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自然と人との調和という使命をもつ、種の菓子ブランド「SHUKA」のデザイン。

種と糖だけでつくられたお菓子「SHUKA」。「自然の恵みに手を添える」をコンセプトにした、”砂糖漬け”と呼ばれる古来の食品保存技術を活かしつつ、甘納豆において一般的である"豆"に加え、カカオやピスタチオなどの素材も取り入れた、新しいジャンルのお菓子ブランドです。

なぜ、SHUKA(シュカ)という名前になったのか。なぜ、カラフルなパッケージか。なぜ、このロゴタイプなのか。今回はそのお話を少しさせてください。

勝山浩二 Coji Katsuyama | monodachi
合同会社オフィスキャンプ デザイナー/アートディレクター。1986年生まれ、大阪市出身。グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングなどを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。木材産地で地域にねむる林業や木工産業、農業、地域に関わる起業家たちと共にプロジェクトを進行中。


「甘納豆」という言葉がもつネガティブイメージ


はじめにお話を伺った時、恥ずかしながら「甘納豆」という和菓子のジャンルのことをあまりよく知らなかったため、甘い納豆か何かだろう…と思っていました。
ところがどっこい、じつは発酵食品である納豆とはまったく関連性がありません。和菓子の業界的には比較的新しめのお菓子で、はじめは浜松の名産「浜納豆(糸ひかない塩辛い納豆)」に似た見た目から、甘いバージョンということでダジャレ的に名付けられた名称だったそうです。そのため、納豆ではないのに納豆の仲間と思われているが故に、お菓子とかけ離れて思われたり、苦手な人たちから距離を置かれたり、自分たち世代の人たちに届かない…という悲しい現実がありました。

初めて工場を訪れた際に、まずはそこのチャンネルを合わせることを行いました。「甘納豆」という言葉を使わずに、これからコミュニケーションしていく必要がある。むしろ、新たなお菓子のジャンルをつくりにいこう、と。

それが、種のお菓子。


種をそのまま食べるという初めての感覚


そうです。アレと一緒です。

種は(ここでいう種は、豆やナッツも含むもの)生命の卵であるため、たくさんの養分が詰まっています。そのため、SHUKAは種のもつ栄養や生命力をまるごといただける、まるで仙豆のような食べ物です。

もちろん、種はそのままでも食べることができるのですが、京都で100年近く「甘納豆」をつくり続ける斗六屋は、素材の種と糖分のみを使い”砂糖漬け”という古来の食品保存技術を用いてつくっています。

「種」が本来持っている色や形、食感までも活かすために、元来の「甘納豆」になっていないか?新しい「種の菓子」になっているか?と、何度も何度もサンプルをつくり研究を重ねました。


自然の恵みに手を添える


自然そのままの状態から、尊敬と感謝の想いをもって、少しだけ人の手を添える。それによりおいしくいただくことができる。

ブランドコンセプトは「自然の恵みに手を添える」。

さらに、これらをトンマナとして分解して、「インテリジェンス」「ナチュラル」「添える」の3つに定めました。

パッケージを考える時も、印刷物も、店舗も、ユニフォームも、チーム内で話し合う時も、それらの共通言語があることによって、「これはSHUKAらしいか?」と戻る場所ができました。つまり、「知性は感じられるか?」「環境への配慮はされてるか?」「添えてるか?=やり過ぎていないか?」と何度も立ち止まり、振り返れる大切な場所です。


自然と人の調和を目指したロゴデザイン


自然の恵みそのままである「種」。それに人の手を添えた「菓子」。 素直に、2つが接合した造語、種と菓子でSHUKA(種菓)というネーミングになりました。

そのまま、この2つの考え方を、フォントにも反映させます。

文字、という文脈において、より自然に近い(セリフやうろこ、ひげがある)セリフ体と、産業革命後の印刷用書体と発展したサンセリフ体。その2つのかたちを混ぜ、サンセリフ体(ゴシック体)でも、セリフ体(明朝体)でもあるように見えるものを、SHUKAのロゴタイプにしました。

添えたタグライン「SEED CONFECTIONARY」。直訳すると種のお菓子。


種を暗に表現するパッケージ


パッケージの仕様は一般的な「身と蓋」。自然界の法則を借りて、「種と果実」の関係性を参考にしました。

果実は、種を遠くたくさん運んでもらえるように色づき、虫や鳥たちを惹きつけ見つけてもらう。季節に合わせて実を実らせる。その役割を「蓋」に。

種は、実が爆ぜるように開く「身」。

もちろん、コストやロットのことなどを踏まえて、蓋はカラーの種類がたくさんある紙の貼り箱、身は全種共通型のクラフト紙、最終的にこのカタチになりました。


種の標本のようなキービジュアル


メインのキービジュアルは食卓の演出や食べるシーンではなく、種そのものにフォーカスし、種をそのまま置いて並べた写真。まるで種の標本のような、お菓子のビジュアルとしては見たことのない見え方を模索しました。
撮影中、このカットは「惑星」と呼ばれていました。

また、ありえないほど種に寄ったカットもあります。カカオをこんなにも間近でみたことありますか?種の中に宇宙を感じられずにはいられません。

僕はかつてこれほどまで種について考えることはありませんでした。きっと斗六屋が掲げた「自然と人との調和」は、そうやって1人ずつの想いが少しずつ変わっていく世の中で実現されるのでしょう。

それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。




Client: Torokuya llc
Consultant: Nakagawa masashichi shoten
Creative Agency: OFFICE CAMP llc
Art director/Designer: Coji Katsuyama
Photographer: Haruhi Okuyama
Package: Mutoyotado


https://shuka-kyoto.jp

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