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『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』アダム・ドライバーの反応する演技の話。

ステイホーム中に自宅で観た映画の演技について語るシリーズ、今回はようやく観れました!アダム・ドライバー主演『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』の演技について。

この映画の監督はモンティ・パイソンの天才アニメーターのテリー・ギリアムで、彼はじつはこの映画を2000年に一度クランクインして、でも撮影中の様々なトラブルで挫折してるんですね。そのトラブルとは・・・まずロケ地で戦争が始まったことw、水害でセットや機材が流されたこと、そしてドン・キホーテ役の俳優が椎間板ヘルニアで馬に乗れなくなったこと・・・。その散々な顛末は『ロスト・イン・ラ・マンチャ』というドキュメンタリー映画になっていて非常に興味深いのですが、この2000年版の主演俳優がジョニー・デップなんですね。

『ロスト・イン・ラ・マンチャ』で彼が演じているシーンがいくつか見れるのですが、当時のジョニデといえば『ショコラ』やら『パイレーツ・オブ・カリビアン』の頃なので脂が乗ってるというか、やっぱとんでもなく魅力的なんですよ。
そのジョニデが演じるはずだった主役トビーを、今回の2018年再チャレンジ版ではアダム・ドライバーが演じているだなんて、最高すぎませんか? つい見比べちゃいますよね!当然(笑)

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映画前半、アダム・ドライバー演じるバブリーなCM監督のトビーがスペインで仕事中に、若い頃に撮った自主製作映画のロケ地を見に行って、どんどん摩訶不思議な事件に巻き込まれてゆくくだり、ドライバーの演技が最高にステキです。

彼はインタビューで「事前の準備や考えというのはありません。ギリアム監督や周りのキャストを信じるしかないのです。脚本は読みましたがそれ以外の準備はしていない。できる限り用意ができていないようにしています」って言ってる通り、超すなおに環境や状況を受け入れて反応するので、演技が瑞々しいんですよね。
しかも今回ちょっとおバカな役作りで臨んでいるので、そのピュアな瞳がキュート。なのでギリアム映画の主人公としてはありえないくらいナチュラルな演技で、すごく見やすかったのです(笑)。

素晴らしかったのですがコレ、ジョニデの方がきっとギリアム映画の主人公らしいブラックユーモアが効いた感じに演じたんじゃないかとも思うんですよね。

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『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『シザーハンズ』での演技とかを見れば分かりやすいのですが、ジョニデはドライバーみたいに感覚的に「準備せずに反応」して芝居をするのではなく、その場で起きていることに対して一度考えて、解釈して、それから意図的な(観客に見せるため)「準備された反応」を芝居するスタイルなので、リアクションがコミカルで大きいんですよね。

2人の演技の具体的な違いで言うと、それは表情が全く違っています。 ジョニー・デップの反応は結論が出ちゃってるんですが、アダム・ドライバーの反応は結論が出ないまま意識が漂っている。 意識が漂っている方が変化に富んでいるので、演技は瑞々しく見えるわけです。

この「準備された反応」というジョニデの演技ってドライバーのよりちょっと古い演技になるんですが、それはある意味すごくモンティ・パイソンの演技っぽいw。なのでジョニデファンとしても、パイソンファンとしても、ジョニデ・バージョンの主人公トビーをがっつり見てみたかったなーと思うのです。

そう。やっぱりモンティ・パイソンファンとしては新しいギリアム映画が公開されるたびに、やっぱり毎回いろいろ考えちゃうんですよね。
どの役を見ても、あーこれはジョン・クリーズが演じるべき役だった、この役の狂気はグレアム・チャップマンっぽいなあ、このおばさんはテリー・ジョーンズの方が10倍おもしろく演じるでしょ、とか。パイソンメンバーが演じてたらもっともっと面白くなってたのに!とか思ってしまう(笑)

その点でいうと今回のドン・キホーテ役は『未来世紀ブラジル』のジョナサン・プライスで、演技法がかなりパイソンのテイストに近くて「安定の~」って感じだったんですがw、やはりギリアム映画を観ると、モンティ・パイソンがいかに俳優集団として優秀だったかを再認識してしまいますねー。

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あ、ここから盛大にラストのネタバレしますので気を付けて(笑)

今回のアダム・ドライバーの芝居、映画前半のトビーが「凡庸な人物が非日常的な世界に翻弄されて右往左往する」くだりはバッチリでした。超面白かった。
残念だったのは映画後半の「その人物が非日常の世界の中で狂気を発動してゆく」くだり・・・あれはおそらく「アダム・ドライバー版のドン・キホーテ」というトビーとは別人格に演技を切り替えて演じていると思います。全然別人でしたから。・・・でもここはそうではなくて、トビーをそのまま引きずったままドン・キホーテの狂気をまとっていって欲しかったのです。

CM監督としてのトビーの中に消え去っていた・・・若く、夢を追いかけて自由に生きていた自主製作監督のトビーそのもののドン・キホーテの演技をしていたら・・・それを当時の自主映画のヒロインだった女の子が看取るシーンは、時空を飛び越えて感動的なラストになったと思うのです。。。

アダム・ドライバーはやはり彼自身が確信持って感じられるところに「準備せずに反応」して演じるタイプの俳優である点が素晴らしいところなのですが、狂気を演じるってそこから逸脱してゆく作業なので・・・ようするにおそらくシームレスに非日常にジャンプしにくい俳優でもあるんですよね。
このあたりはやはり2000年前後のジョニー・デップの方が得意分野で、彼だったらきっと超切なく非日常にジャンプしてくれたことだろうと・・・ああ、やっぱ完成した2000年版も見たかったなあ!

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とまあアダム・ドライバーの素晴らしいバージョン、それと脳内で勝手に生成されたジョニー・デップ・バージョンの2本分の演技が楽しめる(笑)この映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。 ギリアム映画としてもここ最近の作品としてはベストな仕上がりだったのではないでしょうか。アマプラで観れます。オススメです。

しかしそろそろ映画館で新作映画を見たいですねー。次回はきっと!

小林でび <でびノート☆彡>

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