不安・不満・不可能をプラスに変える思考習慣』(三笠書房)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。