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困ったときは頭をかかえよう




    師走になっても寒くない日が続いている。薔薇が咲いていても、冬薔薇なのか、まだ秋薔薇と呼ぶべきなのか、よく分からなくなる。さぞかし地球ガイアも頭をかかえているのではないか。

話は飛ぶが、プロサッカーの試合を見ていると、シュートを外した選手が頭をかかえて、悔しがっているシーンをよく見る。

イングランドプレミアリーグでは、ホームチームの選手が決定的なチャンスを逃すと、スタジアムを埋め尽くす数万人の観客全員が総立ちとなり、頭をかかえて嘆く。これはこれでなかなか見事な光景に見えてくる。

私たちもまた思い通りの結果にならない時、悩み事がある時、どうしたらいいのか分からず途方に暮れる時、混乱した時などにも、頭をかかえてしまうことがある。

いったいこのジェスチャーは何を意味しているのだろうか?



https://www.sankei.com/photo/story/expand/160428/sty1604280010-p1.html
https://soccer.sports.smt.docomo.ne.jp/wc2018/photo/detail/0404/
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2021/06/30/gazo/20210630s00002029406000p.html
https://soccer.sports.smt.docomo.ne.jp/wc2018/photo/detail/0843/
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2021/08/02/gazo/20210802s00002000474000p.html
https://akatonbo02.hatenablog.jp/entry/2017/08/19/143034
https://today.line.me/hk/v2/article/Xv7amw



思わず頭をかかえてしまう訳


頭をかかえる時、こめかみと目の奥あたりに凝縮された強い想いを感じる。時には力を込めてぎゅうっと目を閉じたりもする。

悔しいー!
ああ、なんてこった!
うっそー!
信じられへん!
こんなはずじゃなかった!
何それー!
見たくない!
勘弁してくれよ、まったくもー!

その背後にある想いは人それぞれだ。
さらにより強い感情が湧き上がる時には、このエリアにある涙腺から涙があふれだして止まらない。
こういう時は思い切り泣くに限る。
我慢するのは絶対ダメ。

実はこのエリアを支えているのが「蝶形骨ちょうけいこつ」と呼ばれる一つの骨。
名前の通り、蝶が羽根を広げているように見える。
顔の奥に「ガンダムの顔」か「ベネチアンマスク」をつけているような構造にも見えてくる。
よくもまあ、創造主はこんなヘンテコな形の骨を作ったものだと感心する。

この骨の上には眼球や脳下垂体が収まり、その奥の方には意識の座と呼ばれる松果体がある。人間存在の最重要器官がここに集中している。

頭を抱えるというジェスチャーをする時、実際はこのエリアを守ろうとする無意識が背後にあるのではないかと思う。

蝶形骨
Wikipediaより引用



蝶形骨は頭の中心に君臨する


蝶形骨の英語名はSphenoid bone(スフィノイド・ボーン)。
「くさび形の骨」という意味で、1732年から使われている。
日本では1944年に日本解剖学会『解剖学用語』において、蝶に似ていることからこの用語が選定された。

頭蓋骨とうがいこつの全体は、18種類28個の骨が立体的パズルのように複雑に組み合わさって構成されている。

頭蓋骨の図を外から見た場合、下の二つの図のように、蝶形骨はいずれもピンク色の部分だけで、ほんの僅かしか表に出ていない。

しかし、本体は左右のこめかみの間、目の奥を横に貫いて、頭蓋の中心部のやや前寄りにある。

蝶形骨の形が複雑なのは、頭蓋骨を構成するこれらの骨のうち、何と、9種類14個の骨と接続しているからだ。

1:前頭骨、2:鼻骨、3:頭頂骨、4:側頭骨、5:蝶形骨、6:涙骨,7:頬骨、8:篩骨、9:上顎骨、10:下顎骨
Wikipediaより引用 以下同じ
1:前頭骨、2:頭頂骨、3:鼻骨、4:篩骨、5:涙骨、6:蝶形骨、7:後頭骨、8:側頭骨、9:頬骨、10:上顎骨、11:下顎骨




蝶形骨に接続する骨


蝶形骨が接続している骨はほぼ頭蓋骨全体に及ぶ。蝶形骨がいかに中心的な存在であるかが分かる。

後頭骨こうとうこつ
Wikipediaより引用    以下同じ
鋤骨じょこつ
篩骨しこつ
前頭骨ぜんとうこつ
頭頂骨とうちょうこつ(左右)
側頭骨そくとうこつ(左右)
頬骨きょうこつ(左右)
口蓋骨こうがいこつ(左右)
上顎骨(左右)



頭蓋骨にはすべて可動性がある


ところで人体の骨の数は、新生児の場合、約350個。これが成人になるにつれ、部分的に骨と骨とが融合する結果、206個になるというのが定説。

頭蓋骨の表面には「縫合ほうごう」と呼ぶいくつものもギザギザの線があり、西洋医学では、この部分が成長と共に融合し、固く閉じているというのが一般的通念となっている。

しかしながら、実際はこの縫合を境目として、それぞれの骨はごく微細に分離し、独自の可動性を持っている。

可動性、つまり「遊び」があるために、ズレや歪みが生じた場合、バランスを回復し、脳の機能を維持する為の柔軟性を保つことができるのだ。



脳脊髄液の干満のリズム


可動性の背景にあるのは、脳の中心部で生産された脳脊髄液が、流れたり、止まったりを繰り返す干満のリズム

脳の中心部「第4脳室」で生産された脳脊髄液は「第3脳室」へと送られ、そこから脳全体と脊髄へ、ポンプのように押し出され、常時循環している。
脊髄の下端近くまで送られると、再び脊髄内を上がり、第4脳室まで戻る。

脳脊髄液の役割は、脳と脊髄内部の機能を維持するための潤滑だ。

1分間に6~12サイクルというリズミカルな流れは頭蓋内のみならず、身体のあらゆる部位が膨らんだり、縮んだりすることに影響が及ぶ。

頭蓋骨は、この干満のリズムに合わせて、それぞれ独自の方向性をもって動いている。




頭蓋骨の可動性によって脳は守られている


蝶形骨はそれらの中心に位置するが故に、頭蓋の強度とバランス、そしてそれらの機能を総合的に保つ上での中心的な役割を担う存在だ。
この縫合の役割を見てみよう。

縫合
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A0%E7%8A%B6%E7%B8%AB%E5%90%88

この縫合のギザギザの線は、橋にある「遊間」と呼ばれるギザギザの隙間の役割に似ている。

橋の遊間は気温変化や乾燥による収縮、或いは地震時の移動による橋の歪みを吸収する役割を持つ。

頭蓋骨の縫合は、脳内と脊髄内を循環する脳脊髄液の干満によって起こる脳内の圧力変化を緩和し、調整する役割があると考えられる。

もしも頭蓋骨全体が固く接合していたとしたならば、脳内で繰り返される圧力変化の影響を頻繁に受けてしまい、脳内の組織は安定した機能を維持できないだろう。

頭痛とは、このような状態の典型的な症状であり、橋の遊間が閉じて動かなくなる状態に似ている。頭蓋骨の可動性を取り戻すだけで、たちどころに頭痛は消えてしまうこともある。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10271846070




頭蓋底


蝶形骨はそのすぐ後ろにある後頭骨と接続してセットとなり、脳全体を支えるお皿のような役割を持つ「頭蓋底」を形成する。

蝶形骨には、トルコ鞍と呼ばれる馬の鞍に似た形のくぼみがあり、ホルモンの司令塔「脳下垂体」はそこで支えられている。

後頭骨
Wikipediaより引用 以下同じ
蝶形骨

後頭骨には大きな穴が開いており、そこから下に脊椎が伸びている。

後頭骨は、言わばキャットタワーの頂上の皿のようなものであり、にゃんこにとってはそこが一番寛ぐ場であるのと似て、この頭蓋底が安定していれば、精神的な安定感を得ることができる

また蝶形骨を木造家屋の構造に例えると、はりのように頭蓋内の横方向を支える役割を担うということが分かる。

これに対して、脊椎は大黒柱に相当する。

まとめると、蝶形骨は梁、脊髄は大黒柱、頭部は屋根裏全体、部屋は内臓が収まるスペース、仙骨と骨盤が床、という基本的な構造に置き換えて捉えることができる。


梁と大黒柱によって出来上がる安定した空間
https://densho-sha.co.jp/170812_y.html




蝶形骨の役割


このように複雑な構成の中心的な位置に君臨する蝶形骨の役割について、いくつか代表的な事柄をまとめてみよう。

①脳全体を支える受け皿

②脳下垂体を収納し、ホルモンバランスを整えることに貢献する

眼窩がんかの底部に位置し、眼球、視神経、血管、外眼筋などを収納して、目の働きに影響を及ぼす。蝶形骨の可動性を高めることで、目の働きがよくなる

④後頭骨と共に、松果体の機能を支える。松果体はメラトニンを分泌し、体内時計をコントロールし、寿命に影響を与え、また認知機能や、学習能力、創造性などに影響を与えると言われている。

松果体(中心の赤い点)
Wikipediaより引用

⑤蝶形骨は左右のバランス感覚を司ることに影響する。蝶形骨のバランスが狂うと、すぐ上にある側頭骨と内耳に影響を与え、平衡感覚を失い、めまいを起こしやすくなる。

⑥仙骨と蝶形骨は下半身と上半身のそれぞれの左右のバランスを司る鍵であり、その二つは連動して、心身のバランスを取る要となる

余談だが、ボクシングでこめかみにパンチがクリーンヒットすると、たった 一発でダウンするのはこのためだ。
こめかみは人間の7カ所ある急所の一つ。
護身術でも、こめかみに対して垂直に拳を打ち込むことができれば、腕力の弱い女性でもアホな男をぐらつかせ、逃げる隙をつくることができる。
ちなみに他の6つは、みぞおち、喉仏、人中(鼻と口との間のくぼんだ部分)、乳様突起(耳の後ろ側にある突起した骨の部分)、顎、金的。

http://bellicoseboxing.blog.fc2.com/blog-entry-33.html
ボクサーはこめかみのガードを再優先にする。
ボディは筋肉を鍛えて守ることができるが、こめかみは鍛えることができない。




困ったときは


頭蓋骨の可動性を高めるという、たったそれだけのことで、脳はその働きを活性化させる。その効果は全身に及ぶ。
とりわけ蝶形骨の存在は身体のみならず、感情や意識のレベルにも深く影響し、心身のバランサーという役割を果たしているように思う。

冒頭部分で述べた、サッカー選手が頭を抱えるジェスチャーは、自然と手が蝶形骨を包み込むことによって、精神的な安定を素早く取り戻し、気持ちを切り替えることを無意識的にやろうとしている仕草ではないか。

実際に頭をかかえた選手はいつまでも悔やんではいない。すぐに次のプレーに集中し、あっという間にゴールを奪うこともよくあるのだ。


クラニオセイクラルバランシング(頭蓋仙骨調整)というヒーリングワークにおいては、5グラム以下という微細な圧力によって調整を行う。どの頭蓋骨でも手指だけを使って、緊張を緩め、可動性を高めることができる。

しかし自分自身の身体に自分の手を当てることは、専門的な技術を知らなくても、誰もが毎日の生活の中で行える効果的なセルフヒーリングとなる。

困ったとき、悩み苦しんでいるとき、体調が悪いとき、頭を抱えることが感情エネルギーを解放し、安定した気持ちを取り戻すことに繋がる

短時間で、ストレスや緊張を軽減させることができる魔法のセルフヒーリングの手法だ。

困った時は、頭をかかえよう!



https://www.customfitphysicaltherapy.com/craniosacral-therapy/

ヒーリングワークにおける蝶形骨への働きかけ。
10〜15分ほど顔の正面方向にリフトすることにより、バランスと可動性が回復する。
クライエントは深いリラクゼーションと瞑想的な静寂に入っていく。
その効果は全身に及ぶ。








追記
記事の内容とはまったく関係ないが、先日撮った写真を載せておきたい。毎年春秋の薔薇フェスティバルに出かけている馴染みの薔薇園である。
この場所は響灘の海岸近くにあり、風が強く、気温もやや低い。
流石にこの時期になると、暖かいとは言え、花の数は極端に乏しい。
来春に向けて慌ただしく準備する作業員の方以外、見物客は誰一人としていない。
広い敷地の所々に、ポツンポツンと冬薔薇がいくつか咲いていた。2700株の内のせいぜい30〜40株位ではないかと思う。
美しいとか、質素とか、寂しげとか、そういう人の想いなどまったく寄せ付けない孤高の存在感が漂う。

誰の為でもなく、理由もなく、目的もない。
ただそこに咲いていた。
鼻を近づけると、いい薫りがした。



北九州市 響灘グリーンパークの冬薔薇



























































Kandace Springs - Place To Hide




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燿
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