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智頭の観光は、場所から暮らしへ。智頭町観光案内所の名前が「暮らし屋」の理由。

鳥取県智頭(ちづ)町。岡山と兵庫の2県にも面した県境に位置するその町の魅力を発信する、智頭町観光協会。そのリブランディングを行う際に、店舗名称を「暮らし屋(くらしや)」と名付けました。その地の観光案内所の名称なので、通常であれば「智頭〇〇」とか「〇〇CHIZU」などといった名称になりがちだと思いますし、地域の産品を紹介するだけのお店ならば、それが適正解な気もします。
なぜ、観光案内所の名称を「暮らし屋」としなければならなかったのか。今回はそのお話を少しさせてください。

勝山浩二 Coji Katsuyama | monodachi
合同会社オフィスキャンプ デザイナー/アートディレクター。1986年生まれ、大阪市出身。グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングなどを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。木材産地で地域にねむる林業や木工産業、農業、地域に関わる起業家たちと共にプロジェクトを進行中。




自分たちの資源は何なのか、を見つめ直す


鳥取県智頭(ちづ)町。岡山と兵庫の2県にも面した県境に位置するその町の魅力を発信する、智頭町観光協会。いわゆる普通の山間部地域の観光協会とは、思い浮かべてもらったとおりの、物産品や土産、観光スポットを案内するものです。山や川の自然がたくさん、おいしい野菜がたくさん、子育て環境に良い…などなど。それらの多くと同じで、智頭も特殊な伝統工芸や産業があるわけでも、野菜果実の名産地でもありませんでした。(智頭杉は有名!)

いつしか、何ヶ月も通い、役場や観光協会の方、町の方たちと話し、お酒をくみ交わし、カラオケ行って、町民のお宅に民泊で泊めていただいた時に僕たちが感じたことが、この観光協会の骨格となりました。

民泊先の人たちと一緒に作った晩御飯
智頭の産品


智頭の観光は、場所から暮らしへ


智頭の人たちの暮らしは、とてもプリミティブ。雪多い地域のため、冬支度のために保存食品がたくさん伝わっていたり。農家や林業家さんたちが冬の隙間仕事のための、編み物が盛んだったり。宿場町だったため、発酵食品が盛んだったり。

この地域は、じつは、そんな暮らしそのものこそが、価値なのではないかと。そして、そこの観光協会は、観光場所や物産品を案内するだけの場所ではなく、先祖代々伝わる、地域に根付いた「暮らし」そのものを伝えることこそが、その役割なのではないかと改めて見つめ直しました。

キャッチコピーは「智頭の観光は、場所から暮らしへ」。この言葉と思いをたくさんの人に知ってもらいたいので、まずは名前はそのまま「暮らし屋」と、智頭町観光案内所の名前を変えました。

ネーミング考案のブレスト


自分たちの「暮らし」が誇りになるためのシンボル


「暮らし屋」という名称(=コンセプトの骨子)が決まってから、次々といろいろなことがスムーズに決まっていきました。

デザインとしては、昔から日本にはたくさんある漢字屋号の文字をそのまま「暮」に、「山」冠を被せた、ロゴマークにしました。
暮という字の上にある屋根は、いわゆる屋号「暮らし屋」の「屋」であり、特徴的な観光案内所の建物の屋根を表すものであり、智頭町が誇る杉の山です。
また、智頭という町は暮らしが支えているといった比喩的な意味を、この山冠に込めました。普遍的なものと挑戦的なものが入り混じったマークです。

これは、ブランドでも、店舗のロゴマークでもないし、観光案内所のマークでもありません。智頭町がこれまで守ってきた歴史や、先人たちの知恵や恵み、そういったこれまでひっそりと続けてきた「暮らし」が、じつは本当に魅力的で、智頭の価値なのだと。
町の人たちが自分たちの「暮らし」に誇りをもつことができる、そのための指針なのです。

それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。




Client: Chizu Town General Information Center
Creative Agency: Office Camp llc.
Creative Director: Daisuke Sakamoto
Art director, Designer: Coji Katsuyama
Cover photo: Kazutoshi Fujita

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