自分の手で時間をかけてつくる家具は、どんな名作家具を買うよりも愛着がわく「Do kit yourself」。
同世代だし、よく一緒に遊んでいる、奈良県東吉野村の木工ファーム「維鶴木工」。彼らの新たな試みである、吉野桧の家具キットの新ブランド「Do kit yourself」(DIYの原文に1文字を足した造語)。
なぜ、10時間かけてDIYする家具キットをつくることとなったのか。なぜ、こんな名前になったのか。今回はそのお話を少しさせてください。
良質な木材、吉野ヒノキ
木肌が美しく、香りが良く、柔らかく肌あたりもよく…、なによりも日本の暮らしに馴染む良質な木材、吉野桧(ヒノキ)。古くから家屋の建材、大きいものは寺社仏閣の柱材、と日本の暮らしのたくさんのところで用いられてきました。
それが故に、こだわりの家具にするとどうしても材料費がかかり、一般流通させるには価格が高すぎるという、家具作家あるあるがありました。
若手木工家が集まるエリア、吉野
そして、その良質な桧(ヒノキ)を生み出す産地として、昨今、吉野エリアには木工作家を目指す若者が少しずつ集まりだしています。しかし、先述のとおり、流通価格に合わないモノを作り続けていては、彼らも生きていけません。技術を学びながらも作り続けれる仕組みが必要になっていたのです。
彼らのメインの仕事は、オーダーメイド家具の製造(下請け業)。つまり、自分たちで自分達の売上をコントロールできない状況にあったのです。
それは、売上・時間ともに偏りがあり、仕上がりが経験値に左右されすぎるため、ビギナー職人の育成が難しい状況です。
この状況をなんとか打破しなくては、新しい職人がローカルで育ち生き残っていけません。
限界まで高まった日本の生活水準
みなさんは、自宅の家具はどこで買いましたか?IKEA/ニトリ/無印良品 で大体の家具は揃います。オンラインショップで名作家具も買えます。物が手に入らなくて困ることはほぼ無くなりました。日本の生活水準が成熟してきたんでしょう。つまり、買うこと/所有では満たされない欲求段階へと移行し始めているんです。
コロナ禍で、ホームセンターの株価爆上がりしたことでわかるように、在宅時間が急激に増えて、生活の見直しがはじまりました。人々がQOLを求めるようになりました。(料理/家事/農業/DIY/編み物/陶芸しがち)
DIYに限ったことではありませんが、勉強も、料理も、スポーツも、趣味事も、SNS/Youtube発達によるハウツー動画がたくさんあり、センセーがたくさんいます。今後さらに自作やDIYのレベルが上ってくることは明らかです。
人々は、次のステップアップを求めています。
Do kit yourself
そこで、作られたのが、この「Do kit yourself」。吉野桧の良質な材料と、基本加工のみを木工作家が行い、あとは自宅に届いたパーツをユーザーが組み合わせてペーパーコードを編み(所要時間6〜10時間程度(!!))完成させるというDIYキットです。
基本加工のみのため、中量の生産に向き、コンパクトにすることができるため梱包や配送のコストも下げる事ができ、若手作家にとっては加工の技術の修練にもなる、そして、価格も抑え流通する事ができます。先に挙げていた様々な問題がクリアになってきました。
・スキマ時間の有効活用
・安定供給、売上の安定
・ファーストレベルの技術の習得
・小売に頼らない商品
ブランドメッセージ=ブランド名
今後シリーズ展開を続けていき、商品が増えていくということ、数多ある木工キットブランドとの差別化という点から、以下の3つの要素を抽出しました。
・覚えやすい(聞き覚えのある)言葉
・キットブランドだとわかる言葉
・ブランドメッセージ=ブランド名
また、我々のような弱小新参ブランドは、生産力があるわけでもなく、大きな取引先もなく、おのずと自らがプロモーションし自らが売っていくスタイル<D2C>しか方法がありません。逆手にとれば、SNS→オンラインショップ→メール/メッセージ→梱包箱→取説→Youtube…と、何度も繰り返されるそれぞれの接点で、何度もイメージの刷り込みできる。ブランド名が何度も繰り返されることで、ブランドのメッセージも何度も伝えられる。
そう考え改め、少しのユーモアを足して、ブランドメッセージをそのままブランド名にすることにしました。
Do kit yourself
きっと、あなたの大切なものになる
何よりも、自分の手で時間をかけてつくるので、どんな名作家具を買うよりも愛着がわく。
自分でつくったものは大切に使う。
きっと、あなたの大切なものになる。
Do kit yourself
Client: Izuru
Art director, Designer: Coji Katsuyama
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