見出し画像

「ブラーフマンの知識の源としての聖典」(1.1.3)/シャンカラ註解『ブラフマ・スートラ』


はじめに

『ブラフマ・スートラ』の註解をしているシャンカラ師は、初代シャンカラ(Ādi Śaṅkara)となります。「神の御足の教師」として知られ、アドヴァイタ・ヴェーダーンタ哲学の教義を強化した最初の哲学者となります。

シャンカラ師は、正統的なバラモン教の歴史の中で初めて僧院を建立した人物と言われ、東西南北に4つの僧院を創設し、4人の高弟をそれぞれに配置しました。

その4つの僧院の法主の座は、現在は「シャンカラ・アーチャーリヤの座」と呼ばれ、ヴェーダーンタを体得した人でないとその座につけないので、空座になることも多いとのことです。

シャンカラ師は、講話と他の哲学者との議論を通して自身の教えを伝達するため、インド各地を旅行したそうで、「アートマンが実在する」と主張し仏教の「魂も自我もない」との主張とは真逆だったことから、激しい論争が繰り返されたとのことです。

また、シャンカラ師は、今後、仏教の多くの教義を最も直接的な批判としてこの註解書の中で見られると思います。仏教だけでなくサーンキヤ哲学なども片っ端から論破しています。

シャンカラ註解『ブラフマ・スートラ』第一篇第一章三節

表題3 ブラーフマンの知識の源としての聖典(ブラーフマンについての智慧の源なる聖典) 

ブラーフマンが宇宙の源であることを示す過程で、ブラーフマンが全知全能であることが暗示された。これを確認するために、格言家は次のように述べている。

なぜなら、聖典の源だからです。

3節(ブラーフマンは全智である)なぜなら、(それが)聖典の源であるからである。/ブラーフマンは諸聖典の源であるゆえに、全智なる存在である。

ブラーフマンは、Rg-Veda(リグヴェーダ)などのような偉大な聖典(シャーストラ)のヨーニ(すなわち、物質的で効率的な原因)であり、それらは、それ自体が(様々な種類の)知識の源である他の聖典(*51)によって補足され、ランプ(lamp/光明)のように万物を明らかにし、ほとんど全知全能(*52)である。

(*51)scriptures:神話、論理学、宗教的・社会的義務に関する論考、siksa、kalpa、vyakarana、nirukta、chandab、jyotisに関する著作。

(*52) omniscient:全知全能ではなく、マーヤの中にいる。

『ヴェーダ』や『ヴェーダ』のような聖典は、あらゆる善良な資質を備えているがゆえに、全知全能のお方以外から生まれることはあり得ないからである。

というのも、多種多様な主題を扱う聖典の出所となる人物は、その聖典そのものよりも、より多くの知識を有しているということは、この世界ではよく知られた事実だからである。

例えば、パーニニや他の人々から発せられた文法などは、彼らに知られた主題の一部に過ぎない。

その偉大な存在が絶対的な全知全能の存在であることは言うまでもないが、その存在からリグヴェーダ(多くの枝に分かれ、神々、動物、人間、カースト、人生の段階などに分類する源となっている)などが生まれ、あらゆる知識の源となっている、

その存在からこれらのヴェーダが生まれるのは、人間の呼吸のように、まるでスポーツのように、何の努力もなしに起こるので、ヴェーダのテキストに「リグヴェーダ、(ヤジュルヴェーダなど)と呼ばれるものは、この偉大な存在の呼気にすぎない(Br. II. iv. 10)

あるいは、この格言の意味は、聖典は(知識の)有効な手段である。

3節 聖典はその知識の有効な手段であるため、(ブラーフマンは他のいかなる情報源からも知ることができない)。

先ほど列挙したリグヴェーダなどの聖典は、このブラーフマンの本性を知る(ヨーニ)ための有効な手段である。暗示されているのは、ブラーフマンは、有効な知識手段である聖典のみから、この宇宙の白樺などの源として知られているという考えである。この聖典の文章「これらすべての存在が誕生するもの」(Tai.III. i)は、前の格言の下で引用されたものである。

反論:この格言を再び使う必要があるでしょうか?前の格言の下で、このような聖典を引用することによって、ブラーフマンは聖典から知るべきものであることが示されたのですから。

ヴェーダンティンの答え:聖典は前の格言で明確に言及されていなかったので、前の格言で「そこから来たもの」(B. S. I. i. 1)などと(ブラーフマンを知る手段として)推論だけが提示されたのではないかと疑われるかもしれない。その疑念を払拭するために、この格言では「(ブラーフマンは他のいかなる手段によっても知られることはない)なぜならば、経典がその知識を得るための有効な手段だからである」と述べている。

最後に

だいぶ、私訳作業も慣れてきて、スピードが速くはなったのですが…

自宅にて、椅子の上にノートパソコンを置いて、座っての作業なので、集中しすぎて永座りで少し腰を傷めましたが、セルフケアをしながら続けていきます!

四節はかなり長そうです(汗)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?