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翻訳したら好きな歌詞の解釈が変わる話-1

「音楽は世界語であり、翻訳の必要がない。そこにおいては魂が魂に話しかける」
名前だけなら誰でも知っている、あの有名なバッハが言ったそうです。言いたいことはわかる気がします。

でも歌詞は翻訳されます。別にバッハの名言に難癖つけるつもりは毛頭なく、翻訳することもできる、という話です。

童謡、音楽の教科書に載っているような曲、ミュージカルなどは、音に合わせて歌える日本語の歌詞があります。
J-POPでも、日本語でリリースした曲の英語も出すアーティスト、もしくはその逆もいます。歌詞だけなら、YouTubeのMVはキャプションを外国語で表示できるものがあります。

歌詞はいくらでも自由に解釈できます。でも、翻訳するとその解釈の幅が変化するのではないか。というか、あえて変えている場合もあるのではないか。

最近聴く音楽の幅が広がりました、Dhukaです。
以下、私の好きな曲でいくつか日英比較してみた感想です。

1. ポルノグラフィティ

公式SNSで英語の歌詞が流れていたことはありましたが、YouTubeには、外国語キャプション付きのMVはあまりありませんでした。
だって、晴一さんの絶妙な距離感の詩は、日本語の曖昧さを巧みに利用した比喩で成り立つ気がしています。いいよ日本語そのままで。

サウダージ

あの人に伝えて 寂しい 大丈夫 寂しい
Let my love know...I'm lonely, no I'm alright, I'm lonely...

「あの人」は "my love" だそうです。
この曲は女性目線と見せかけて男性目線というのはどこかで読んだことがありますが、この呼びかけは男性から女性ですよね。でも、"my love" は通常「あの人」より「あなた」の意味で使われるのでは?
もしくは、まさか「恋心」の意味で言っているのか。ちなみに「あなた」は普通に "you" でした。

全然関係ないですが、「愛が呼ぶほうへ」という愛を擬人化した曲すらありますよね。

THE DAY

明日はどっちだ THE DAY HAS COME
What will tomorrow bring?
THE DAY HAS COME

明日はどうしようもなく訪れてしまうが、どうなるのか、といった感じでしょうか。「どっちだ」というと明日を探しているように思えます。でも「HAS COME」なので来てるんですかね。
それからポルノグラフィティのタイポグラフィ。この全部大文字の叫びのインパクトが英文中では強烈です。"CRY ON" も。

悪霊少女

1番と2番でサビ前の主語が変わります。

それこそが恋だとは まだ知らなかった
She did not yet know that that was love

それこそが恋だとは 信じたくはない
We don't want to believe that that is love

もともと主語なしで成立していた歌詞なので、どうにでも理解していいのだと思います。個人的には、 少女の母親が少女に言っている様子のイメージです。


THE FIRST TAKEの動画にはどれも英語のキャプションがあって、他には「テーマソング」の "Is your heart trembling with emotion?" がお気に入りです。

歌の話をすると、昭仁さんのはっきりした発音は日本語向きな気がします。でも英語で歌う部分は、昔と比べて今の方がかなり英語っぽいです。ファルセットも今の方が気持ちいいです。
25周年おめでとうございます。

2. ヨルシカ

美しい日本語は日本語のままでいい、というのは私が日本人だからですが。ヨルシカは、キャプションで外国語を表示できるMVがそこそこありました。

春泥棒

花開いた今を言葉如きが語れるものか
To this season in bloom, I doubt words can ever do justice.

この曲で一番好きな歌詞です。 この季節を切り取って言い表すことなどできない、というニュアンスですよね。もしかすると、英語の "doubt" "ever" の方が、日本語の「如き」「〜ものか」より弱いでしょうか。そんなことないのかな。
言葉で語っているかはさておき、花が舞う様子が美しく表現されている曲だと思います。最後の花が散る音など、「あ、散った」とわかります。

思想犯

カラスの歌に茜 この孤独よ今音に変われ
The crows' song is dyed a deep red,
and I plead for this lonliness to transform into song.

さよなら、君に茜 僕は今、夜を待つ
The word "goodbye" dyes you a deep red,
and, now, I wait for the night.

n-bunaさんは「〇〇に△△」という言葉をよく使っている印象です。「に」の用法はたくさんありますが、花札と同じで(?)「と」くらいの意味、つまりここでは against the sunset かと思っていました。
カラスの歌は真紅に染まり、その上「さよなら」が「君」まで赤く染めるらしいです。それも全部含めて、「さよならの後の夕日が美しい」のでしょう。

ところで、「晴る」の2番のAメロ冒頭は "Against the sunny sky" でした。同じ曲の "Bloom and blame it on the sunny sky/spring." の響きが好きです。
韻と言えば、「盗作」の "And the true value eludes the crowd, which flocks like crows." は「烏合の衆」がそのままですね。

藍二乗

歌詞ではありませんが、解説がありました。

A more literal translation of the title would be "Indigo Squared." The word for "indigo," 藍/ai, sounds like the number "i,"; i2 is -1. It’s also homophonous with 愛 (love) and 哀 (grief).

拙訳:
曲名をより直訳にすると "Indigo Squared" となる。「藍 (Indigo)」は数字(虚数)の 「i」のような発音で、iの二乗は-1である。「愛 (love)」と「哀 (grief)」も同じ発音である。

読むと藍が深まり哀が増します。これ日本語でも同じ解説があるのでしょうか。ちょっと気になりますが、考察はプロに委ねます。


このネタ尽きないので、今回書けなかった分はまたそのうち記事にします。


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